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【コラム】:5年間の子どもの交通事故死者・重傷者数5530人

2022-03-25

 警察庁は,平成29年から令和3年までの5年間の小学生や幼児の交通事故発生状況を発表し,死者と重傷者が合わせて5530人に上ることが分かりました。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/anzenundou/R4harunoundou_koutsuujikobunseki.pdf
 事故が起きた状況は横断中が最も多く,小学生では7割,幼児では5割を占めています。
 また,法令違反があった場合の内容は,小学生,幼児ともに「飛び出し」が約3割となっています。
 自転車乗車中の児童の死者・重傷者については,時間帯別では16時~17時台が最も多く,学齢別では歩行中と比較すると中・高学年が多くなっています。事故が起きた状況は,出合い頭衝突が7割を超えています。
 警察庁は,令和4年4月6日から同月15日まで実施される春の全国交通安全運動で,子どもと保護者への教育やドライバーへの啓発活動を行います。
 子どもには,横断歩道,歩道橋,信号機を利用すること,横断中も左右をよく見ることなどを繰り返し教えるとともに,大人も信号無視,乱横断をしないなど手本となるよう交通ルールを遵守し,ドライバーは横断歩道前の一時停止の徹底や通学路・住宅街では子どもの飛び出しに備え減速するなど,事故を防ぐためにそれぞれができることをやることが大切です。

 では,子どもが交通事故の被害に遭った場合どうすれば良いでしょうか。
 子どもが交通事故に遭った場合も,大人と同じように症状固定日までの治療費や慰謝料等が支払われます。
 また,入院付添費や,幼児や症状により一人での通院が困難な場合は通院付添費が認められることがあります。付き添いのために付添者が仕事を休んだ場合は,付添者の休業損害が支払われる場合もあります。
 その他,長期間の休学等によって進級遅れが生じた際の授業料や補習費,家庭教師,塾の費用等が損害として認められる場合もあります。
 
 後遺障害が認定された場合は,逸失利益が支払われますが,労働能力喪失期間は原則18歳からとなります。大学卒業を前提とする場合は,大学卒業時となります。
 また,基礎収入は,若年労働者(事故時概ね30歳未満)として,全年齢平均の賃金センサスを用いるのが原則となっています。
 
 子どもが交通事故の被害に遭ったら,身体が小さい分,受ける衝撃は大きく,死亡事故につながったり,重篤な障害が残ることも多くあります。
 死亡事故や重篤な障害が残った場合は,賠償額が高額となりますので,適正な賠償額を加害者から受け取るためには,実績のある交通事故専門の弁護士が交渉することが不可欠です。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所は,子どもの交通事故について解決実績が豊富にありますので,子どもの交通事故についてお困りの方は,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(17)

2022-03-18

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(17)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(2)未就労者(事故後に就職した者も含む)
  ① 精神・神経症状
   ・ 中学生(固定時19歳)の頭部外傷後の頭痛,左上腕瘢痕,嗅覚脱失併合11級につき,短大卒業後,現在は幼稚園教諭として勤務しているが,欠勤なく勤務しているのは本人の並々ならぬ努力によるとして,賃金センサス女性高専短大卒平均を基礎に,就職した20歳から47年間25%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(固定時19歳)の高次脳機能障害(自賠責非該当)につき,専門学校卒業後から現在に至るまで国税局職員として稼働し,これまで具体的な懲戒処分を受けたことはなく,給与は年次ごとに上がっているものの,転職・再就職しようとした場合あるいはした場合において情緒障害・行動障害の出現時に受けるであろう評価等に鑑み,賃金センサス女性短大卒全年齢平均を基礎に,48年間20%の労働能力喪失を認めた。
  ② 上肢・下肢の機能障害等
   ・ 大学生(固定時24歳)の左下肢短縮,左足・膝関節機能障害併合8級につき,1年留年したうえで内定した上場企業に入社し,同期入社者と同等の扱いを受けているが,1年分の就職遅れによる損害と併せて,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎に,42年間45%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校中退のアルバイト(固定時23歳)の脊柱奇形,右腕関節障害等併合5級につき,事故後に復学し高校資格で公務員となったが,パソコン入力や荷物の運搬が左手でしかできない,自動車の運転ができない等の不都合・不便を特段の努力で補っており,将来にわたり公務員として勤務できるか保証の限りでないとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に,44年間75%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 大学生(固定時22歳)の左足関節の可動域制限及び左足関節痛12級につき,大学卒業後ソフトウエア開発会社に勤務しているが,就業上の支障が生じており,収入の減少が生じていないとはにわかに認められないこと,就業上の支障を克服すべく努力をしていること,将来転職等をする場合に不利益を生じる恐れがあることから,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎に,45年間14%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 大学生(固定時22歳)の左股関節機能障害,左膝関節機能障害,両下肢大腿部醜状障害併合10級につき,卒業後栄養士として病院に勤務し,給与等が普通にベースアップしているが,本人の相当な努力及び職場の理解によるものであり,階段の上り下りや調理に支障が生じていることから,賃金センサス大卒全年齢平均を基礎に,45年間27%の労働能力喪失を認めた。
  ③ その他
   ・ 大学生(固定時20歳)の腎臓機能の低下,手指の疼痛等8級につき,当面目立った生活上の支障は顕在化していない状態にあるとしても,労働能力への相当程度の制約は容易に推認できるとして,卒業予定時23歳から44年間25%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 未就労者の逸失利益については,就職後の仕事内容や後遺症の影響の程度等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(16)

2022-03-14

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(16)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ③ 事業所得者,会社役員等
   ア 上肢・下肢の機能障害
・ 会社役員兼主婦(固定時59歳)の左肩関節機能障害10級につき,症状固定後も役員報酬を得ており減収を生じていないが,これは家族(役員)の努力によるもので,家事労働に支障があることは容易に推認できるとして,8年間25%の労働能力喪失を認めた。
    ・ 新聞配達店経営者(固定時37歳)の右足関節機能障害10級につき,会社組織ではあるが実態は個人事業と変わらず,新聞配達という肉体労働を伴うものであることを考慮し,現在の報酬は事故前の程度に回復しているが,収入低下は十分考えられるとして,30年間27%の労働能力喪失を認めた。
・ 外装工事業者(固定時34歳)の右腓骨神経麻痺による右足関節の機能障害,右足第1~5指の機能障害,右膝痛併合6級につき,作業現場で重量物を持った姿,自動車を運転している様子が撮影されており,売上所得にも大きな減少はないが,これは本人の特段の努力によるもので,労働能力喪失率及び期間に影響するものではないとして,33年間67%の労働能力喪失を認めた。
イ その他
・ 同族会社取締役(固定時48歳)の下肢短縮,骨盤骨変形等併合11級につき,事故後に市議会議員となり収入は増加しているが,現在の職務は本人及び支持者の努力により獲得・維持されたもので将来に亘って地位が確保できる可能性は高いとはいえないとして,19年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 空調設備会社の代表取締役(固定時45歳)の脊柱変形11級につき,取締役である妻及び母の他には従業員がおらず,主な仕事は本人が行っており,事故後比較的規模の大きい工事の発注が増えたため役員報酬が増額されたが,脊柱変形による背部疼痛や左上肢のしびれにより長時間上を見る姿勢や脚立等の上り下り,前屈みの姿勢,ハンマーを使う作業等が困難なことから,今後も安定者業績を得られることが確実とはいいがたいとして,22年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 飲食店の取締役兼店長(固定時36歳)の左膝痛等12級につき,事故後に減収はないが,仕事の大半が立ち仕事で左膝への負担が大きいこと,しゃがんだり重い物を持ったりする動作が必要で多大な苦痛や不自由を感じていることなどを総合考慮すると将来の収入維持に影響を与える蓋然性が高いとして,役員報酬額の8割を基礎に31年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社役員(固定時65歳)の頭痛等,股関節内側の痛み併合12級につき,復職後は事故前よりも30%少ない量の業務に従事しているのにもかかわらず減収は認められないが,復職するまで役員報酬が支給されなかったことなどから,役員報酬の80%を基礎に,12年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時47歳)の難聴につき,事故の頃に役員就任を打診され事故後に役員に就任し収入が増加しているが,事故時に役員就任に伴う収入増加の可能性を有していたこと,サラリーマン重役であることなどから役員報酬全額を基礎に,今後の就労状況によっては役員の重任がされない可能性もあることなどを考慮し,19年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 住宅設備工事業経営(固定時32歳)の頚椎捻挫,右肩腱板損傷12級につき,減収はないが,独立開業から4ヶ月後の事故であることから賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とし,10年間14%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(15)

2022-03-04

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(15)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ② 公務員以外の給与所得者
ウ その他
・ 営業所長(固定時51歳)の左総頸動脈仮性動脈瘤11級につき,受傷時の収入は維持され,一般労働力は残存しているが頸部等の機能障害が存するとして,16年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ マンション管理人(固定時75歳)の左眼球破裂による失明8級につき,給与の減収がないのは本人の多大な努力によるとし,5年間45%の労働能力喪失を認めた。
・ 航空機の燃料補給業(固定時28歳)の一耳の聴力障害11級につき,減収はないものの大型機のない別の飛行場へ異動していること,将来の昇任等における不利益の可能性などから,39年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 青果市場事務員兼主婦(固定時62歳)の第3腰椎チャンス骨折による脊柱変形,左肩関節痛併合11級につき,事故後も減収はないが,これは本人の努力と職場の配慮によるものであり,家事にも支障が生じているとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,13年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 勤務医(固定時52歳)の脊柱変形による腰痛等11級につき,麻酔医としての労働能力に与える影響は否めず,現時点においては本人の努力等によって減収は生じていないとしても,将来的に不利益を被る恐れは否定できないとして,75歳までの23年間9%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時43歳)の胸腹部臓器機能障害13級につき,不規則に排便をする必要があり,営業職では外出先での急な排便に対応できないことから,やむを得ず転職し,事故前と同程度の収入を得ているが,生活習慣に気を配り,転職をするといった努力や,現在の職場における周囲の理解によって就労を継続しているとし,事故時年収を基礎に,24年間9%の労働能力喪失を認めた。
・ 保険代理店及び事故査定を業としている会社の従業員(固定時60歳)の外貌醜状,脊柱変形障害,神経症状につき,労働能力に与える影響を否めず,外貌の傷跡等についても接客業務等に負担を生ずることを否定できないから,現時点において減収は生じていないことについて,原告の努力による部分も大きいほか,将来的にも不利益を被るおそれは否定できないとして,12年間20%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:3月は横断中と単独事故が多発

2022-02-25

 愛知県警察が作成している「交通事故防止のPOINT」によると,平成29年から令和3年までの5年間の交通死亡事故等を分析した結果,3月は横断中と単独事故が多発しています。
 https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/zikobousinopoinntoR4.3.pdf

 横断中の事故は交差点(交差点付近を含む。)内での発生が9割以上,単独事故は規制速度超過によるものが半数以上,単独事故の四輪車死者の半数はシートベルト非着用となっています。
 3月になり日は長くなってきていますが,まだまだ夕方の5時~7時の魔の時間に交通事故が多く発生していますので,引き続き注意が必要です。

 歩行者が被害に遭う交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故や重篤な障害が残る事故につながりやすくなります。
 死亡事故や後遺障害が残存した場合,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)が支払われますが,就労可能年数(67歳)までの年数が長いほど逸失利益は高額となります。
 ただし,67歳を超えている方や67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1よりも短くなる被害者については,原則として,平均余命の2分の1の年数となります。
 逸失利益は,一般的に,死亡事故や後遺障害の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
 
 また,交差点内や交差点付近で歩行者が横断中に事故に遭う場合,歩行者が横断歩道を横断しているかどうかで過失割合が変わってきます。横断歩道外を横断している場合でも,横断歩道の付近であれば横断歩道通過後なのか横断歩道の手前なのか,それ以外の場所なのかなど,事故態様に応じて過失割合が変わってきますので,ドライブレコーダー映像や事故の現場図を分析し,正確な事故態様を明らかにしたうえで,適正な過失割合で解決することが非常に重要となります。
 死亡事故や重篤な障害が残る事故は賠償額が高額となるため,過失割合がたとえ1割の違いであっても,賠償額が大きく変わってきますので,専門的知識と豊富な解決実績のある交通事故に強い弁護士に相談することが必要になります。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(14)

2022-02-18

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(14)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ② 公務員以外の給与所得者
イ 上肢・下肢の機能障害等
・ 洋品販売店勤務(固定時23歳)の左大腿切断4級相当につき,店長から店員に降格していること,接客業で立ちづめの仕事であることから考えると,給料の維持・増加は本人の不断の努力及び経営者の温情によるところが大であるなどとして,44年間92%の労働能力喪失を認めた。
・ 整骨院勤務(固定時33歳)の左肩関節機能障害等併合9級につき,就労の上で相当の不便を被っており,努力によって減収を免れているとして,34年間27%の労働能力喪失を認めた。
・ バイク便勤務(35歳)の左肘関節障害,神経障害併合11級につき,肉体労働は困難となり,出版社に正社員として就職し事故前より増収する見込みではあるが,これは幸運にも就職先が見つかったことや本人の努力の結果であるとして,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時40歳)の右足関節可動域制限,右足母趾可動域制限,骨盤骨変形,右下肢の外貌醜状併合10級につき,事故後の減収はないが,朝早く出勤するなど特段の努力によるものであり,入院のため昇格試験を受験できず実質的には減収ともいえるとして,27年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 信用金庫営業係長(固定時40歳)の右下腿部疼痛等,右足関節可動域制限併合9級につき,所得が減少していないのは特別の努力によるもので,役職が内勤の主事に異動することにより将来の昇給・昇進等不利益を受けるおそれがあるとして,当初10年間は35%,以降67歳までは27%の労働能力喪失を認めた。
・ 上場企業会社員(固定時37歳)の右足関節機能障害,右膝関節機能障害,右足趾機能障害,右下肢短縮,骨盤骨変形等併合5級につき,事故後収入は増加しているが,右下肢の疼痛等に耐えて長時間の残業をしたり自宅で毎日2時間以上掛けて体調管理する等の格段の努力や周囲の配慮が大きく寄与していること,システム運用管理作業において,現場でしゃがんだり重い物を運べないため,今後の昇進・転職の際に不利益を被る可能性があることから,30年間52%の労働能力喪失を認めた。
・ 銀行員(固定時35歳)の右足関節の運動障害12級につき,減収はないが,それは本人の努力によること,今後人事異動先が限られることも否定できないこと,症状悪化による関節固定術施行の可能性もあり,その場合,歩行が今以上に困難になり業務範囲が更に限定されるために,銀行での昇進,昇給等に不利益を被る可能性があるとして,32年間8%の労働能力喪失を認めた。
・ 准看護師(固定時45歳)の左足関節機能障害,左足1~5趾機能障害併合10級につき,事故後救急病棟の脳神経外科からクリニックの老人介護の勤務になり,収入は事故前から増加しているが,自己の努力と周囲の援助で仕事に従事しており,定年の60歳まで現在の地位と収入が確保される確実な保証はないうえ,定年後の再雇用等の可能性や後遺障害のある者の再就職には支障があること等から,事故前の年収を基礎に定年までは14%,以降67歳までは27%の労働能力喪失を認めた。
・ 宅配業務従事者(固定時38歳)の下肢偽関節,下肢短縮8級につき,妻のマッサージを受けつつ業務に従事し,荷物の運搬を伴わない物販で成績を伸ばす努力を継続するとともに,勤務先が少ない労力で高い歩合給が得られる特定の取引先を担当させる特別の配慮をすることでようやく事故前の収入の水準が維持されており,かかる特別の努力や配慮が就労可能期間を通じて継続するとは考え難いとして,事故前年の収入を基礎に,29年間45%の労働能力喪失を認めた。
・ 図書館非常勤職員(固定時38歳)の右股関節障害等併合11級につき,事故前の仕事に復帰して変わらない収入を得ていることは本人の大きな努力があると推認でき,仕事に復帰した4年後には転職を余儀なくされており,後遺障害の内容から就業できる仕事が限定される等かなりの困難が予想されることから,事故前年の収入を基礎に,29年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 日雇労働者(とび職・固定時32歳)の左手関節機能障害等併合11級につき,事故後に会社従業員として雇用された以降は事故前収入を上回っているが,本人の努力や周囲の配慮による部分も大きく,事故時30歳は若年とは言い難いが昇級や転職等による収入増加の可能性がある年齢で,事故がなければ事故後の現実収入以上を得る可能性もなかったとはいえないとして,事故直近の実収入を基礎に,35年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時21歳)の左手関節の可動域制限等10級につき,具体的に減収を生じていないが,就労に種々の支障を生じており,残業などで収入を維持しているとしたうえで,賃金センサス男性高卒全年齢平均を基礎に,症状固定後20年間は25%,その後は15%の労働能力喪失を認めた。
・ 鉄道会社運転士(固定時45歳)の右手関節機能障害,右足関節機能障害,右母趾の関節機能障害,左膝痛併合10級につき,電車のハンドルが握り込み難い等の制約を受けており,減収がないのは本人の努力により事故後も電車の運転の技能を活用できていることによるとして,事故前年の年収を基礎とし,定年見込み時期までは18%,以降67歳までは27%の労働能力喪失を認めた。
・ 現金輸送の警備業務従事の会社員(固定時22歳)の左膝関節動揺,左眼上瘢痕併合11級につき,事故前後で減収はないが,左膝関節動揺の後遺障害が日常的に重い荷物を運ぶ等,膝への負担が想定される業務に相当の不便を生じさせていることは容易に推察されるにもかかわらず,被害者が業務を継続しているのは,格別の努力によるものであるとして,賃金センサス男性高卒全年齢平均を基礎に,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(13)

2022-02-14

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(13)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ② 公務員以外の給与所得者
ア 精神・神経症状
・ 歯科医院勤務予定者(固定時23歳)の第5胸随以下完全麻痺,両下肢自動運動不能,泌尿器官機能麻痺等1級につき,減収がないのは被害者の特別な努力によるためなどとして,44年間100%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時28歳)の脳挫傷後の右上肢不全麻痺等10級につき,利き腕の右上肢不全麻痺は事務職という仕事の内容からすると直接仕事の効率に影響するはずのものであり,努力によって減収を免れているに過ぎないとして,39年間27%の労働能力喪失を認めた。
・ 新聞記者(固定時27歳)の脊髄損傷による完全対麻痺等1級3号につき,復職し内勤に配属されているが,勤務継続は周囲の恩恵的配慮と本人の多大な努力によるとして,事故前収入,勤務先の給与制度や勤務先作成の年収資産等から基礎収入を算定し,67歳まで90%の労働能力喪失を認めた。
・ 新聞社即売部長(固定時55歳)の左鎖骨・尺骨骨折,左下腿骨・左脛骨骨折後の左前腕の疼痛12級につき,1時間程座っていると左足の関節部分が動きにくくなるため会議等で不便や困難を感じ,左手で鞄を持てない等しており,事故後の収入に変動がほとんどないのは被害者の努力によるとして,事故前年収を基礎に,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 消化器外科医(固定時38歳)の腰痛・左臀部痛・左大腿後部痛につき,事故後1年5ヶ月間は減収がなく,また,現在の収入は事故時よりも若干増えているが,後遺障害残存により減収に伴う転職をし,経験を積んでいた消化器外科から形成外科に転向したことによる経済的不利益も生じていること等から,10年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時29歳)の第4胸随以下完全麻痺,知覚喪失,高次脳機能障害別表第1の1級1号につき,事故前と遜色のない給与所得を得られているのは,被害者の多大な努力や稼働先の理解・配慮を得られていることによるとして,事故当時同世代の大卒男子の平均年収に劣らない収入を得ていたことから,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎に,38年間85%の労働能力喪失を認めた。
・ 港湾通信業務従事者(固定時27歳)の神経・精神障害,右下肢の欠損,右股関節の機能障害等併合2級につき,退院後復職して事故前とほとんど変わらない額の給与収入を得ているが,勤務先の好意で勤務を継続しているとして,当初の5年を除いて,35年間100%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(事故時41歳)の頚部痛,上肢の疼痛等,腰部痛併合12級につき,減収はないが,頚部の可動域制限により自動車運転ができなくなったり電卓やコンピュータの長時間使用が困難となるなど仕事に対する影響もあるとして,事故前年の年収を基礎に,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 高所作業の業務を伴う会社員(固定時25歳)の左肩甲骨骨折後の左肩痛14級につき,固定後の職種の変更,減収はないが,疼痛や軽度の可動域制限により作業困難,作業能率の低下が認められるほか,症状固定から4年経過しても疼痛にさほどの改善は見られないことなどから,10年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 製造業従事(固定時27歳)の高次脳機能障害9級につき,事故後に減収が生じていないのは,勤務先の配慮や本人の努力によるものであり,将来の昇進や再就職において不利益な扱いを受ける可能性を否定できないとして,賃金センサス男性学歴計平均を基礎に,40年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ 工場の製造課長(固定時54歳)の右肩関節の機能障害,右手のしびれ症状併合10級につき,部下と現場で機械操作をする際や通勤・日常生活等に支障が生じており,減収がないのは休日出勤を増やす等本人の努力によるものであり,将来的には昇給等への影響も考えられることから,65歳定年までは事故前年収入を,定年後3年間は賃金センサス男性学歴計65~69歳平均を基礎に,14年間27%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(12)

2022-02-07

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(12)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ① 公務員
イ 上肢・下肢の機能障害等
・ 公務員(固定時45歳・清掃作業員)の右大腿部切断6級につき,事故後減収はないが,痛みや通院のために勤務時間も短く欠勤も多いため,今後分限免職の処分を受けるおそれもあるとして,22年間,60%の労働能力喪失を認めた。
・ 郵便局医務室勤務の放射線技師(固定時52歳)の右膝関節機能障害12級につき,減収がないのは被害者の努力によるもので,今後病院勤務に転出できないことによる昇給上の不利益を被る蓋然性もあるとして,15年間10%の労働能力喪失を認めた。
・ 公務員(固定時38歳・バス運転手)の左手関節機能障害,顔面部の外貌醜状等併合11級につき,長時間同じ姿勢で運転を継続するというバス運転手の仕事に照らせば,将来も同じように仕事をして昇級,昇進ができるかは分からないこと,減収がないのは本人の特別な努力で仕事を維持していると認められること,外貌醜状が全く影響がないとは言い切れないことから,29年間17%の労働能力喪失を認めた。
・ 地方公務員(固定時49歳)の右大腿骨切断等併合3級につき,事故後の減収が6年間で1割程度に留まるのは地方公務員の身分の安定性によるところが大きいこと,義足及び車椅子の使用により日常生活は自立し,仕事内容は室内での事務作業が中心であることなどから,79%労働能力喪失とし,1級建築士の資格を有していることなどから60歳定年後も同程度の収入が得られる蓋然性があるとして,67歳まで事故前年収を基礎とした。
・ 公務員(固定時54歳・市バスの主にデスクワークを担当)の右膝関節機能障害12級につき,痛みの我慢,慎重な歩行や運転操作を行うことを心がけることにより業務の支障が生じないよう努力しているものと認められ,そのことが減収を食い止めている面も否定できないし,後遺障害の内容等に照らせば,定年退職後に高収入の転職を試みた場合,本件後遺障害が不利益をもたらす可能性があるとして,症状固定時収入を基礎として,14年間14%の労働能力喪失を認めた。

ウ その他
・ 養護学校勤務の公務員(固定時51歳)の顔面醜状,視力低下・視野欠損,歯牙障害等につき,事故後増収し,家事労働も不十分ながら行っているのは,本人の努力と職場・家族の協力によるとして,60歳定年までは実収入を基礎に30%,以後再任用で勤務継続できる65歳までは実収入の約7割を基礎に45%,以後67歳までは賃金センサス女性大卒全年齢平均を基礎に45%の労働能力喪失を認めた。
・ 事故後民営化された公団職員(固定時43歳)の左目失明・右眼視力低下併合6級につき,減収がなく処遇や昇給も特に不利益を受けていないが,多大な肉体的・精神的負荷を被りながら管理職としての職務を遂行していること,60歳定年後の再就職の機会や収入に少なからず影響を与える可能性があることから,60歳までは固定時を基礎とし25%,以降67歳までは賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に60%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:愛知県内令和3年年交通事故の特徴

2022-01-28

 警察庁によると,令和3年中の全国の交通事故死者数は2636人となり,これは警察庁が保有する昭和23年からの統計で,5年連続で最少となります。
https://www.npa.go.jp/news/release/2022/20220104001jiko.html
 愛知県内の死者数は117人で,昨年より37人減少し,3年連続でワースト1を回避しました。しかしながら,今なお多くの尊い命が交通事故で失われ,多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいらっしゃいます。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/kisyahappyour312.pdf

 

 死者数を年齢層別にみると,65歳以上の高齢者は74人となり,死者数全体の63.2%を占めています。
 高齢者が交通死亡事故の被害に遭われた場合,損害賠償を請求する際に問題となるのが,死亡逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)です。
 高齢者といっても,仕事をされている方,家事従事者の方,年金を受給して生活されている方など様々な方がいますので,何を基準に死亡逸失利益を算定するかが争点になることが多くあります。
 死亡逸失利益は,一般的に,死亡事故の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが非常に重要となります。

 また,当事者別,事故類型別にみると,歩行者の横断中の事故が多くなっています。
 歩行者の交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故につながりやすくなります。
 愛知県では,歩行者の交通事故を減少させるため,ドライバーに対しては「横断歩道は歩行者優先」を呼び掛け,歩行者に対しては,自らの命を守るため,手を挙げて道路を渡る意思と感謝を示す「ハンド・アップ運動」を実施しています。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kenmin-anzen/handup.html
 
 歩行者は,横断歩道上では絶対的に近い保護を受けるので,信号機の設置されていない横断歩道上の事故については,原則として,歩行者の過失を問題とすることはありません。
 しかしながら,車の直前での横断・渋滞車列の間や駐停車車両の陰からの横断,夜間くらい場所における横断,車が高速で走行しているような幹線道路又は交通頻繁な道路の横断の場合には,歩行者としても左右の安全確認義務違反に基づく若干の過失相殺がされることがあります。死亡事故は賠償額が高額となるため,過失割合がたとえ1割の違いであっても,受け取れる賠償額が大きく変わってきます。
 歩行者は,横断歩道を横断する際は,手を挙げ,車が止まってもすぐには渡らず,止まってくれた車の対向車も止まっているか,後続の車が追い抜いてこないか等,左右の安全を十分に確認し,安全に渡ることが大切です。

 弁護士法人しまかぜ法律事務所は,高齢者や歩行者による交通死亡事故の解決実績が豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(11)

2022-01-24

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(11)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
  逸失利益とは,交通事故に遭わなければ得られるはずであった収入など,交通事故によって失われた利益のことです。
後遺障害認定の時点ですでに減収が発生しているような場合には,将来的にも減収が続くと予想できますが,公務員や事務職等,就労先の配慮や仕事の内容によっては,後遺障害が残っても実際には減収が生じない場合もあります。
このように,後遺障害は残ったものの,実際に減収はされていないような場合は,保険会社においても逸失利益を認めない傾向にあり,争いとなることが多くあります。
裁判所では,後遺障害がなければ得られたであろうと予想される収入から,後遺障害がある状態で実際に得られた収入を差し引いた金額が損害賠償の対象になるとしており,減収が実際に発生していない場合には,そこに「特段の事情」が認められないかぎり逸失利益を請求することはできないとしています。
  では,どのような場合が「特段の事情」となり,減収がなくても逸失利益が認められるのでしょうか。

(1)事故時に就労していた者
  ① 公務員
ア 精神・神経症状
・ 復職し収入減少の少ない地方公務員(固定時29歳),1級3号につき,将来の昇進,昇級,転職等につき不利益を受ける蓋然性があることを理由として,38年間70%の労働能力喪失を認めた。
・ 公立高校教師(固定時42歳),めまい,耳鳴り,嘔気,疼痛等14級につき,収入の減少はないが,入試問題を解く際にめまい等が現れ集中力や思考力が低下することがあるため,従来より時間がかかるなど努力を要しているとして,6年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 復職し収入減少の少ない地方公務員(固定時23歳),高次脳機能障害9級につき,事故前の収入額等から賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とし,勤務先の同僚等による援助,本人の特別の努力,将来的に昇進,昇級等に影響を与える蓋然性が高いことなどから,44年間30%の労働能力喪失を認めた。
・ 国税調査官(固定時31歳),脊柱奇形11級につき,事故後も減収なく普通昇給も果たしているのは努力によるところも多く,将来の昇級や昇格に影響出る可能性は否定できないこと,仕事の能力低下が身体の機能的障害ではなく腰痛の影響による集中力の低下にあること等から,36年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 国家公務員(固定時48歳),左膝疼痛,運動時痛等12級につき,事故後復職し減収はないが,工事監督のための外回りの業務や立ち仕事等に少なからず支障が生じていることから,10%の労働能力喪失を認めた。また,将来民間企業に就職することが予想されることから,定年である60歳ではなく67歳までの19年間を認めた。
・ 市営バスの運転手,左手関節,左母指基節部痛14級につき,減収はないが,バスの運転手として左手でシフトレバー操作やハンドル操作を円滑に行うこと,釣銭機に故障が生じた際に左手で釣銭機を円滑に操作すること等に苦労し,努力や工夫によって,これらを克服していることが認められるとし,事故前年年収を基礎に10年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 公立高校英語教師(固定時46歳),脾臓摘出,左下腿部痛,開放骨折部知覚過敏等,左下肢醜状痕につき,仕事に支障を生じており,人事評価ひいては昇級や昇格に影響することが容易に予測され,事故前と比較して減収がないとしても逸失利益を否定できないとして,21年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 地方公務員(固定時43歳)の高次脳機能障害,左片麻痺につき,復職し職場の上司及び同僚の配慮を受けて重大な支障は生じていないこと,基本給は減少していないが残業に伴う収入を得ていないこと,現在の勤務先を退職後の再就職の可能性は低いことから,事故前年年収を基礎に67歳まで60%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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