【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(26)

2022-06-20

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(26)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(4)脊髄障害
脊髄損傷は,損傷した部位によって,四肢麻痺(両手および両足),片麻痺(左右いずれかの両手および両足),対麻痺(両手または両足),単麻痺(左右いずれかの手または足)が生じます。
発症部位と症状に合わせて,第1級1号,2級1号,別表第2の3級3号,5級2号,7級4号,9級10号,12級13号のが認定されます。
脊髄損傷を被ると,日常生活は大幅に制限され,収入も閉ざされ,大変な介護が必要となります。また,将来的に,筋力や循環器機能の低下に伴う合併症が生じるリスクも否定できません。被害者だけでなく介護を行う家族の将来を考えると,何より適正な賠償額を獲得することが重要になってきます。

<自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例>
・ 昼間は会社作業員として,夜間は寿司店配送運転手として二ヶ所に従事していた被害者(39歳)につき,自賠責は脊髄損傷等による四肢不全麻痺の程度は軽度として12級と認定したが,握力等低下で労働能力喪失の程度は通常の12級より高度であるとして,29年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(固定時22歳)の頸部痛,左下肢の筋力低下,知覚障害及び歩行障害(自賠責非該当)につき,明らかな脊髄症状が残存し9級10号に該当するとして,45年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ エステティシャン(事故時34歳,自賠責はそしゃく機能障害,左肩関節機能障害等併合9級)の左肩腕の不随運動(自賠責非該当)につき,頸髄損傷によるミオクローヌスによるものとし,左肩関節は用廃状態,左手の能力もほぼ喪失に近く,仕事が不可能になっただけでなく日常生活にも影響が出ているとして,67歳まで75%の労働能力喪失を認めた。
・ 塾講師・家庭教師(固定時43歳)の両上下肢麻痺及び排尿障害(自賠責非該当)につき,MRI画像等により外傷性椎間板ヘルニアが発生していること,右椎間板ヘルニアにより脊髄損傷を生じたことが認められ,本件事故後両上下肢麻痺及び排尿障害が生じたことなどからすれば,右症状は社会通念上本件事故によって脊髄損傷を負ったために生じたものであるとして1級相当とし,賃金センサスの7割を基礎に,67歳まで100%の労働能力喪失を認めた。
・ 電気調査員(固定時57歳)の左手掌のしびれ,左肩の鈍さ,左手指の巧緻運動障害,左下肢の脱力,左手握力低下等(自賠責非該当)につき,精髄損傷に由来する9級10号に相当する後遺障害であるとし,12年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ 建築業(事故時36歳)の頸髄損傷(自賠責7級4号)につき,中心性頚髄損傷後の後遺障害は,上肢につき軽度の麻痺,下肢につき中等度の麻痺を残すとして3級と認定し,脊柱の変形障害(11級)と併合して2級と認めたうえで,本件事故により受傷して入院したため仕事ができず,症状固定後も併合2級の後遺障害が現存して就労できないままであることなどから,休業期間を含め31年間100%の労働能力喪失を認めた。
・ 水泳等インストラクター(固定時50歳)の脊髄損傷による完全対麻痺(別表1の1級1号)につき,自賠責は中心性脊髄損傷による下肢の麻痺等を既存障害(12級13号)としたが,本件事故時において日常生活に支障がないほどにまで改善していたこと,本件事故後職場に復帰したが,慣らし勤務として開始されるなど勤務先の配慮が大きく,その後疼痛のため退職したこと等の事情を踏まえ,既存障害を労働能力算定にあたって考慮せず,17年間100%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 脊髄損傷では,適正な等級を取得することはもちろんのこと,将来の介護費用,住宅改造費など経済的負担が多くなるため,適正な賠償額を獲得することが重要となってきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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