【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(15)

2022-03-04

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(15)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ② 公務員以外の給与所得者
ウ その他
・ 営業所長(固定時51歳)の左総頸動脈仮性動脈瘤11級につき,受傷時の収入は維持され,一般労働力は残存しているが頸部等の機能障害が存するとして,16年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ マンション管理人(固定時75歳)の左眼球破裂による失明8級につき,給与の減収がないのは本人の多大な努力によるとし,5年間45%の労働能力喪失を認めた。
・ 航空機の燃料補給業(固定時28歳)の一耳の聴力障害11級につき,減収はないものの大型機のない別の飛行場へ異動していること,将来の昇任等における不利益の可能性などから,39年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 青果市場事務員兼主婦(固定時62歳)の第3腰椎チャンス骨折による脊柱変形,左肩関節痛併合11級につき,事故後も減収はないが,これは本人の努力と職場の配慮によるものであり,家事にも支障が生じているとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,13年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 勤務医(固定時52歳)の脊柱変形による腰痛等11級につき,麻酔医としての労働能力に与える影響は否めず,現時点においては本人の努力等によって減収は生じていないとしても,将来的に不利益を被る恐れは否定できないとして,75歳までの23年間9%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時43歳)の胸腹部臓器機能障害13級につき,不規則に排便をする必要があり,営業職では外出先での急な排便に対応できないことから,やむを得ず転職し,事故前と同程度の収入を得ているが,生活習慣に気を配り,転職をするといった努力や,現在の職場における周囲の理解によって就労を継続しているとし,事故時年収を基礎に,24年間9%の労働能力喪失を認めた。
・ 保険代理店及び事故査定を業としている会社の従業員(固定時60歳)の外貌醜状,脊柱変形障害,神経症状につき,労働能力に与える影響を否めず,外貌の傷跡等についても接客業務等に負担を生ずることを否定できないから,現時点において減収は生じていないことについて,原告の努力による部分も大きいほか,将来的にも不利益を被るおそれは否定できないとして,12年間20%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

Copyright(c) 2021 弁護士法人しまかぜ法律事務所 All Rights Reserved.