【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(20)

2023-08-25

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
3.生活費控除率
  もし生きていれば支出するはずだった生活費も支払わなくてよくなっているため,死亡逸失利益を算定するには,将来支払うはずだった生活費を控除します。
  生活費控除率は,被害者の性別,扶養者の有無,扶養者の人数等によって異なります。
(1)一家の支柱
  ① 被扶養者1人の場合 40%
   ・ 母と生活する自動車運転手(男・26歳独身)につき,一家の支柱と認定した上,30%とした。
   ・ アルバイト(男・23歳)につき,一家の支柱と認定した上,交際していた女性が出産した子との間で認知審判により親子関係が認められて子に対する扶養義務が確定しており,事故で死亡しなければ養育費等の取り決めがなされ,その履行がなされていったであろうことが窺われるとし,生活費控除率を40%とした。
   ・ 妻と二人暮らしだが別居中の高齢の養母がおり相応の不要の要があった会社員(男・57歳)につき,35%とした。
   ・ 単身赴任で妻を扶養していた上場会社である総合商社副社長執行役員(男・62歳)につき,被害者の収入が高額であって累進税率の適用による所得税・住民税等の負担が成人男性の平均を相当程度上回ることからすれば50%を下回らない旨の加害者の主張について,逸失利益の算定に当たって租税額を控除するのは相当ではないことから排斥し,被害者の年収,年齢,生活状況等に鑑みて40%とした。
  ② 被扶養者2人以上の場合 30%
   ・ 会社員(男・39歳)につき,離婚して2人の子供と別居し,看護養育を元妻に委ねていたが,週1,2回は面会交流し,マンションの住宅ローンや管理費を負担して子供に住居を提供し,遊興費を負担するなど経済的負担もしていたことから,親権者として扶養義務を負っていたばかりでなく,実際にも相応の経済的負担をして,生計上は同一世帯を形成し,主として世帯の生計を維持していたとして,生活費控除率を30%とした。
   ・ 会社員(男・58歳)につき,妻に加えて,ニューヨーク等海外及び東京を拠点としてフリーランスのピアニストとして活動する娘(31歳)について,演奏料収入は年間100万円に満たず,経費が収入を上回り,被害者からの仕送りを受けて生活をし,被害者の死亡後は帰国し生活をしているとの事情から,被害者の被扶養者であったと認めるのが相当とし,生活費控除率を30%とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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