【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(19)

2022-04-11

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(19)
5.耳の障害
  耳の後遺障害は,聴力障害(機能障害),耳殻の欠損(欠損障害),その他の障害に分けられます。
  聴力障害は,頭部外傷などによって,聴力を失ったり,聴力の低下が生じることです。標準純音聴力検査と語音聴力検査を行い,その結果により判定されます。等級は,4級(両耳の聴力を全く失ったもの)~14級(1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの)になります。
  耳殻の欠損は,耳殻の軟骨部の2分の1以上を欠損したもので,12級になります。両耳の耳殻を欠損した場合には,1耳ごとに等級を定めて,これを併合します。また,醜状障害として7級が認められることもあります。
  その他の障害は,耳鳴りや耳漏です。30dB以上の難聴を伴うことが条件となり,程度によって12級もしくは14級になります。
(1)認定例
  ・ 事務職会社員(固定時36歳)の右耳小骨離断に伴う右難聴,耳鳴りにつき,67歳まで5%の労働能力喪失を認めた。
(2)自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された例
  ・ タクシー運転手(固定時42歳,外傷性頸部頭部症候群,右肩捻挫,右肩腱板損傷14級)につき,左耳難聴,左耳鳴症は自賠責非該当であるものの,左耳の症状を10級5号とし,全体で併合10級として,25年間27%の労働能力喪失を認めた。
  ・ ホテルフロント・警備会社勤務(固定時63歳)の難聴・耳鳴りにつき,自賠責非該当であるものの,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 会社員(固定時43歳,後頸部痛等14級)の難聴・耳鳴りにつき,自賠責非該当であるものの,難聴を9級7号,全体で併合9級とし,心因的要因の影響を受けている可能性は否定できないが,影響を受けているとまで認めることはできず,喪失期間を10年間に制限するのは不相当として,24年間35%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 耳の後遺傷害については,自賠責保険より高い等級や喪失率で逸失利益が認められた例もあります。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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