【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(12)

2022-02-07

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(12)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ① 公務員
イ 上肢・下肢の機能障害等
・ 公務員(固定時45歳・清掃作業員)の右大腿部切断6級につき,事故後減収はないが,痛みや通院のために勤務時間も短く欠勤も多いため,今後分限免職の処分を受けるおそれもあるとして,22年間,60%の労働能力喪失を認めた。
・ 郵便局医務室勤務の放射線技師(固定時52歳)の右膝関節機能障害12級につき,減収がないのは被害者の努力によるもので,今後病院勤務に転出できないことによる昇給上の不利益を被る蓋然性もあるとして,15年間10%の労働能力喪失を認めた。
・ 公務員(固定時38歳・バス運転手)の左手関節機能障害,顔面部の外貌醜状等併合11級につき,長時間同じ姿勢で運転を継続するというバス運転手の仕事に照らせば,将来も同じように仕事をして昇級,昇進ができるかは分からないこと,減収がないのは本人の特別な努力で仕事を維持していると認められること,外貌醜状が全く影響がないとは言い切れないことから,29年間17%の労働能力喪失を認めた。
・ 地方公務員(固定時49歳)の右大腿骨切断等併合3級につき,事故後の減収が6年間で1割程度に留まるのは地方公務員の身分の安定性によるところが大きいこと,義足及び車椅子の使用により日常生活は自立し,仕事内容は室内での事務作業が中心であることなどから,79%労働能力喪失とし,1級建築士の資格を有していることなどから60歳定年後も同程度の収入が得られる蓋然性があるとして,67歳まで事故前年収を基礎とした。
・ 公務員(固定時54歳・市バスの主にデスクワークを担当)の右膝関節機能障害12級につき,痛みの我慢,慎重な歩行や運転操作を行うことを心がけることにより業務の支障が生じないよう努力しているものと認められ,そのことが減収を食い止めている面も否定できないし,後遺障害の内容等に照らせば,定年退職後に高収入の転職を試みた場合,本件後遺障害が不利益をもたらす可能性があるとして,症状固定時収入を基礎として,14年間14%の労働能力喪失を認めた。

ウ その他
・ 養護学校勤務の公務員(固定時51歳)の顔面醜状,視力低下・視野欠損,歯牙障害等につき,事故後増収し,家事労働も不十分ながら行っているのは,本人の努力と職場・家族の協力によるとして,60歳定年までは実収入を基礎に30%,以後再任用で勤務継続できる65歳までは実収入の約7割を基礎に45%,以後67歳までは賃金センサス女性大卒全年齢平均を基礎に45%の労働能力喪失を認めた。
・ 事故後民営化された公団職員(固定時43歳)の左目失明・右眼視力低下併合6級につき,減収がなく処遇や昇給も特に不利益を受けていないが,多大な肉体的・精神的負荷を被りながら管理職としての職務を遂行していること,60歳定年後の再就職の機会や収入に少なからず影響を与える可能性があることから,60歳までは固定時を基礎とし25%,以降67歳までは賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に60%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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