【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(21)

2023-09-01

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
3.生活費控除率
(2)女性(主婦,独身,幼児等を含む) 30%
   女子年少者の逸失利益につき,全労働者(男女計)の全年齢平均賃金を基礎収入とする場合には,その生活費控除率を40~45%とするものが多い。
  ・ 夫を扶養する兼業主婦(59歳)につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,事故後夫が死亡したが,その死亡は事故と相当因果関係がなく,損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との関係があるとは言えないとして考慮せず,生活費控除率を30%とした。
  ・ 小学校教員(50歳)につき,小学校教員である夫,農業に従事している両親,大学生及び予備校生の息子の6人で生活し,主婦として家庭生活を支えていたことから,生活費控除率を30%とした。

(3)男性(独身,幼児等含む) 50%
  ・ 女性と交際していた男性(25歳)につき,子をもうけるかは不確定だが,遅くとも30歳までには婚姻をするとして,生活費控除率を30歳まで50%,それ以降40%とした。
  ・ 大学3年生(23歳)につき,事故の2年前に父親が死亡し,卒業後は母親を扶養し一家の支柱となることが予定されていたとして,生活費控除率を40%とした。
  ・ 独身給与所得者(35歳)につき,小学5年生になる子がいる女性と1週間後に結婚式を挙げる予定であったことから,生活費控除率を30%とした。
  ・ 給与所得者(38歳)につき,離婚後2人の子に1人あたり月額1万5000円の養育費を支払っており,それによって子らが生計を維持していたとは認められないが,養育費支払義務を履行してきたことは事実であり,通常の独身男性とも異なる部分があるとして,生活費控除率を45%とした。
  ・ タクシー運転手(40歳)につき,独身で両親と同居し,収入のすべてを生活費として家庭に入れるとともに,身体障害者である母親の介護の中心的役割を果たしていたことから,一家の支柱と認めて,生活費控除率を40%とした。
  ・ 会社役員(30歳)につき,母親及び兄と同居し,兄と二人で母親を扶養していたことから生活費控除率を45%とした。
  ・ 土木作業員(61歳)につき,糖尿病性足潰瘍による右第1趾切断後で糖尿病網膜症等の弟が被害者の収入により生計を維持されていた者として勤務先に届けられていたことを考慮し,被害者を一家の支柱,弟を被扶養者に準ずるものとして,生活費控除率を40%とした。
  ・ 母と二人暮らしのとび職(20歳独身)につき,母はスナックを経営して収入があったが,結婚を約束していた女性がいて一緒に住む予定であったことを考慮して生活費控除率を40%とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

Copyright(c) 2021 弁護士法人しまかぜ法律事務所 All Rights Reserved.