【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(15)

2023-06-16

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ③ 無職者
  ア 学生・生徒・幼児等(3)
    女子年少者の逸失利益については,女性労働者の全年齢平均ではなく,全労働者(男女計)の全年齢平均賃金で算定するのが一般的です。
 <裁判例>
  (ア)全労働者(男女計)平均賃金を用いた裁判例
    a 14歳の女子につき,賃金センサス全労働者学歴計全年齢平均を用いた一審判決を支持したが,男性とのバランスも考慮し,生活費控除率を40%から45%に変更した原審に対する上告を棄却するとともに,上告審として受理しないとした。
    b 事故時11歳の女子につき,賃金センサス全労働者全年齢平均を用い生活費控除率を45%として算定した一審を支持した原審に対する上告受理申立に対し,上告審として受理しないとした。
    c 生活費控除率を30%とした事例
      事故時7歳の女子(東京地判平19年12月17日)
    d 生活費控除率を40%とした事例
     ・事故時3歳の女子(名古屋地判平17年3月29日)
     ・事故時6歳の女子(東京地判平19年6月27日)
     ・事故時6歳の女子(さいたま地判平24年12月25日)
    e 生活費控除率を45%とした事例(上記ab以外)
     ・事故時11歳の女子(東京地判平15年6月26日)
     ・事故時14歳の女子(大阪高半平19年6月27日)
     ・事故時15歳の女子(東京地判令3年12月17日)
     ・事故時12歳の女子(名古屋地判平21年12月2日)
     ・事故時8ヶ月の女子(大阪地判平23年3月11日)
     ・事故時5歳の女子(京都地判24年10月24日)
     ・事故時18歳の女子(短大生)(大阪地判平27年1月13日)
     ・事故時17歳の女子(高校生)(横浜地判平30年2月19日)
  (イ)女性労働者の全年齢平均賃金を用いた裁判例
     ・事故時9歳の女子(最二小決平13年6月29日)
     ・事故時2歳の女子(最二小決平13年9月11日)
     ・事故時10歳の女子(最二小決平14年7月9日)
 
 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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