【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(25)

2022-05-27

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(25)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(3)てんかん
てんかんとは特有の発作を繰り返す脳の病気のことで,交通事故のように頭部に外傷を負ったことを原因として起きるてんかんを,外傷性てんかんといいます。
てんかんの主な症状(発作)は,けいれん,意識の消失,全身にわたる筋肉の硬直・脱力などがあり,一過性の発作が数秒から数十秒,長くて数十分で回復しますが,いくつかの発作が重なったりして2回以上反復的に起こります。
てんかんの後遺障害では,どのような発作が起きたか,またその頻度・回数はどの程度かによって5級~12級が認定されます。
なお,1か月に2回以上の発作がある場合,一般的に高度の高次脳機能障害とされ,後遺障害第3級以上の認定対象となることがあります。

  ① 認定例
契約社員(固定時36歳)の高次脳機能障害,症候性てんかん7級につき,ドライバーとして稼働していた被害者が,てんかんの発症を契機に自動車運転をすることができなくなり,実際にも勤務先の運送会社を退職し,職を失っていることからすれば労働能力喪失の程度は大きいとして,31年間56%を認めた。
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
  ・ タクシー運転手(固定時59歳,自賠責非該当,労災9級)につき,9級に該当するとし,自賠責の認定した右足関節痛(12級)との併合8級だが,就労の障害となるのは専ら外傷性てんかんであるとして,11年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦兼美容師(固定時34歳,自賠責非該当)の外傷性の神経機能異常によるミオクローヌス様ないしジストニア様の上肢の不随運動につき,画像上の異常所見が見られないことが一般的であり,筋電図検査では異常ありとされていること,事故前まで社会適応良好で身体表現性障害の既往はなく,転換性障害を否定する鑑定結果も存在することから事故との因果関係を認め,5級相当として,33年間79%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 交通事故による外傷性てんかんは治りにくいと言われており,服薬期間も長く治療が長期に渡ることから,経済的な負担も大きくなります。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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