【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(12)

2023-05-19

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ② 家事従事者(3)
 <裁判例>
 ・ 女性(80歳)につき,家計の管理を専ら一人でしていたほか,入院と自宅での生活を繰り返していた夫の身の回りの世話をしていたとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に,生活費控除率を40%として5年間認めた。
 ・ 夫と二人暮らしをしていた女性(80歳)につき,農業に従事していた他,家事一切を負担していたとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に,生活費控除率30%として,6年間認めた。
 ・ 女性(81歳)につき,同居の孫(自律神経失調症によち就業困難・要生活支援)のため家事労働をしていたと推認できるから,高齢であり持病の治療を受けていたこと,約2年前の交通事故で12級8号の認定を受けていたこと等を考慮に入れても平均的な主婦の半分程度の逸失利益は認めるべきであるとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均の半額を基礎に,生活費控除率30%で5年間認めた。
 ・ 男性(82歳)につき,料理と洗濯の他,パーキンソン病に罹っている妻の看護,世話を行っており,同年齢の家事従事者より家事の量が多いことから,賃金センサス女性学歴計全年齢平均70%を基礎とした。
 ・ 夫と二人暮らしの女性(85歳)につき,高齢であったことや,その夫も既に退職し,自分の身の回りのことを行っていた部分もあることを総合考慮し,賃金センサス女性学歴計全年齢平均70%を基礎とした。
 ・ 歩行器を使用しての歩行も困難な妻(事故後約1年8ヶ月後死亡)の介護を行いながら家事全般を担っていた男性(85歳)につき,本件事故時に妻の死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情はないとして,労働能力喪失期間を平均余命の2分の1である3年とし,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に,生活費控除率40%とした。
 ・ 近所の老人ホームに入所していた夫の身の回りの世話をしながら単身で生活していた女性(88歳)につき,家事従事者と認め,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均の80%を基礎に,3年間,生活費控除率30%を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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