【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(31)

2022-07-29

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(31)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(7)局部の神経症状
   交通事故でもっとも多い受傷が,首や腰のむち打ちです。首や腰に痛みが残るだけでなく,場合によっては神経が圧迫されることで手,足にシビレが生じることがあります。
   また,末梢神経が傷つくことで,手,足の痛みやシビレが生じる末梢神経障害も多い症例といえます。
   自賠責保険では,「12級:局部に頑固な神経症状を残すもの」,「14級:局部に神経症状を残すもの」が認定されます。
   12級は事故が原因のヘルニアがMRIで客観的に確認できるもの(神経根症状)で,14級は客観的に症状を裏付けられないが症状が一貫して将来において回復困難と推定されるものです。
   認定されるには,①早期に,レントゲン,MRIを撮影する,②事故直後,治療中,症状固定時に,神経学的検査(テスト)をする,③事故後すぐに医療機関に通院する,④接骨院でリハビリをする場合でも,整形外科の通院を丸1ヶ月以上空けない,⑤自覚症状をしっかり訴えることが必要になります。

  ① 認定例(1)
   ・ 会社員(固定時29歳)の頸椎前弯消失という物理的症状を伴う頚部から左上腕にかけての神経障害(14級9号)につき,37年間5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 主婦(固定時63歳)の唇横の線状痕及び瘢痕(12級14号)と左右足の骨折部のしびれ等の神経症状(各14級9号,併合12級)につき,左右足の神経症状は立ち仕事の多い家事労働に支障を来すこと,神経症状は骨折に基づくものであること,顔面醜状は家事労働能力を喪失させるものではないことなどを総合し,平均余命の約2分の1,5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 派遣社員(固定時38歳)の左尺骨茎状突起骨折後の左手首の痛み等(12級12号)につき,10年間14%,その後19年間10%の労働能力喪失を認めた。
   ・専業主婦(固定時36歳)の右膝挫傷後の右膝痛(14級9号)につき,事故6年経過後も右膝痛が残存し,ひどい時には点滴治療を受けていること,足に負担の掛かる家事に支障が生じていること,後遺障害診断書に将来の憎悪の可能性を認める記載があることから,31年間5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 会社役員(固定時41歳)につき,自賠責は被害者の後遺障害(腰痛,頸部痛,上肢のしびれ,頭痛,耳鳴り,眼痛)のうち腰痛のみを14級と認定したが,症状全部につき14級に該当するとし,現在も通院していることも考慮して26年間5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 会社員(固定時37歳)の頚~後側頭部痛,左上肢しびれ,腰臀部痛等につき,MRI等から訴えと所見が神経学的に一致しており,第4,5,6頚椎神経根症によるもの(12級相当)とし,30年間14%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 中華飯店配膳人(固定時50歳)の右上下肢の痛み(14級9号)につき,症状固定後も2回職場への復帰を試みたが体が続かずに短期間で辞めさせられたこと,事故から4年近く経過した現在でも復職出来ていないことなどの事情を考慮し,事故時の収入366万円余を基礎に,17年間5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 会社員(固定時45歳)の右頬骨骨折に伴う右眼窩下神経損傷による右眼・頬部周囲のしびれ及び三叉神経痛(14級9号)につき,仕事はパソコンの画面を見ながら行う眼に負担のかかる作業が多く,これを継続する時間が短くなり効率が悪くなったと感じており,その状態が事故から3年経過した時点でも変わらないことから,22年間5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 会社員(固定時44歳)の左尺骨肘骨骨頭骨折後の肘関節痛(14級9号)につき,被害者は重い部品を運ぶ作業等をしており,痛みがある部位に常に負荷がかかっているから容易に神経症状が解消するとは考えられないとして,23年間5%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 むち打ちや末梢神経障害では,後遺症が認定されないと思われている方も少なくないと思いますが,まったく違います。むち打ちや末梢神経障害であっても,12級または14級に認定されることはあります。特に,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,むち打ち案件で後遺症の申請(被害者請求)をした場合,大半が14級以上を獲得しています。
 適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

Copyright(c) 2021 弁護士法人しまかぜ法律事務所 All Rights Reserved.