【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(11)

2023-05-12

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ② 家事従事者(2)
 <裁判例>
 ・ 年金受給者(男性・71歳)につき,就労の蓋然性があるとはいえないとしつつ,家事を一定程度担っていたとして,就労可能年数7年につき年金収入を含めて賃金センサス女性全年齢平均の8割を基礎に,生活費控除率40%で認めた。
 ・ 夫と二人暮らしの女性(71歳)につき,賃金センサス女性70歳以上平均を基礎に,9年間認めた。
 ・ 近い将来長男家族と同居予定だった女性(72歳)につき,賃金センサス女性65歳以上平均を基礎に,平均余命の2分の1認めた。
 ・ 夫と二人暮らしの健康な主婦(72歳)につき,年齢相応の家事労働を行っていたとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎とし,生活費控除率30%で9年間認めた。
 ・ 夫を介護する年金受給者につき,主婦としての逸失利益を賃金センサス女性学歴計65歳以上を基礎に7年間,生活費控除率40%で算定し,夫の介護費用として加害者側が支払った分を同逸失利益のうち介護の仕事相応部分を支払ったとみるのが相当とし,その割合を30%とし,事故から夫死亡までの265日分のついて同逸失利益の30%を損益相殺した。
 ・ 女性(75歳)につき,定期的に透析を受け介護保険身体介護2の認定を受けた夫の世話だけでなく,亡娘の長男は第一種の知的障害の認定を受け意思疎通が不能,常時介護が必要であったことから,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に7年間,生活費控除率30%を認めた。
 ・ 夫と二人暮らしの女性(75歳)につき,賃金センサス女性学歴計65歳から69歳平均を基礎に7年間認めた。
 ・ 女性(79歳)につき,大きな病気を患うことはなく,認知症の夫と同居して炊事,洗濯及び買い物等の家事に従事し,認知症患者の夫を介護して,夫が経営する店を代わりに経営するなどしており,さらに,子らのためにも食事を用意するなどして,家事に従事していたことを認め,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
 ・ 夫と同居する主婦(79歳)につき,監査役として事故前年に240万円の給与収入を得ていたほか,家事全般に従事していたとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に,生活費控除率30%で6年間認めた。
 ・ 女性(80歳)につき,単身で生活していたが,日中は長女の自宅に赴き家事に従事していたとして,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均の30%を基礎とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

Copyright(c) 2021 弁護士法人しまかぜ法律事務所 All Rights Reserved.