【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(14)

2023-06-09

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ③ 無職者
  ア 学生・生徒・幼児等(2)
 <裁判例>
 ・ 短大2年生(男・20歳)につき,4年生大学への編入を希望しており,成績等からも事故に遭わなければ4年制大学に編入した蓋然性が高いとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とした。
 ・ 大学生(女・20歳)につき,賃金センサス男性大卒全年齢平均と同女性大卒全年齢平均の平均額で請求したのに対し,死亡年の女性大卒全年齢平均を基礎とした。
 ・ 海洋関係の研究をしていた大学生(女・20歳)につき,同大学の女性卒業生の多くが就職または大学院修士課程に進学し,修士課程を修了した女性卒業生の多くが就職または博士課程に進学していることから,賃金センサス男性大卒全年齢平均と同女性大卒全年齢平均との平均額を基礎に,生活費控除率40%で認めた。
 ・ 美容専門学校2年生(女・20歳)につき,被告の美容師の平均賃金に鑑みた高卒女性全年齢平均を基礎収入とすべきとの主張を,被害者が20歳で死亡しており今後の活躍の可能性を限定すべき特段の事情もなかったこと等を理由に排斥し,専門技術を生かした職業に従事していた可能性が高いこと等から,就職予定年の賃金センサス女性専門学校・短大卒全年齢平均を基礎とした。
 ・ 大学薬学部1年生(女・21歳)につき,高校生のころから薬剤師を希望していたこと,在籍する大学の国家試験の合格率が全国平均を上回っていたことから,大学卒業後に薬剤師として稼働する蓋然性が高かったとして,賃金センサス女性薬剤師企業規模計を基礎とし,生活費控除率30%で認めた。
 ・ 大学3年生(男・21歳)につき,教育学部数学専攻であり,教師を目指し,教育実習に行くことが決まっていたこと等から教師の職に就く蓋然性が高かったとして,賃金センサス教育,学習支援業・企業規模計・男性大卒全年齢平均を基礎とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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