【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(18)

2022-04-01

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(18)
4.眼の障害
(1)認定例
  ・ 会社経営・団体職員(固定時50歳)の正面視以外の複視13級につき,固定後約1年半後のHessスクリーンテストでは後遺障害認定の基準を満たさないが,現に複視症状があり,パソコン画面を30分以上集中して見ることができず業務の作業効率が大幅に低下し,視神経に過度の負担をかけるため重度の肩こりに悩まされていることから,17年間,9%の労働能力喪失を認めた。
(2)自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された例
  ・ 洋菓子店勤務予定者(固定時26歳,14級は示談済)の頚椎捻挫等に起因する両眼の視力低下を中心とする両眼眼球の著しい調整機能障害等(非該当)につき,11級に相当するとして,示談済の5%分を控除して,41年間15%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 中学生(事故時15歳,頚部痛14級)の眼の調整機能障害(非該当)につき,11級とし,頚部の症状とあわせ,49年間20%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 消防士(固定時54歳)につき,自賠責が認定した歯牙損傷12級については労働能力喪失を認めず,左示指の中手指関節機能障害,深視力の喪失,左肩腱板損傷及び左肩関節機能障害はいずれも後遺症は認められないが,深視力喪失につき大型車輌免許を失い,左示指や左肩関節の後遺障害のために消防士を退職していることから,13年間15%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 看護師(固定時50歳)の両眼滑車神経麻痺による正面視の複視10級につき,自賠責保険の労働能力喪失率表は従事する職種等を考慮しない一般的なものであるから,被害者の職種等により労働能力喪失率が増減する場合もあるとし,看護師という職業に眼の異常が及ぼす影響は多大で退職を余儀なくされたこと,現在は生命保険のパート,コンビニでのアルバイトで収入を得るにとどまっていること等から,17年間40%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 会社員(固定時38歳)の頚椎捻挫後の眼の調整力傷害,外斜視,複視(非該当)につき,事故との因果関係を認め,減収は生じていないが,種々の苦痛を覚え,また実際上の不便が生じており,今後,減収や転職を余儀なくされることも予想されるとして,29年間5%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 会社員(固定時31歳)の左足関節機能障害,複視併合12級につき,左眼周辺の痛み,眼精疲労,左眼流涙症,左眼周辺不快感の症状が残り,パソコン操作や自動車運転がしづらい等の種々の支障が生じていること,就労時間が8時間から4時間程度に減少したことに伴い収入が減少していること等から,36年間20%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 会社員(固定時26歳)の頭痛,後頭部痛14級につき,他覚所見としてSSEP検査による伝達時間の延長がみられること,上肢の症状,視野障害について治療経過に照らせば本件事故に起因して生じた症状と認められる等として,41年間20%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 眼の後遺傷害については,自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された例もあります。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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