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【コラム】:慰謝料(4)

2023-11-17

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

1 死亡慰謝料
(1)その他
  ② 子供,幼児等
   ・ 事故時妊娠17週の妊婦が,追突事故の1ヶ月半後に体重533グラムの超未熟児として出産した子(死亡時生後7か月)につき,超未熟児であったためライ症候群により死亡したことと事故との間の因果関係を認め,本人分2000万円,父母各100万円,合計2200万円を認めた。
   ・ 女児(3歳)につき,まだ死の意味すら十分に理解しかねる幼少の身で突然の死を余儀なくされたこと,突然に幼子を失った父母や近親者らにおいてその死を受容しかね呻吟する有様が顕著であることから,本人分2200万円,父母各300万円,合計2800万円を認めた。
   ・ 男児(3歳)につき,加害者である宅配業者が配達のため被害者宅を訪ねたが,被害者から母親が入浴中と聞いて帰ろうとした際に,追いかけてきた被害者を配達用者両で轢いたという事故態様から過失相殺を否定し,本人分2000万円,父母各300万円,事故を目撃した兄(4歳)200万円,合計2800万円を認めた。
   ・ 小学生(男・6歳)につき,本人分2200万円,父母各200万円,同居の祖母50万円,兄弟3名各30万円,非同居の祖父母各30万円,合計2800万円を認めた。
   ・ 女児(5歳)につき,本人分2400万円,父母各300万円,弟100万円,合計3100万円を認めた。
   ・ 女児(5歳)につき,本人分2200万円,父母各300万円,姉100万円,合計2900万円を認めた。
   ・ 男児2名(6歳と9歳)につき,加害者が音楽のリズムに合わせて車体を左右に振るべく右に急ハンドルを切ったところ,大きく車体が右側に向き進行制御を失って滑走して歩道上に乗り上げ,歩道上で信号待ちのために立っていた被害者らと衝突したこと等を考慮し,それぞれ本人分2400万円,父母各200万円,合計2800万円を認めた。
   ・ 小学生(男・9歳)につき本人分として2400万円を,両親は突然小学生の被害者を失い,未だショックを癒やすことができない生活を送っており,兄2名も当時中学1年と小学5年という時期に突然弟を失い,また母親が被害者と一緒にいた兄を責めるなど,多大な苦痛を被っていること等から,父母各300万円,兄2名各150万円,合計3300万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 慰謝料は,ご遺族の過ごしてきた関係,どれだけ愛情をもって接してきたかによって大きく増加いたします。
 個々のご遺族の無念さを考慮した慰謝料額で解決をすることが大切になりますので,適正な慰謝料での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:慰謝料(3)

2023-11-10

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

1 死亡慰謝料
(1)その他
  ① 独身の男女
   ・ 単身者(男・17歳・高校生)につき,本人分2200万円,父母各400万円,妹100万円の合計3100万円を認めた。被告がインターネットに原告らを誹謗する記事を書き込んだ点については,別訴が提起されていることに鑑み,交通事故訴訟の慰謝料の算定に当たっては考慮していない。
   ・ 単身者(男・31歳・スキューバダイビングインストラクター)につき,本人分1800万円,母400万円(922万円余りの扶養利益喪失の損害の他に),弟・妹・娘(離婚した妻が引き取り,毎月4万円の養育費を支払っている)各200万円の合計2800万円を認めた。
   ・ 単身者(男・19歳・大学生)につき,運転者及び会社のほか,運転者の極度の疲労状態を認識しながら乗車を止めさせなかった会社の運行管理者及びその代務者,適切な是正措置を行わなかった労務管理者にも不法行為責任を認め,死に至る態様が極めて凄惨で残酷なこと,居眠運転で追突したことなどから,本人分2500万円,父300万円の合計2800万円を認めた。
   ・ 単身者(男・31歳・会社員)につき,一人息子で父親の経営する会社を継ぐべき立場にあったことなどから,本人分2200万円,父母各300万円の合計2800万円を認めた。
   ・ 単身者(男・19歳・大学生)につき,加害者に救護義務違反があったが,第三者の通報により遅滞なく警察官が到着したとして,本人分2300万円,父母各250万円の合計2800万円を認めた。
   ・ 単身者(男・18歳・高校生)につき,母は夫と離婚した後被害者およびその妹の親権者として同人らを養育してきたこと,事故後も長期間にわたってその真相ないし実態の解明に努力してきたこと等から,本人分2200万円,母600万円の合計2800万円を認めた。
   ・ 単身者の姉妹(21歳・会社員,19歳・アルバイト)につき,両親が2人しかいない我が子を一度に失ったこと,はみ出し通行禁止場所において高速度での追越しをしようとした加害者の危険な運転態様等を総合し,本人分各2200万円,父母各600万円の被害者1人当たり合計2800万円を認めた。
   ・ 単身者(男・31歳・会社員)につき,希望していた鉄道会社に就職後,車掌としても真面目に勤務していたこと,父母思いの優しい息子であり,結婚を誓っていた交際相手もいたことなどから,2800万円を認めた。
   ・ 単身者(女・17歳・高校生)につき,本人分2500万円,父母及び妹各100万円の合計2800万円を認めた。
   ・ 単身者(女・15歳・中学生)につき,本人分2200万円,父母各250万円,祖父母・姉妹3名各120万円の合計3300万円を認めた。
   ・ 単身者(男・19歳・高卒後アルバイト,約1年後に同族会社に勤務予定)につき,加害者が刑事事件手続や民事事件原審まで過失がない旨不合理な弁解を続けていたことを勘案し,本人分2200万円,父母各300万円の合計2800万円を認めた。
   ・ 単身者(男・19歳・大学生)につき,加害車両には最大積載量の3.4倍を超える積み荷が載せられていた上,加害車両に最大積載量を偽るステッカーを貼るなどの過積載の態様も悪質であったこと等から,本人分と父分を合わせ2800万円を認めた。
   ・ 大学生(男・21歳・大学3年生)につき,慰謝料を増額するまでの事情はないとしたうえで,本人分2000万円,父母各400万円,姉200万円の合計3000万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 慰謝料は,ご遺族の過ごしてきた関係,どれだけ愛情をもって接してきたかによって大きく増加いたします。
 個々のご遺族の無念さを考慮した慰謝料額で解決をすることが大切になりますので,適正な慰謝料での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:慰謝料(2)

2023-11-02

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

1 死亡慰謝料
(1)母親,配偶者
  ・ 有職(公務員)主婦(30歳)につき,横断歩道上を歩行中の事故で,事故後帝王切開により分娩した後,死亡したことを勘案し,夫1500万円,子2人各750万円,父母各100万円,合計3200万円を認めた。
  ・ 有職主婦(53歳)につき,運転者及び会社のほか,運転者の極度の疲労状態を認識しながら乗車を止めさせなかった会社の運行管理者及びその代務者,適切な是正措置を行わなかった労務管理者にも不法行為責任を認め,死亡に至る態様が極めて凄惨で残酷なこと,居眠運転で追突したことなどから本人分2700万円,子2人各200万円,母100万円,合計3200万円を認めた。
  ・ 主婦(39歳)につき,本人分2200万円,夫及び子各200万円,父母各100万円,合計3000万円を認めた。
  ・ 主婦(39歳)につき,本人分2200万円,夫250万円,子250万円,両親各150万円,合計3000万円を認めた。
  ・ 主婦(55歳)につき,本人分2400万円,夫及び子各200万円,父母各100万円,合計3000万円を認めた。
  ・ 専業主婦(42歳)につき,一つの事故で2歳の子(次男)もほぼ同時期に死亡したこと等を考慮し,母親本人2400万円,次男本人分2000万円,夫400万円,長男400万円,合計5200万円を認めた。
  ・ 家業を手伝う主婦(59歳)につき,本人分2400万円,夫200万円,子3人各100万円,両親各50万円,合計3000万円を認めた。
  ・ 専業主婦(34歳)につき,本人分2200万円,夫200万円,子2人各200万円,実父母と義父母各20万円,合計2880万円を認めた。
  ・ 有職主婦(32歳)につき,加害者が公判廷で謝罪したいと述べながら結局謝罪せず,さらに裁判所から示唆を受けたにもかかわらず謝罪しなかったことなどから,本人分2400万円,夫200万円,両親各150万円,合計2900万円を認めた。
  ・ 保育士(女31歳)につき,本人分2500万円,夫200万円,子200万円,父母各100万円,合計3100万円を認めた。
  ・ 主婦(70歳)につき,本人分2400万円,夫200万円,子2人各100万円,合計2800万円を認めた。
  ・ 高次脳機能障害(9級)の兼業主婦(65歳)が,脳損傷に起因する希死念慮を伴ううつ病に罹患して自殺した場合に,傷害慰謝料240万円,後遺障害慰謝料690万円のほか,死亡慰謝料につき,2200万円を認めるのが相当とした上で,2200万円から690万円を控除しった1510万円について,自殺に対する寄与度減額(50%)を行い,755万円を認めた。
  ・ 事故の7日後から病院臨時職員(雇用期間6か月,更新あり)に採用が内定しており,小学生の子2人と同居して養育する家事専従者(女・事故時32歳,死亡時33歳)につき,傷害分17万円のほか,本人分2400万円,子2人各200万円,合計2800万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 慰謝料は,ご遺族の過ごしてきた関係,どれだけ愛情をもって接してきたかによって大きく増加いたします。
 個々のご遺族の無念さを考慮した慰謝料額で解決をすることが大切になりますので,適正な慰謝料での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:慰謝料(1)

2023-10-27

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

1 死亡慰謝料
  死亡慰謝料の金額は,具体的な斟酌事由により増減されるべきとされていますが,目安としては,①一家の支柱2800万円,②母親,配偶者2500万円,③その他(独身の男女,子供,幼児等)2000万円~2500万円とされています。死亡慰謝料の総額となっていますので,配分については,遺族間の内部の事情を斟酌して決めます。
(1)一家の支柱
   一家の支柱とは,主として一家の生計を維持している人のことで,それ以外の人に比べて高い死亡慰謝料が認められています。
  ・ 1つの事故で両親が死亡した事案において,遺児2人(9歳と6歳)に各2800万円を認めた。
  ・ 高齢の親を扶養していた大学教授(男・独身)につき,本人分2400万円,母,妹と2人の弟に各150万円,合計3000万円を認めた。
  ・ 男性(57歳)につき,相続放棄した妻300万円,子2人に各150万円を認めたほか,相続財産管理人の請求に係る本人分として2500万円,合計3100万円を認めた。
  ・ 娘が9歳のときに離婚し,以降17歳になるまで扶養してきた兼業主婦(49歳)につき,本人分2600万円,娘400万円,合計3000万円を認めた。
  ・ タクシー乗務員(男・52歳)につき,本人分2600万円,妻200万円,子2人(いずれも成人)各100万円,合計3000万円を認めた。
  ・ 外資系会社員(男・38歳)につき,本人分2800万円,妻200万円,子2人各100万円,合計3200万円を認めた。
  ・ 大手監査法人勤務職員(男・34歳)につき,本人分3000万円,妻200万円,父母各100万円,合計3400万円を認めた。
  ・ 1つの事故で生後11ヶ月の長男とともに死亡した男性(21)歳につき,本人分2800万円,妻400万円,両親に各100万円,合計3400万円を認めた。
  ・ 無報酬の取締役(男・66歳・年金・配当収入あり)につき,本人分2500万円,妻300万円,子2人各100万円,合計3000万円を認めた。
  ・ 会社員(男・46歳)につき,本人分2800万円,妻250万円,子2人各100万円,合計3250万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 慰謝料は,ご遺族の過ごしてきた関係,どれだけ愛情をもって接してきたかによって大きく増加いたします。
 個々のご遺族の無念さを考慮した慰謝料額で解決をすることが大切になりますので,適正な慰謝料での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:魔の時間帯の交通死亡事故に注意

2023-10-20

 秋から冬にかけて,午後5時から7時は交通事故の発生が多く,「魔の時間」と呼ばれています。
 愛知県警察が作成している「交通事故防止のPOINT」によると,平成30年から令和4年までの5年間の10月は,全時間帯に比べ,魔の時間では,歩行者,高齢者,横断中の交通死亡事故が多く発生していることが分かります。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/202310point.pdf

 また,11月は交通事故死者数が年間で最多となっていますので,引き続き魔の時間の交通事故に注意が必要です。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/202311point.pdf

 ドライバーは早めの前照灯点灯(10月は16時半が目安です)と,速度を落とした運転を心がけること,歩行者は横断歩道を利用し,横断時は左右の安全確認を行うことが大切です。

 歩行者が被害に遭う交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故や重篤な障害が残る事故につながりやすくなります。
 自動車と歩行者が衝突した場合,衝突時の速度が時速30kmを超えると歩行者の致死率が急に上昇し,その後も速度が上がれば上がるほど死亡率は上昇するといわれています。
生活道路では制限速度を時速30kmに設け,安全対策を行っている地域も増えてきていますので,速度規制のある道路では速度を遵守し,横断する歩行者に注意しましょう。
 なお,過失割合は,おおむね時速15km以上30km未満の速度違反で著しい過失,おおむね時速30km以上の速度違反で重過失となります。横断歩道や交差点の近くでもない場所における横断歩行者と四輪車の事故の基本の過失割合は,歩行者:車=20:80ですので,制限速度30kmの道路で時速60kmで運転していると,重過失となり,過失割合は,歩行者:車=0:100になります。

 死亡事故や後遺障害が残存した場合,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)が支払われますが,就労可能年数(67歳)までの年数が長いほど逸失利益は高額となります。
 ただし,67歳を超えている方や67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1よりも短くなる被害者については,原則として,平均余命の2分の1の年数となります。
 逸失利益は,一般的に,死亡事故や後遺障害の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
 
 死亡事故や重篤な障害が残る事故は賠償額が高額となるため,専門的知識と豊富な解決実績のある交通事故に強い弁護士に相談することが重要になります。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(26)

2023-10-13

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
8.扶養利益喪失等
 ・ 政府が自賠法72条に基づき,死亡被害者の内縁の配偶者にその扶養利益の喪失に相当する額を支払い,その損害をてん補したときは,右てん補は相続人にてん補すべき死亡被害者の逸失利益の額から控除すべきであるとした。
 ・ 内縁の夫の死亡事故について,内縁の夫の相続人(先妻との間の子)が受領した死亡損害賠償金のうち逸失利益の3分の2が内縁の妻の扶養利益分を侵害し,不当利得に当たるとして,内縁の妻から相続人に対する不当利得返還請求を認めた。
 ・ 10年以上にわたり内縁関係にある妻につき,被扶養利益喪失による損害として,内縁の夫の死亡逸失利益の50%を認めた。
 ・ スキューバダイビングのインストラクター(男・31歳)につき,離婚した妻との間に法定相続人となる長女がいるが,事故当時,被害者は母と同居して月額5万円程度の生活費を渡していたことから,母の喪失した被扶養利益を月額5万円とし,母の平均余命まで30年間分を母固有の損害と認め,長女の相続すべき被害者の逸失利益から控除した。
 ・ 相続放棄した被害者(男・54歳・会社役員)の同居の妻及び別居の実母につき,被害者が妻に自宅マンションの家賃及び生活費を交付していたこと,被害者の自宅近くに呼び寄せた実母の家賃のうち少なくとも4万円ないし5万円程度を負担していたことなどを考慮し,扶養逸失利益として,妻につき被害者の40%,実母につき15%を認めた。
 ・ 被害者(男・63歳)と約29年にわたりほぼ住居を同一として生活し内縁関係にあった女性につき,重婚的内縁関係は保護に値しないとの反論を,遅くとも同人が被害者と同居を始めた頃には,被害者と配偶者との間で夫婦としての関係が継続していたとは窺われず,婚姻関係が実質上破綻していたものとして退けた。被害者は,事故当時,収入からマンションの家賃,水道光熱費を負担し,生活費を女性に渡していたこと,マンションは被害者の本拠でもあり,また,女性に渡された生活費は被害者の生活のためにも費消されていること等から,被扶養利益を月額6万円とし,扶養請求権侵害として,被害者の平均余命の2分の1である10年間認めた。
 ・ 被害者(女・61歳)と約28年間同居し内縁関係にあった男性につき,法律上の配偶者と事実上の離婚状態にあったとはいえないとの反論を,被害者と同居後別居状態が継続していた等から退けた。被害者は,家事に従事するとともに和菓子屋でアルバイトをし,男性は自らの年金とともに被害者のアルバイト収入で生活していたこと等から,被扶養利益として賃金センサス女性学歴計60歳から64歳平均を基礎に,生活費控除率30%,平均余命の半分の13年間として算定した額の3分の1を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(25)

2023-10-06

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
6.中間利息控除
  死亡逸失利益は,利益が得られたであろう本来の時期以前にその全額が支払われるため,その後その時期までに利息が付くこととなります。そのため,その期間の利息を控除しないと,被害者はその間の利息分の利益を別途得ることになります。この利息による増額分は逸失利益から控除することになり,そのことを中間利息控除といいます。
中間利息は年5%の割合で控除するとされていましたが,現行民法417条の2は,中間利息控除に関する規定を新設し,控除される利息は損害賠償請求権が生じた時点における法定利率によるとしました。また,現行民法404条2項は法定利率は年3%と規定していますが,3年を1期として1期ごとに変動するものとしています。
このため,令和2年4月1日以降(当初3年間)に発生する交通事故の損害賠償請求について,中間利息控除に用いる利率は年3%となりました。なお,令和5年4月1日から令和8年3月31日までの期にかかる法定利率も,引き続き年3%となっています。
計算方法として,ホフマン式(単利計算)とライプニッツ式(複利計算)があり,最高裁はいずれも不合理ではないとしています。東京地裁,大阪地裁,名古屋地裁は,ライプニッツ式を採用しています。

7.幼児の養育費
  死亡した幼児につき,将来の養育費の支払いを免れた部分については,死亡逸失利益から控除しません。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(24)

2023-09-29

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
4.税金の控除
原則として控除しません。
 ・ 年収4082万余の高額所得者(内科医)につき,税金の控除をしなかった(但し,生活費控除率を50%とした)。
 ・ 年収2213万円の高額所得者(テレビ番組等の企画・制作会社代表者)につき,納税額の決定は立法政策上の問題で加害者とは無関係で賠償額とは別個の事項であるから,税額を控除すべきではなく,納税の事実は生活費控除の割合を決めるときの一つの事由であるとして,生活費控除率を45%とした。

5.就労可能年数
原則として67歳までです。67歳を超える者については,簡易生命表の平均余命の2分の1とします。67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる者については,平均余命の2分の1とします。
未就労者の就労の始期については,原則として18歳ですが,大学卒業を前提とする場合は大学卒業予定時とします。
但し,職種,地位,健康状態,能力等によって,上記原則と異なった判断がなされる場合があります。
年金の逸失利益を計算する場合は平均余命とします。
 ・ 箏曲師範(女・54歳)につき,就労可能年数を70歳までとした。
 ・ 開業医(男・56歳)につき,70歳まで稼働可能であるとした。
 ・ 医学部3回生(女・22歳)につき,就労可能年数を70歳までとした。
 ・ 定年制のない給与所得者(男・62歳,旋盤工)につき,平均余命2分の1の72歳まで就労可能であるとした。
 ・ 税理士(男・60歳)につき,税理士の業態は,事務員による作業の割合も大きく,通常の職種よりも長期にわたり稼働し得るとして,就労可能年数を75歳までとした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(23)

2023-09-22

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
3.生活費控除率
(3)年金部分
・ 主婦(70歳)につき,家事労働分は賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に生活費控除率を30%,年金収入分は,年金が生活保障を目的としていることに鑑み生活費控除率を40%とした。
・ 妻と二人暮らしの年金受給者(男・68歳)につき,持ち家で家賃が不要であったこと,年金等による家計収入よりも相当程度少額の生活費で賄っていたことがうかがわれるとして,生活費控除率を40%とした。
・ 妻と二人暮らしの年金受給者(男・87歳)につき,年金432万円余を基礎として,年金収入額及び妻と二人暮らしであったこと等に照らし,平均余命までの5年間,生活費控除率を40%とした。
・ 年金を受給し長男夫婦と同居する女性(68歳)につき,家事労働については,平均余命の2分の1(10年間),賃金センサス女性学歴計65歳以上平均の50%を基礎に生活費控除率30%,年金については平均余命の20年間,生活費控除率を50%とした。
・ 妻と二人暮らしの年金受給者(男・79歳)につき,年金360万円余を基礎として,妻も年金を受給し,持ち家で家賃負担もないことから生活費控除率を50%とした。
・ 女性(80歳)につき,厚生年金174万円余を基礎に,生活費控除率を50%として11年間認めた。
・ 夫が経営に関与している会社3社で稼働する主婦(63歳)につき,就労可能な67歳までは会社給与所得が得られたであろうとして年金に関する生活費控除率を30%とし,68歳以降は会社での収入は得られなくなり,主婦業のみとなること,他方,死亡時には収入のある夫や息子2名と同居していたことなどから生活費控除率を50%とした。
・ 主婦(80歳)につき,共済年金と通算老齢年金との年額合計335万円余は生活費控除率を5割で9年間認め,簡易生命保険契約に基づく年金年額24万円余は生活費控除せずに9年間認めた。
・ 年金受給者(男78歳)につき,年金230万円余を基礎として,年金により生計を維持していたことや年金金額等を考慮して,生活費控除率を50%とした。
・ 会社員(49歳)につき,稼働収入分のほか,厚生年金保険法に基づく障害厚生年金及び国民年金法に基づく障害基礎年金から加給分を控除した167万円余を基礎とし,49歳から67歳までは生活費控除率50%,67歳から80歳までは60%とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】愛知県内の交通事故死者数が100人に達する

2023-09-15

 愛知県警察によると,令和5年9月11日,愛知県内の今年の交通事故死者数が100人に達しました。昨年に比べ29日早く,愛知県警察では警戒を呼び掛けています。
 死者100人のうち,歩行者が38人と最多となっており,次いで四輪車25人,自転車16人,自動二輪13人,原付7人,その他1名となっています。また,年齢別では,65歳以上の高齢者が49人で,約半数となっています。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/jikonippou/documents/koutsuushibouzikonippou230913.pdf

 歩行者が被害に遭う交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故や重篤な障害が残る事故につながりやすくなります。
 死亡事故や後遺障害が残存した場合,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)が支払われますが,就労可能年数(67歳)までの年数が長いほど逸失利益は高額となります。
 ただし,67歳を超えている方や67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1よりも短くなる被害者については,原則として,平均余命の2分の1の年数となります。
 逸失利益は,一般的に,死亡事故や後遺障害の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
 
 また,交差点内や交差点付近で歩行者が横断中に事故に遭う場合,歩行者が横断歩道を横断しているかどうかで過失割合が変わってきます。
 歩行者は,横断歩道の付近においては,横断歩道によって道路を横断しなければならないとされています。一方,車は,横断歩道により横断している歩行者がある場合は,当該横断歩道の直前で一時停止し,かつ,その通行を妨げないようにしなければならないとされており,横断歩道により道路を横断する歩行者に対しては強い法的保護が与えられています。
 また,横断歩道外を横断している場合でも,おおむね横断歩道の端から外側に1mないし2m居ないの横断や,横断歩道が停止車両により閉塞されているときの当該車両の直前・直後の横断は横断歩道による横断と同視される可能性が高いです。
 それ以外の場所でおいては,横断歩道の付近(幹線道路であれば横断歩道の端から外側におおむね40mないし50m以内,それ以外の道路では20mないし30m以内)であれば横断歩道通過後なのか横断歩道の手前なのかによって過失割合が変わってきます。
 歩行者の事故の場合,事故態様によって過失割合が変わってきますので,ドライブレコーダー映像や事故の現場図を分析し,正確な事故態様を明らかにしたうえで,適正な過失割合で解決することも非常に大切となります。

 死亡事故や重篤な障害が残る事故は賠償額が高額となるため,過失割合がたとえ1割の違いであっても,賠償額が大きく変わってきますので,専門的知識と豊富な解決実績のある交通事故に強い弁護士に相談することが重要になります。

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