【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(18)

2023-07-21

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(2)年金収入・恩給収入
  ② 受給開始前の被害者につき将来の年金に対する逸失利益性を肯定した事例
   ・ 大卒大手企業会社員(43歳)につき,老齢年金の逸失利益は否定したが,退職年金については平成10年から12年までの同社の退職者の平均6割を基礎に認め,生活費控除率は老齢年金の支給もあることから40%で認めた。
   ・ 広告代理店取締役営業部長(50歳)につき,既に老齢厚生年金の受給資格を有しており,老齢厚生年金受給が事故の18年後で,その間に現在の年金制度に何らかの変更があったとしても,既に年金受給資格を有する者に対する年金支給が不確実とまではいえないとして逸失利益性を認め,67歳までは年金の支給が停止されるため否定し,68歳から80歳まで生活費控除率50%で認めた。
   ・ 会社員(50歳)につき,加入期間が25年(300か月)にわずかに満たない298か月だったことに鑑み,老齢基礎年金及び老齢厚生年金の死亡逸失利益を認め,就労中は支給停止となることから67歳までは否定し,67歳から81歳まで生活費控除散る60%で認めた。
   ・ タクシー乗務員(52歳)につき,事故当時受給資格を満たしていたとして60歳から80歳までの老齢厚生年金・厚生年金基金の逸失利益を認め,67歳までの就労による支給停止分を控除して,生活費控除率60%で認めた。
   ・ 会社員(57歳)の厚生年金法に基づく老齢厚生年金につき,受給資格を取得しているとして,60歳からの年金受給見込額(年額)から,67歳までの稼働収入分に関わる国民年金法等一部を改正する法律等による控除・減額をして23年間認め,生活費控除率は配偶者が老齢厚生年金の支給を受けられるようになる65歳まで40%,国民年金保険による老齢基礎年金の逸失利益を認めた。
   ・ 男性(58歳)につき,国家公務員等共済組合からの退職共済年金,国民年金保険による老齢基礎年金の逸失利益を認めた。
   ・ 主婦(59歳)につき,国民年金を298か月納付してきたことから,事故当時年金受給資格を取得していなくても老齢基礎年金について逸失利益を認めるのが相当であるとして,65歳になったときの年金見込み額を基礎とし,生活費控除率は65歳から就労可能な70歳までの5年間30%,以降15年間60%で認めた。
   ・ 夫を扶養する兼業主婦(59歳)につき,事故の約4か月後に受給権の発生する老齢年金の逸失利益を認め,生活費控除率は就労可能な72歳まで30%,以降86歳まで60%で認めた。
   ・ 男性(63歳)につき,事故時に国民年金の受給資格を得ており,65歳に達すれば国民年金を受給しえたとして逸失利益性を認め,満65歳から17年余りを認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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