【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(22)

2023-09-08

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
3.生活費控除率
(4)兄弟姉妹のみが相続人のとき
   兄弟姉妹のみが相続人のときは別途考慮することもあります。

(3)年金部分
   年金部分についての生活費控除率は,通常より高くする例が多いです。
  ・ 老齢厚生年金,老齢国民年金及び遺族厚生年金(年額合計約241万円)を受給していた無職者(75歳)につき,生活費は逸失利益性を有しない遺族厚生年金(年額約200万円)のみで賄うことが可能であったとして,逸失利益性を有する老齢厚生年金及び老齢国民年金の受給合計額(年額約41万円)に対しては生活費控除を行わないとした。
・ 主婦(64歳)につき,受給していた特別支給老齢厚生年金以外に,死亡4か月後に給付が開始される予定の老齢基礎年金及び老齢厚生年金の合計62万余の逸失利益性を認め,同居の三男が542万余の年収を得ており,被害者も不動産賃料収入(年額372万円余)を得ていたことから,平均余命期間につき生活費控除率を30%とした。
・ 女性(81歳)につき,逸失利益性を有する老齢基礎年金年額9万円余に比べ,逸失利益性を有しない遺族厚生年金及び遺族共済年金年額155万余が遥かに高額であることを考慮し,生活費控除率を30%として,平均余命の10年間認めた。
・ 障害年金を受給している妻及び3人の子供を扶養し,自身も障害年金を受給している事故時の稼働収入461万円余の会社員(52歳)につき,障害年金から加給分を控除した147万円余りを基礎に,平均余命の27年間生活費控除率30%とした。
・ 老齢年金(年39万円余)の他,遺族共済年金(年183万円余)及び後期高齢者医療給付金を受給していた女性(88歳)につき,遺族共済年金及び後期高齢者医療給付金の存在に照らして生活費控除率を30%とした。
・ 主婦(80歳)の年金分につき,国民年金79万円余を基礎として,遺族年金(162万円余)によっても生活費がまかなわれていることから,生活費控除率を40%とした。
・ 障害者年金等を受給する大工(男・37歳)につき,稼働分の逸失利益は3年間の申告所得の平均を基礎に30年間,生活費控除率40%とし,年金分の逸失利益は障害補償年金及び障害厚生年金の合計152万円余を基礎に43年間,生活費控除率は40%とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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