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【コラム】愛知県内の交通事故死者数が100人に達する

2023-09-15

 愛知県警察によると,令和5年9月11日,愛知県内の今年の交通事故死者数が100人に達しました。昨年に比べ29日早く,愛知県警察では警戒を呼び掛けています。
 死者100人のうち,歩行者が38人と最多となっており,次いで四輪車25人,自転車16人,自動二輪13人,原付7人,その他1名となっています。また,年齢別では,65歳以上の高齢者が49人で,約半数となっています。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/jikonippou/documents/koutsuushibouzikonippou230913.pdf

 歩行者が被害に遭う交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故や重篤な障害が残る事故につながりやすくなります。
 死亡事故や後遺障害が残存した場合,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)が支払われますが,就労可能年数(67歳)までの年数が長いほど逸失利益は高額となります。
 ただし,67歳を超えている方や67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1よりも短くなる被害者については,原則として,平均余命の2分の1の年数となります。
 逸失利益は,一般的に,死亡事故や後遺障害の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
 
 また,交差点内や交差点付近で歩行者が横断中に事故に遭う場合,歩行者が横断歩道を横断しているかどうかで過失割合が変わってきます。
 歩行者は,横断歩道の付近においては,横断歩道によって道路を横断しなければならないとされています。一方,車は,横断歩道により横断している歩行者がある場合は,当該横断歩道の直前で一時停止し,かつ,その通行を妨げないようにしなければならないとされており,横断歩道により道路を横断する歩行者に対しては強い法的保護が与えられています。
 また,横断歩道外を横断している場合でも,おおむね横断歩道の端から外側に1mないし2m居ないの横断や,横断歩道が停止車両により閉塞されているときの当該車両の直前・直後の横断は横断歩道による横断と同視される可能性が高いです。
 それ以外の場所でおいては,横断歩道の付近(幹線道路であれば横断歩道の端から外側におおむね40mないし50m以内,それ以外の道路では20mないし30m以内)であれば横断歩道通過後なのか横断歩道の手前なのかによって過失割合が変わってきます。
 歩行者の事故の場合,事故態様によって過失割合が変わってきますので,ドライブレコーダー映像や事故の現場図を分析し,正確な事故態様を明らかにしたうえで,適正な過失割合で解決することも非常に大切となります。

 死亡事故や重篤な障害が残る事故は賠償額が高額となるため,過失割合がたとえ1割の違いであっても,賠償額が大きく変わってきますので,専門的知識と豊富な解決実績のある交通事故に強い弁護士に相談することが重要になります。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(22)

2023-09-08

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
3.生活費控除率
(4)兄弟姉妹のみが相続人のとき
   兄弟姉妹のみが相続人のときは別途考慮することもあります。

(3)年金部分
   年金部分についての生活費控除率は,通常より高くする例が多いです。
  ・ 老齢厚生年金,老齢国民年金及び遺族厚生年金(年額合計約241万円)を受給していた無職者(75歳)につき,生活費は逸失利益性を有しない遺族厚生年金(年額約200万円)のみで賄うことが可能であったとして,逸失利益性を有する老齢厚生年金及び老齢国民年金の受給合計額(年額約41万円)に対しては生活費控除を行わないとした。
・ 主婦(64歳)につき,受給していた特別支給老齢厚生年金以外に,死亡4か月後に給付が開始される予定の老齢基礎年金及び老齢厚生年金の合計62万余の逸失利益性を認め,同居の三男が542万余の年収を得ており,被害者も不動産賃料収入(年額372万円余)を得ていたことから,平均余命期間につき生活費控除率を30%とした。
・ 女性(81歳)につき,逸失利益性を有する老齢基礎年金年額9万円余に比べ,逸失利益性を有しない遺族厚生年金及び遺族共済年金年額155万余が遥かに高額であることを考慮し,生活費控除率を30%として,平均余命の10年間認めた。
・ 障害年金を受給している妻及び3人の子供を扶養し,自身も障害年金を受給している事故時の稼働収入461万円余の会社員(52歳)につき,障害年金から加給分を控除した147万円余りを基礎に,平均余命の27年間生活費控除率30%とした。
・ 老齢年金(年39万円余)の他,遺族共済年金(年183万円余)及び後期高齢者医療給付金を受給していた女性(88歳)につき,遺族共済年金及び後期高齢者医療給付金の存在に照らして生活費控除率を30%とした。
・ 主婦(80歳)の年金分につき,国民年金79万円余を基礎として,遺族年金(162万円余)によっても生活費がまかなわれていることから,生活費控除率を40%とした。
・ 障害者年金等を受給する大工(男・37歳)につき,稼働分の逸失利益は3年間の申告所得の平均を基礎に30年間,生活費控除率40%とし,年金分の逸失利益は障害補償年金及び障害厚生年金の合計152万円余を基礎に43年間,生活費控除率は40%とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(21)

2023-09-01

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
3.生活費控除率
(2)女性(主婦,独身,幼児等を含む) 30%
   女子年少者の逸失利益につき,全労働者(男女計)の全年齢平均賃金を基礎収入とする場合には,その生活費控除率を40~45%とするものが多い。
  ・ 夫を扶養する兼業主婦(59歳)につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,事故後夫が死亡したが,その死亡は事故と相当因果関係がなく,損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との関係があるとは言えないとして考慮せず,生活費控除率を30%とした。
  ・ 小学校教員(50歳)につき,小学校教員である夫,農業に従事している両親,大学生及び予備校生の息子の6人で生活し,主婦として家庭生活を支えていたことから,生活費控除率を30%とした。

(3)男性(独身,幼児等含む) 50%
  ・ 女性と交際していた男性(25歳)につき,子をもうけるかは不確定だが,遅くとも30歳までには婚姻をするとして,生活費控除率を30歳まで50%,それ以降40%とした。
  ・ 大学3年生(23歳)につき,事故の2年前に父親が死亡し,卒業後は母親を扶養し一家の支柱となることが予定されていたとして,生活費控除率を40%とした。
  ・ 独身給与所得者(35歳)につき,小学5年生になる子がいる女性と1週間後に結婚式を挙げる予定であったことから,生活費控除率を30%とした。
  ・ 給与所得者(38歳)につき,離婚後2人の子に1人あたり月額1万5000円の養育費を支払っており,それによって子らが生計を維持していたとは認められないが,養育費支払義務を履行してきたことは事実であり,通常の独身男性とも異なる部分があるとして,生活費控除率を45%とした。
  ・ タクシー運転手(40歳)につき,独身で両親と同居し,収入のすべてを生活費として家庭に入れるとともに,身体障害者である母親の介護の中心的役割を果たしていたことから,一家の支柱と認めて,生活費控除率を40%とした。
  ・ 会社役員(30歳)につき,母親及び兄と同居し,兄と二人で母親を扶養していたことから生活費控除率を45%とした。
  ・ 土木作業員(61歳)につき,糖尿病性足潰瘍による右第1趾切断後で糖尿病網膜症等の弟が被害者の収入により生計を維持されていた者として勤務先に届けられていたことを考慮し,被害者を一家の支柱,弟を被扶養者に準ずるものとして,生活費控除率を40%とした。
  ・ 母と二人暮らしのとび職(20歳独身)につき,母はスナックを経営して収入があったが,結婚を約束していた女性がいて一緒に住む予定であったことを考慮して生活費控除率を40%とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(20)

2023-08-25

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
3.生活費控除率
  もし生きていれば支出するはずだった生活費も支払わなくてよくなっているため,死亡逸失利益を算定するには,将来支払うはずだった生活費を控除します。
  生活費控除率は,被害者の性別,扶養者の有無,扶養者の人数等によって異なります。
(1)一家の支柱
  ① 被扶養者1人の場合 40%
   ・ 母と生活する自動車運転手(男・26歳独身)につき,一家の支柱と認定した上,30%とした。
   ・ アルバイト(男・23歳)につき,一家の支柱と認定した上,交際していた女性が出産した子との間で認知審判により親子関係が認められて子に対する扶養義務が確定しており,事故で死亡しなければ養育費等の取り決めがなされ,その履行がなされていったであろうことが窺われるとし,生活費控除率を40%とした。
   ・ 妻と二人暮らしだが別居中の高齢の養母がおり相応の不要の要があった会社員(男・57歳)につき,35%とした。
   ・ 単身赴任で妻を扶養していた上場会社である総合商社副社長執行役員(男・62歳)につき,被害者の収入が高額であって累進税率の適用による所得税・住民税等の負担が成人男性の平均を相当程度上回ることからすれば50%を下回らない旨の加害者の主張について,逸失利益の算定に当たって租税額を控除するのは相当ではないことから排斥し,被害者の年収,年齢,生活状況等に鑑みて40%とした。
  ② 被扶養者2人以上の場合 30%
   ・ 会社員(男・39歳)につき,離婚して2人の子供と別居し,看護養育を元妻に委ねていたが,週1,2回は面会交流し,マンションの住宅ローンや管理費を負担して子供に住居を提供し,遊興費を負担するなど経済的負担もしていたことから,親権者として扶養義務を負っていたばかりでなく,実際にも相応の経済的負担をして,生計上は同一世帯を形成し,主として世帯の生計を維持していたとして,生活費控除率を30%とした。
   ・ 会社員(男・58歳)につき,妻に加えて,ニューヨーク等海外及び東京を拠点としてフリーランスのピアニストとして活動する娘(31歳)について,演奏料収入は年間100万円に満たず,経費が収入を上回り,被害者からの仕送りを受けて生活をし,被害者の死亡後は帰国し生活をしているとの事情から,被害者の被扶養者であったと認めるのが相当とし,生活費控除率を30%とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:お盆時期に交通事故の被害に遭われたら

2023-08-04

 警察庁によると,令和5年上半期の交通事故交通事故死者数は1182人となっており,昨年より24人多くなっています。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/jiko/R5kamihanki_bunseki.pdf

 状態別では、歩行中417人,自動車乗車中402人,二輪車乗車中212人が前年より増加,自転車乗用中143人が前年より減少しています。今年4月から自転車乗車中のヘルメット着用が努力義務となりましたが,自転車乗用中死傷者のヘルメット着用率は前年比で上昇しています。

 お盆時期は交通量が増加するため交通事故も多発し,毎年多くの方が交通事故の被害に遭われています。警視庁は,行動制限が緩和されて人の動きが活発化したことが,上半期の事故死者増の背景にあるとみており,今年は例年以上に交通事故が増える恐れがあります。
 普段は電車やバス等を利用している方が,混雑を避けるために車を利用するなど,運転が不慣れな人,免許を取得したばかりの人もいますので,すべてのドライバーが事故が発生しないよう注意が必要です。特に,長時間運転をする予定のある方は,時間に余裕を持った計画を立て,適宜休憩をするなど体調管理を併せた安全行動を取ることが大切です。
 また,近年は高齢者が被害に遭う事故やあおり運転,自転車による事故も多くなっています。
 では,お盆時期に交通事故の被害に遭われたら,どうすればよいでしょうか。

 交通死亡事故の場合,お亡くなりになられた方が一家の大黒柱ですと,早急な金銭的サポートが必要になることもあります。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,直接,自賠責に保険金を請求し,まず自賠責の範囲内で保険金を獲得し,最終的に弁護士基準との差額を請求しています。2段階の手続きを行うことで早急な金銭回収が可能となり,ご遺族が生活費でお困りになる危険を回避します。
 ご家族が死亡事故に遭われお困りの方は,ぜひ,早期にご相談ください。

 お怪我をされた場合,お盆期間中は医療機関が休診していたり,忙しくて医療機関に受診ができない,交通事故から数日後に痛みが生じた方など,気づいたときには事故から2週間以上経過していることもあります。
 この場合,相手方の保険会社やご自身が加入している人身傷害保険に対して,医療機関への受診を希望しても,事故から2週間以上経過している場合は,初診遅れによる因果関係なしと治療費の対応を拒絶されることがほとんどです。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,初診遅れで治療費の対応を拒絶された場合,初診遅れの意見書を添付の上で,直接,自賠責に治療費や慰謝料などを請求し,保険金を回収しています。

 また,後遺症が残る事案では,保険会社からの賠償額の提示を待ってから弁護士に相談していては遅い場合があります。
 いつ依頼されても弁護士の費用に変わりはありませんので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,早期にご相談ください。

 その他,交通量が増えることで,あおり運転の被害に遭う可能性もあります。
 令和2年6月30日に施行された改正道路交通法では,あおり運転を「妨害運転」として新たに規定されました。他の車両等の通行を妨害する目的での車間距離不保持や不必要な急ブレーキなど10類型が妨害運転となり,取り締まりの対象になります。
 もし,あおり運転の被害に遭ったら,まずは,サービスエリアやパーキングエリア等,交通事故に遭わない場所に避難して,警察に110番通報をしてください。また,あおり運転の加害者から暴行を受けないように,車のドアや窓をロックし,車外に出ないようにしましょう。
 車が損傷したり,事故によって怪我をした場合は,損害賠償を請求することができます。
 あおり運転の立証には,ドライブレコーダーが有効になりますので,ドライブレコーダーの取付をお勧めします。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,ドライブレコーダーや事故の現場図を分析して,あおり運転に伴う正確な事故態様を明らかにし,適正な過失割合で事故の解決をしていますので,お困りの方は,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(19)

2023-07-28

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(2)年金収入・恩給収入
  ③ 年金収入・恩給収入につき逸失利益を否定した事例
   ・ 障害年金の加給分につき,拠出された保険料とのけん連関係があるものとはいえず,社会保障的正確の強い給付であり,子の婚姻など,本人の意思により決定し得る事由により加算の終了することが予定されていて,基本となる障害年金自体と同じ程度にその存続が確実なものということもできないとして,逸失利益性を否定した。
   ・ 遺族厚生年金及び市議会議員共済会の遺族年金について,受給権者自身の生計の維持を目的とした給付であることなどを理由として逸失利益性を否定した。
   ・ 軍人恩給の扶助料について,受給権者自身の生計の維持を目的とした給付であることなどを理由として逸失利益性を否定した。
   ・ 戦傷病者戦没者遺族等救護法に基づく遺族年金及び国民年金法に基づく老齢福祉年金について,いずれも無拠出制の年金であるなど受給者の生存中の生計の維持を目的とするものであるとして逸失利益性を否定した。
   ・ 都道府県及び政令指定都市が条例に基づいて実施する心身障害者扶養共済制度(保護者が死亡し又は重度障害となった場合に心身障害者に年金を支給する制度)により被害者が受給していた年金について,その制度趣旨や社会保障的正確の強いものであること,年金受給権が受給権者の死亡に寄り消滅するとされていること等から,死亡逸失利益の対象とならないとした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(18)

2023-07-21

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(2)年金収入・恩給収入
  ② 受給開始前の被害者につき将来の年金に対する逸失利益性を肯定した事例
   ・ 大卒大手企業会社員(43歳)につき,老齢年金の逸失利益は否定したが,退職年金については平成10年から12年までの同社の退職者の平均6割を基礎に認め,生活費控除率は老齢年金の支給もあることから40%で認めた。
   ・ 広告代理店取締役営業部長(50歳)につき,既に老齢厚生年金の受給資格を有しており,老齢厚生年金受給が事故の18年後で,その間に現在の年金制度に何らかの変更があったとしても,既に年金受給資格を有する者に対する年金支給が不確実とまではいえないとして逸失利益性を認め,67歳までは年金の支給が停止されるため否定し,68歳から80歳まで生活費控除率50%で認めた。
   ・ 会社員(50歳)につき,加入期間が25年(300か月)にわずかに満たない298か月だったことに鑑み,老齢基礎年金及び老齢厚生年金の死亡逸失利益を認め,就労中は支給停止となることから67歳までは否定し,67歳から81歳まで生活費控除散る60%で認めた。
   ・ タクシー乗務員(52歳)につき,事故当時受給資格を満たしていたとして60歳から80歳までの老齢厚生年金・厚生年金基金の逸失利益を認め,67歳までの就労による支給停止分を控除して,生活費控除率60%で認めた。
   ・ 会社員(57歳)の厚生年金法に基づく老齢厚生年金につき,受給資格を取得しているとして,60歳からの年金受給見込額(年額)から,67歳までの稼働収入分に関わる国民年金法等一部を改正する法律等による控除・減額をして23年間認め,生活費控除率は配偶者が老齢厚生年金の支給を受けられるようになる65歳まで40%,国民年金保険による老齢基礎年金の逸失利益を認めた。
   ・ 男性(58歳)につき,国家公務員等共済組合からの退職共済年金,国民年金保険による老齢基礎年金の逸失利益を認めた。
   ・ 主婦(59歳)につき,国民年金を298か月納付してきたことから,事故当時年金受給資格を取得していなくても老齢基礎年金について逸失利益を認めるのが相当であるとして,65歳になったときの年金見込み額を基礎とし,生活費控除率は65歳から就労可能な70歳までの5年間30%,以降15年間60%で認めた。
   ・ 夫を扶養する兼業主婦(59歳)につき,事故の約4か月後に受給権の発生する老齢年金の逸失利益を認め,生活費控除率は就労可能な72歳まで30%,以降86歳まで60%で認めた。
   ・ 男性(63歳)につき,事故時に国民年金の受給資格を得ており,65歳に達すれば国民年金を受給しえたとして逸失利益性を認め,満65歳から17年余りを認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:認知症患者による交通事故

2023-07-13

内閣府「平成29年度高齢者白書」によると,2012年は認知症患者数が約460万人,高齢者人口の15%という割合だったものが,2025年には5人に1人,20%が認知症になるという推計が出ています。
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/29pdf_index.html
認知症とは,何らかの病気や障害などの様々な原因によって,記憶や判断などを行う脳の機能(認知機能)が低下し,日常生活や仕事に支障をきたすようになった状態のことをいいます。一般的には高齢者に多い病気といわれていますが,年齢に関わらず発症する可能性があります。
 では,認知症の方が交通事故を起こしたらどうなるのでしょうか。

1.認知症患者が加害者の場合
(1)被害者に対する補償
加害者が認知症であっても,加害者が任意保険に加入していれば,被害者に対する対人対物保険は使用できますので,治療費,慰謝料,修理費などすべて補償されます。
任意保険が切れていた場合,任意保険の対象者が認知症患者を含んでいない場合は,任意保険は対象外となりますので,自賠責保険の範囲内で補償されます。

自賠責保険は,加害者本人だけでなく,車の所有者も責任を負いますので,車の所有者が息子であった場合,運行供用者責任として息子も責任を負います(自賠法3条)。被害者の症状にもよりますが,後遺障害が認定されるような大事故の場合は,何千万円という賠償責任を車の所有者である息子が負担することになります。
運行供用者責任(自賠法3条)を回避するには,
   ①自己(運行供用者)及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと
   ②「被害者」又は「運転者以外の第三者」に故意又は過失があったこと
   ③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
を証明する必要があります。
責任無能力者の責任を否定する民法713条は、運行供用者責任には適用されませんので(東京地裁平成25年3月7日判決),仮に,加害者が認知症患者で責任能力がないと認定されても、加害者側が上の免責3要件を立証できない限り、運行供用者責任(自賠法3条)を免れることはできません。

(2)加害者自身に対する補償
   認知症である自分に対する人身傷害保険(自分の治療費や慰謝料など),車両保険(自分の車の修理費)は,認知症の症状や保険会社によって対応が異なりますが,補償されない可能性が高いです。
   まず,約款に,保険金を支払わない場合として,「被保険者の脳疾患,疾病または心神喪失によって生じた損害」と記載されている場合は,補償されません。
   もし,上記の内容が記載されていなくても,「故意または重大な過失がある場合」は保険金を支払わないという内容が適用され,補償されない場合があります。これは,認知症の診断を受けていて,誰が見ても運転したら危険性だとわかる状態なのに運転をして事故を起こしたのは,「重大な過失」と考えられるためです。

(3)過失割合
   認知症の程度によっては,事故状況の確認が難しく,事故の目撃者がいない場合は,示談による解決が難しくなることもあります。
   適正な過失割合で事故の解決をするには,ドライブレコーダーや事故現場周辺の防犯カメラ,事故の現場図等を分析し,正確な事故態様を明らかにする必要があります。
   賠償額が大きくなればなるほど,過失割合がたとえ1割の違いであっても,受け取れる金額が大きく変わってきますので,適正な過失割合で事故の解決をすることが大切です。

2.事故がきっかけで被害者が認知症(高次脳機能障害)になった場合
  交通事故によって脳が損傷することで,認知症(高次脳機能障害)を発症することがあります。認知症と高次脳機能障害は症状が似ているため,認知症なのか,高次脳機能障害なのか,もしくは,認知症と高次脳機能障害を併発しているのか,医療機関で正確な診断を受ける必要があります。
  後遺障害が認定されれば,後遺障害慰謝料,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通事故によって失われた利益のこと)を請求できます。
  高次脳機能障害の後遺障害は,症状に応じて1級~9級が認定されますが,後遺障害慰謝料は,1級(常に介護を要するもの)で2800万円,9級(労務が相当な程度に制限されるもの)で690万円となります。
  逸失利益は,被害者の年収や年齢によって異なってきます。特に,事故前年の年収が高い方,就労可能年数(67歳)までの年数が長い方の逸失利益は高額となります。
  逸失利益は,一般的に,賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
 
 弁護士法人しまかぜ法律事務所は,認知症患者の交通事故や高次脳機能障害の解決実績が豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(17)

2023-07-07

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ③ 無職者
  ウ 高齢者
    就労の蓋然性があれば,賃金センサス第1の産業計,企業規模計,学歴計,男女別,年齢別平均の賃金額を基礎とします。
  <裁判例>
  ・ 一人暮らしの無職者(女・74歳)につき,農作業や仕出し屋でアルバイトとして働くこともあったこと,就労の意思も能力もあったことから,就労の蓋然性を認め,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均を,就労の機会及び得られる収入が少ないことを考慮して5割減じて基礎とし,生活費控除率50%で7年間認めた。

(2)年金収入・恩給収入
   高齢者の死亡逸失利益については,年金の逸失利益性が問題となります。
 ① 年金収入・恩給収入につき逸失利益性を肯定した事例
  ・ 国民年金(老齢年金)
  ・ 国民年金の振替加算額
  ・ 老齢厚生年金
  ・ 農業者年金(経営移譲年金及び農業者老齢年金)
  ・ 地方公務員,国家公務員の退職年金給付
  ・ 港湾労働者年金
  ・ 恩給
  ・ 国民年金法に基づく障害基礎年金のうち子の加給分を除いた本人分,厚生年金保険法に基づく障害厚生年金のうち妻の加給分を除いた本人分を逸失利益として肯定した。
  ・ 労働者災害補償法に基づく障害補償年金及び障害特別年金を本件事故の20年以上前から受給していたタクシー運転手につき,稼働収入喪失分とともに,両年金の受給権喪失分を認めた。
  ・ 私学共済年金(退職年金)及び亡夫の遺族年金の受給資格を有していたが,どちらか一方しか受給できなかったため,金額的に有利な遺族年金を選択していた年金受給者につき,私学共済金の逸失利益性を認め,平均余命の約半分の13年間は稼働収入分を加え,平均余命の25年間,私学共済年金を基礎とした。
  ・ 事故の約3ヶ月後に定年退職予定の大学教授につき,稼働分について賃金センサス男性大卒・大学院卒年齢別平均賃金を基礎収入として生活費控除率は40%として逸失利益を認めたうえ,既に受給が確定していた老齢基礎年金及び私学共済年金の合計を基礎に,平均余命までの19年間,生活費控除率50%で認めた。
  ・ 茶商につき,労働収入分については,事故前の被害者の所得とその妻の給与の合計額を基礎に生活費控除率40%,酒楼可能年数を1年とし,年金分については,国民年金と陸軍軍人普通恩給の受給額を基礎に生活費控除率を60%として3年間認めた。
 
 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:7月は四輪車,二輪車の死亡事故が多発

2023-07-01

 愛知県警察が作成している「交通事故防止のPOINT」によると,過去5年の四輪車・二輪車の月別死者数は7月が最多となっています。
 https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/202307point.pdf

 事故類型別でみると,速度超過による単独事故が多くなっています。
 また,7月は飲酒運転による死亡事故が増えています。アルコールは,中枢神経系に作用して脳の神経活動を抑制する物質で,運動機能,自制心,動体視力,集中力,認知能力,状況判断力の低下等を生じさせることから,交通事故を起こす危険が極めて高くなります。そのため,飲酒した運転手だけでなく,依頼同乗者,車両提供者,酒類提供者にも重たい罰則・行政処分が科せられます。
 
 過失割合について,速度超過がある場合,おおむね時速15km以上30km未満の速度違反で著しい過失,おおむね時速30km以上で重過失の修正要素が適用されます。
 速度違反した車両のドライブレコーダーに速度が表示されている場合もありますが,加害車両のドライブレコーダー映像を提供してもらえないこともあります。その場合は,被害車両のドライブレコーダー映像や事故現場付近の防犯カメラ等を解析し,速度を明らかにできる場合があります。

 また,酒気帯び運転は著しい過失,酒酔い運転は重過失の修正要素が適用されます。加害車両の運転手に飲酒の疑いがある場合,警察で検査をしていれば,刑事記録等を取り寄せることで,飲酒の有無を明らかにできる場合があります。

 著しい過失の場合は10%,重過失の場合は20%加算修正されます。
 過失割合は,物損だけでなく人身にも影響しますので,死亡事故や後遺障害が残存する事故など,賠償額が大きくなればなるほど,過失割合がたとえ1割の違いであっても,受け取れる金額が大きく変わってきます。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,適正な過失割合で事故の解決をしていますので,過失割合でお困りの方は,ぜひ,ご相談ください。

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