【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(36)

2022-09-09

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(36)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(7)局部の神経症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例(4)
   ・ パイロット(固定時32歳)の外傷性頸性頭痛等(14級9号)につき,多数の人命を預かる航空機のパイロットという職務であること,残存した時痛の後遺障害はフライト時の気圧の変化の影響を受けやすく集中力や緊張感を要する職務への影響が小さくないこと,症状固定後も星状神経節ブロック療法を継続的に受けながら乗務を継続していたこと等を考慮して,10年間7%の労働能力喪失を認めた。
・ 歯科技工士(固定時58歳)の左母指の痛みや熱さ等の神経症状(14級)につき,事故前所得に固定費(減価償却費及び地代家賃)及び申告外の修理ギター検品作業の副業収入を加えた金額を基礎とし,左母指の可動域が4分の3以下に制限されていること,指を用いる歯科技工士であることを考慮して9年間10%の労働能力喪失を認めた。
・ 調理師(固定時46歳)の頭部瘢痕(12級),右母指の機能障害(非該当),包丁をしっかり握ることができない等の症状(14級)の併合12級につき,被害者は接客も担当しており,外貌醜状による業務における労働能力への影響は否定できないこと,調理は被害者の主要な業務の一つであり,母指IP関節可動域制限等により重いものを持ったり肉を切り分けたりする作業について相当な制限を受けているものと認められることから,局部の神経症状により喪失する労働能力は14級の通常の喪失率である5%にとどまらないとして,67歳まで12%の労働能力喪失を認めた。
・ 鉄筋工(固定時48歳)の第7頸椎棘突起骨折後の頸部痛等(14級)につき,頚椎棘突起の偽関節の画像所見を他覚所見と認めて12級13号と評価した上,日常作業において上方を見る必要のある作業継続が困難になった等の具体的な支障が生じていること,上記偽関節は骨癒合の見込みがないこと等を勘案し,19年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(事故時17歳)の右手指の症状(非該当)につき,右上腕三頭筋,右回内筋等の針筋電図検査で異常所見がみられ,C6・7神経根障害が疑われるとの所見が示されたこと等から,医学的に証明できるとして12級13号を認定し,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
・ ビル管理会社正社員(固定時38歳)の上腕骨近位端骨折後の右肩の疼痛と可動域制限につき,自賠責14級9号と認定された右肩の疼痛のほか非該当とされた右肩関節の可動域制限は原告の就労に影響があるとして,自賠責13級相当と評価して29年間9%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 むち打ちや末梢神経障害では,後遺症が認定されないと思われている方も少なくないと思いますが,まったく違います。むち打ちや末梢神経障害であっても,12級または14級に認定されることはあります。特に,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,むち打ち案件で後遺症の申請(被害者請求)をした場合,大半が14級以上を獲得しています。
 適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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