【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(34)

2022-08-26

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(34)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(7)局部の神経症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例(2)
   ・ 看護師(固定時27歳)の半月板損傷後の左膝関節痛等(12級12号)につき,看護師一般の就労状況や事故後の就労形態(週1,2回程度,訪問入浴やデイサービス等に従事)に照らし労働能力制限の割合が比較的大きく,後遺障害の内容や治療経過(6回手術)からは将来症状の大きな改善を期することも能わないとして,賃金センサス女性看護師全年齢平均を基礎に,10年間17%,その後30年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 産婦人科医師(固定時34歳,自賠責は頚部疼痛,両上肢痺れ14級10級)につき,自賠責は頸椎の可動域制限を評価していないとし,職業上,手術に従事することは避けられず,頸椎の可動域制限が手術の遂行に影響を及ぼすと考えられることから,33年間15%の労働能力喪失を認めた。
・ 看護師(固定時28歳)の胸郭出口症候群(自賠責非該当)につき12級12号に該当すると認め,看護師の収入においては力仕事や夜勤が高収入の一要因となっているところ,胸郭出口症候群の牽引症状により力仕事や夜勤に一定の支障を受けているとして,平均的な看護師の収入を基礎に,39年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ ラーメン店勤務(固定時35歳,自賠責11級)につき,脳脊髄液減少症を認めず局部に頑固な神経症状(12級)とし,高次脳機能障害を認めず非器質性精神障害(14級)とし,第12胸椎圧迫骨折(11級)等の後遺障害と併せて併合10級と認定して,32年間27%の労働能力喪失を認めた。
・ アルバイト(固定時25歳)の左肩関節脱臼,頸部挫傷による左手母指外傷後痙性内転位(限局性ディストニア)及び左肩・左上腕の痛み・だるさ(自賠責非該当)につき,左手母指痙性内転位は精神的要因によるものであるが本件事故との因果関係が認められるとして,41年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 給与所得者(固定時39歳)の頸部痛及び腰部の神経症状(自賠責非該当)につき,今回事故時には5年前の前回事故による頸部痛及び腰部の神経症状(14級)が治癒していたと認定し,14級相当の神経症状を認めた既存障害による減額等を行わず,5年間5%に労働能力喪失を認めた。
・ 調理師(固定時33歳)の頭痛,利き腕である右手の握力低下等の症状(14級相当)につき,調理師として包丁を握るなどの面で実際に支障が生じていること,握力低下は事故後5年以上が経過した現在も解消されていないことなどから,15年間8%の労働能力喪失を認めた。
・ エステティックサロン経営者(固定時36歳)の頚部神経症状,肩関節脱臼後の疼痛・あっ痛,左膝の痛み・屈伸不安定等,左肘の詰まったような痛み(併合14級)につき,膝をついた施術がつらく顧客を減らしたこと,施術中肘の痛みによるふるえや頚部の痛みが増強すること,神経症状がいわゆるむち打ち症によるものではないことなどから,31年間10%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 むち打ちや末梢神経障害では,後遺症が認定されないと思われている方も少なくないと思いますが,まったく違います。むち打ちや末梢神経障害であっても,12級または14級に認定されることはあります。特に,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,むち打ち案件で後遺症の申請(被害者請求)をした場合,大半が14級以上を獲得しています。
 適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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