【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(17)

2022-03-18

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(17)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(2)未就労者(事故後に就職した者も含む)
  ① 精神・神経症状
   ・ 中学生(固定時19歳)の頭部外傷後の頭痛,左上腕瘢痕,嗅覚脱失併合11級につき,短大卒業後,現在は幼稚園教諭として勤務しているが,欠勤なく勤務しているのは本人の並々ならぬ努力によるとして,賃金センサス女性高専短大卒平均を基礎に,就職した20歳から47年間25%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(固定時19歳)の高次脳機能障害(自賠責非該当)につき,専門学校卒業後から現在に至るまで国税局職員として稼働し,これまで具体的な懲戒処分を受けたことはなく,給与は年次ごとに上がっているものの,転職・再就職しようとした場合あるいはした場合において情緒障害・行動障害の出現時に受けるであろう評価等に鑑み,賃金センサス女性短大卒全年齢平均を基礎に,48年間20%の労働能力喪失を認めた。
  ② 上肢・下肢の機能障害等
   ・ 大学生(固定時24歳)の左下肢短縮,左足・膝関節機能障害併合8級につき,1年留年したうえで内定した上場企業に入社し,同期入社者と同等の扱いを受けているが,1年分の就職遅れによる損害と併せて,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎に,42年間45%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校中退のアルバイト(固定時23歳)の脊柱奇形,右腕関節障害等併合5級につき,事故後に復学し高校資格で公務員となったが,パソコン入力や荷物の運搬が左手でしかできない,自動車の運転ができない等の不都合・不便を特段の努力で補っており,将来にわたり公務員として勤務できるか保証の限りでないとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に,44年間75%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 大学生(固定時22歳)の左足関節の可動域制限及び左足関節痛12級につき,大学卒業後ソフトウエア開発会社に勤務しているが,就業上の支障が生じており,収入の減少が生じていないとはにわかに認められないこと,就業上の支障を克服すべく努力をしていること,将来転職等をする場合に不利益を生じる恐れがあることから,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎に,45年間14%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 大学生(固定時22歳)の左股関節機能障害,左膝関節機能障害,両下肢大腿部醜状障害併合10級につき,卒業後栄養士として病院に勤務し,給与等が普通にベースアップしているが,本人の相当な努力及び職場の理解によるものであり,階段の上り下りや調理に支障が生じていることから,賃金センサス大卒全年齢平均を基礎に,45年間27%の労働能力喪失を認めた。
  ③ その他
   ・ 大学生(固定時20歳)の腎臓機能の低下,手指の疼痛等8級につき,当面目立った生活上の支障は顕在化していない状態にあるとしても,労働能力への相当程度の制約は容易に推認できるとして,卒業予定時23歳から44年間25%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 未就労者の逸失利益については,就職後の仕事内容や後遺症の影響の程度等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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