【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(16)

2022-03-14

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(16)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ③ 事業所得者,会社役員等
   ア 上肢・下肢の機能障害
・ 会社役員兼主婦(固定時59歳)の左肩関節機能障害10級につき,症状固定後も役員報酬を得ており減収を生じていないが,これは家族(役員)の努力によるもので,家事労働に支障があることは容易に推認できるとして,8年間25%の労働能力喪失を認めた。
    ・ 新聞配達店経営者(固定時37歳)の右足関節機能障害10級につき,会社組織ではあるが実態は個人事業と変わらず,新聞配達という肉体労働を伴うものであることを考慮し,現在の報酬は事故前の程度に回復しているが,収入低下は十分考えられるとして,30年間27%の労働能力喪失を認めた。
・ 外装工事業者(固定時34歳)の右腓骨神経麻痺による右足関節の機能障害,右足第1~5指の機能障害,右膝痛併合6級につき,作業現場で重量物を持った姿,自動車を運転している様子が撮影されており,売上所得にも大きな減少はないが,これは本人の特段の努力によるもので,労働能力喪失率及び期間に影響するものではないとして,33年間67%の労働能力喪失を認めた。
イ その他
・ 同族会社取締役(固定時48歳)の下肢短縮,骨盤骨変形等併合11級につき,事故後に市議会議員となり収入は増加しているが,現在の職務は本人及び支持者の努力により獲得・維持されたもので将来に亘って地位が確保できる可能性は高いとはいえないとして,19年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 空調設備会社の代表取締役(固定時45歳)の脊柱変形11級につき,取締役である妻及び母の他には従業員がおらず,主な仕事は本人が行っており,事故後比較的規模の大きい工事の発注が増えたため役員報酬が増額されたが,脊柱変形による背部疼痛や左上肢のしびれにより長時間上を見る姿勢や脚立等の上り下り,前屈みの姿勢,ハンマーを使う作業等が困難なことから,今後も安定者業績を得られることが確実とはいいがたいとして,22年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 飲食店の取締役兼店長(固定時36歳)の左膝痛等12級につき,事故後に減収はないが,仕事の大半が立ち仕事で左膝への負担が大きいこと,しゃがんだり重い物を持ったりする動作が必要で多大な苦痛や不自由を感じていることなどを総合考慮すると将来の収入維持に影響を与える蓋然性が高いとして,役員報酬額の8割を基礎に31年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社役員(固定時65歳)の頭痛等,股関節内側の痛み併合12級につき,復職後は事故前よりも30%少ない量の業務に従事しているのにもかかわらず減収は認められないが,復職するまで役員報酬が支給されなかったことなどから,役員報酬の80%を基礎に,12年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時47歳)の難聴につき,事故の頃に役員就任を打診され事故後に役員に就任し収入が増加しているが,事故時に役員就任に伴う収入増加の可能性を有していたこと,サラリーマン重役であることなどから役員報酬全額を基礎に,今後の就労状況によっては役員の重任がされない可能性もあることなどを考慮し,19年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 住宅設備工事業経営(固定時32歳)の頚椎捻挫,右肩腱板損傷12級につき,減収はないが,独立開業から4ヶ月後の事故であることから賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とし,10年間14%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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