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【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(41)

2022-10-24

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(41)
9.外貌醜状等
(6)男性の事例
外貌醜状の後遺障害等級は,以前は,女子につき,外貌に著しい醜状を残すものが7級,外貌に醜状を残すものが12級,男子につき,外貌に著しい醜状を残すものが12級,外貌に醜状を残すものが14級とされていました。
しかし,平成22年6月10日以降に発生した事故については,男女の区別なく,外貌に著しい醜状を残すものが7級,外貌に相当程度の醜状を残すものが9級,外貌に醜状を残すものが12級なっています。

 ・ 男児(事故時5歳)の顔面醜状(12級),歯牙障害(12級)の併合11級につき,18歳から67歳まで10%の労働能力喪失を認めた(平成6年)。
 ・ 予備校生(固定時29歳)の頸部,腰部の神経症状(各14級),顔面醜状(12級)の併合12級につき,男性といえども醜状痕によって希望する仕事への就職が制限されたり,就職しても営業成績があがらなかったり,仕事の能率や意欲を低下させて所得に影響を与えることは十分に考えられるとして,症状固定から10年間10%,その後10年間5%の労働能力喪失を認めた(平成13年)。
 ・ 被害者(固定時23歳)の頭部3ヵ所の線状瘢痕(12級),歯牙障害(13級)の併合11級につき,対人面接が重要な職種によっては就労の機会を制限され,労働の意欲を低下させるとして,67歳まで5%の労働能力喪失を認めた(平成14年)。
 ・ 作業療法士(固定時29歳)の顔面おとがい部長さ5cm以上の線状痕(12級),障害歯10歯喪失又は著しい欠損(11級)の併合10級につき,事故後の年収が事故時を上回っているが,事故の年の年収は3月末以降に過ぎないこと,事故当時の勤務先は勤務年数に応じて昇給する賃金体系であること,職場への遠慮等から無理をして職責をこなしていたことなどから,労働能力喪失がないとはいえないとし,外貌醜状による労働能力の喪失も認められるとして,67歳まで15%の労働能力喪失を認めた(事故日平成16年)。
 ・ 高校生(固定時19歳)の右下腿部前面醜状(14級),右眼下部10円銅貨大以上瘢痕(14級)の併合14級につき,対人折衝が必要な業務に従事しており,顔面に傷があることを気に病み,業務に集中できず,仕事の能率や意欲を低下させることは十分に考えられるほか,将来的には営業部門等にも配属される可能性もあり,労働能力喪失の期間を制限すべきでないとして,48年間5%の労働能力喪失を認めた(事故日平成20年)。
 ・ 会社員(固定時55歳)の肘の屈曲,肩の拳上・外転の障害(12級),左頬部線状痕(12級)の併合11級につき,定年が5年以内に迫っており,定年後の再雇用や新たな就職の問題も生じるところ,その際には外貌の著しい醜状も就職に不利益を生じる蓋然性が高く,労働能力を低下させる要素になると認められることから,定年までの5年間は事故の翌月からの年俸,それ以降の8年間については再雇用されることを前提とした金額を基礎に,それぞれ20%の労働能力喪失を認めた(事故日平成21年)。
 ・ 専門学校生(固定時23歳)の外貌醜状(7級),右眼視力障害(8級),右まぶた運動障害(12級)の併合5級につき,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に,67歳まで79%の労働能力喪失を認めた(平成24年)。
 ・ 専門学校卒の給与所得者(固定時26歳)の高次脳機能障害(5級),醜状障害(旧基準12級),歯牙欠損(12級)の併合4級につき,醜状障害は事故後に改正された7級として併合3級とし,賃金センサス男性高専・短大卒全年齢平均を基礎に,67歳まで100%の労働能力喪失を認めた(平成25年)。
 ・ 交通誘導警備員(固定時66歳)の頭蓋骨欠損による左額部から左頭部の組織陥没(12級)につき,事故前に人工骨を使用した頭蓋骨形成術を受けており,事故後に髄液漏を発症したため頭蓋骨欠損のまま症状固定となり,肉体労働は極めて危険で,営業職や事務職につくことも困難であり,単に外貌醜状にとどまらず就労に大きな制約を受けているとして10級に相当するとし,6年間27%の労働能力喪失を認めた上で,既往症につき30%の訴因減額をした(事故日平成22年5月)。
 ・ 会社員(固定時48歳)の高次脳機能障害(7級),歯牙障害(10級),嗅覚脱失(12級),顔面部の複数の線状痕(12級)の併合6級につき,どうしても人目を気にしてしまい,気持ちが消極的になることから,外貌醜状も労働能力に影響を与えているとして,67歳まで67%の労働能力喪失を認めた(事故日平成21年)。
 ・ 自動車運転手(固定時41歳)の口唇部挫創後瘢痕(9級)につき,口唇部に残存している長さ5cm以上の線状痕であり,人目に付く程度のものであること,初対面に近い顧客との折衝に消極的になっていること,車内の評判が落ちて将来の昇進や転職に影響したりする可能性が否定できないこと等から,67歳まで35%の労働能力喪失を認めた(事故日平成23年)。
 ・ 舞台俳優・衣料品店準社員(固定時25歳)の外貌醜状(12級)につき,音楽大学卒業後,舞台俳優を目指して現にダンサーとして舞台活動を行っているところ,舞台活動においては外見の均整も重要な要素であることは否定し難い等として,67歳まで5%の労働能力喪失を認めた(平成28年)。
 ・ 配達業務等に従事する会社員(固定時37歳)の左眼下部1箇所,左頬2箇所の線状痕(12級)につき,従前は営業業務を行っていたこともあったが,転職活動においては,配達業務等不特定多数の者と接する機会が少ない業種かどうかを確認し,接客や営業の仕事は避けるようになっていること等から,67歳まで7%の労働能力喪失を認めた(令和2年)。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 醜状は時間の経過とともに薄れていくため,醜状障害の後遺症申請は,事故後6ヶ月で早急に行うことが重要になります。また,医療技術の進歩によって,傷跡を目立たなくすることは可能になってきており,醜状障害を理由とする後遺症が認定基準は厳しくなりつつあります。(1)事故後6ヶ月で早急に後遺症申請をするのか,または(2)保険会社の治療費対応で形成手術を行って後遺症申請は行わないという選択をするのか,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,被害者の傷跡を確認し,もっとも最適な方法をアドバイスしていきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(40)

2022-10-14

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(40)
9.外貌醜状等
(4)14級の事例
・ 小学生(事故時9歳)の右下肢露出面の醜状痕(14級)につき,同級生から傷跡の指摘をされ,プールや公衆浴場の使用を避けたり,受診時に傷を見られることを嫌がったり等,醜状痕が被害者の行動を制限しているとし,将来を考える上で,本件事故による醜状痕によって行動や発想の制限を受け,職業について自由に考え選択することができないと認め,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,就労後5年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 派遣社員(固定時37歳)の右大腿内部瘢痕の下肢醜状(14級)につき,派生する機能障害・知覚異常等も認められることから,事故前3ヶ月間の収入から算出した年収を基礎に,20年間5%の労働能力喪失を認めた。

(5)非該当の事例
・ 主婦兼女優・ホステス(固定時40歳)の肩甲部痛,上肢シビレ,頸部背部痛,三叉神経麻痺,歯牙障害(併合11級,眼瞼下垂は自賠責非該当)につき,頸部痛,眼瞼下垂,右上肢知覚障害は就労先の選択を狭め職務内容にも制限が伴い,殊に女優やホステスとしての稼働に眼瞼下垂は重大な支障を生じさせるとして,当初5年間は日額2万円余を基礎に35%,次の15年間は賃金センサス全労働者全年齢平均を基礎に20%,その後7年間は賃金センサス女性全年齢平均を基礎に14%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 醜状は時間の経過とともに薄れていくため,醜状障害の後遺症申請は,事故後6ヶ月で早急に行うことが重要になります。また,医療技術の進歩によって,傷跡を目立たなくすることは可能になってきており,醜状障害を理由とする後遺症が認定基準は厳しくなりつつあります。(1)事故後6ヶ月で早急に後遺症申請をするのか,または(2)保険会社の治療費対応で形成手術を行って後遺症申請は行わないという選択をするのか,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,被害者の傷跡を確認し,もっとも最適な方法をアドバイスしていきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(39)

2022-10-11

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(39)
9.外貌醜状等
(2)9級の事例
・ 空港ラウンジで接客業に従事する契約社員(固定時33歳)の化粧を施しても正面から見てそれと分かる右頬から右耳殻に至る長さ9cmの線状痕等(9級)につき,事故前収入を基礎に,67歳まで35%の労働能力喪失を認めた。
・ 地方公共団体の嘱託職員等としてカウンセリング業務に従事していた兼業主婦(37歳)の前額中央やや右から左眼瞼部にかけての線長約5.6センチメートルの線状痕に左前額部から左眉毛上部にかけての線約1.6センチメートルの線状痕がY字型に繋がる縫合創痍(9号)につき,内容・部位・程度に加え,性別・職種・心理的影響に照らし,事故前収入を基礎に,67歳まで25%の労働能力喪失を認めた。

(3)12級の事例
・ 会社員(固定時29歳)の顔面醜状(12級),下顎骨折に伴う左顎痛(12級),7歯欠損(12級)の併合11級につき,外貌醜状により接客や対人間関係の生涯による就労への悪影響があるとして,21年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 女児(事故時2歳)の顔面傷跡(12級)につき,賃金センサス全労働者全年齢平均を基礎に,18歳から67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
・ 専門学校を卒業して各種資格を有し,ダイビングインストラクターを目指すアルバイト(固定時21歳)の右下肢醜状(12級),左下肢醜状(14級)の併合12級,軽度右下肢機能障害(非該当)につき,機能障害により労働能力が相当程度喪失したこと,両下肢の醜状がその職業選択を狭め,少なくともダイビングインストラクターとなる可能性を閉ざしたことから,10年間15%,次の10年間10%,その後10年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 歯科衛生士(固定時28歳)の左下腿リンパ浮腫(7級),左右の下肢瘢痕拘縮(12級)の併合6級につき,両下肢の瘢痕の大きさやそのために生じる精神的負担及び仕事に対する萎縮的効果,未婚女性であることを考慮し,瘢痕は労働能力に相応するとして,39年間67%の労働能力喪失を認めた。
・ 英会話教室運営の主婦(固定時47歳)の顔面部醜状障害(12級),頸部痛・背部痛・左手にかけてのしびれ感等(14級),腰痛・腰の抜ける感じ(14級),PTSD(12級)の併合11級につき,20年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 小学生(固定時12歳)の顔面線状痕・陥没痕(12級)につき,今後の進路ないし職業の選択・就業等において不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず,醜状痕を気にして消極的になる可能性も考慮し,賃金センサス全労働者全年齢平均を基礎に,49年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時19歳)の口唇部の10円銅貨大以上の瘢痕(12級)につき,被害者は保育士になることを希望しているが,子供に接する仕事であり,瘢痕によりその就職が制限される蓋然性があるとし,事故後のコンビニ等でのアルバイトはこれを否定するものでなく,大学卒業から就職等の制限の蓋然性が高い40歳まで14%の労働能力喪失を認め,それ以降の不利益は慰謝料で考慮するとした。
・ 介護従事者(固定時45歳)の眉間に人目につく3センチメートル以上の線状痕(12級),頚項部痛,胸背部痛及び腰痛(14級)の併合12級につき,介護の仕事は日常的に他人と接し,円滑な人間関係の形成等が必要とされること,年齢等に照らし今後転職する可能性も否定できないこと等から,外貌醜状が労働能力に影響をもたらすとして,67歳まで10%の労働能力喪失を認めた。
・ 兼業主婦(事故時52歳)の右下腿打撲皮下血腫等による右下肢外傷後瘢痕(12級相当)につき,外貌醜状の後遺障害は否定し,外傷に伴う同部位の皮下脂肪層,真皮組織の欠損により脛骨近傍のわずかな刺激に対する痛み等が生じていることから,右下肢に痛み等の神経症状の残存を認め,家事労働に一定の支障が生じているものとし,平均余命の2分の1の17年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ アパレルショップ店員兼主婦(固定時18歳)の顔面神経麻痺による口唇閉鎖不全,顔面部及び頚部の瘢痕(12級),左下口唇知覚異常及び知覚鈍麻(14級)の併合12級につき,対人関係に消極的となり,店員に一度復職したものの接客業務に支障を生じて退職しており,接客業等への就労可能性が一定程度制限されているほか,家事労働にも心理的負担を感じるという意味で間接的な影響が生じており,顔面神経麻痺や頚部の瘢痕は将来回復する見込みは乏しいとして,49年間5%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 醜状は時間の経過とともに薄れていくため,醜状障害の後遺症申請は,事故後6ヶ月で早急に行うことが重要になります。また,医療技術の進歩によって,傷跡を目立たなくすることは可能になってきており,醜状障害を理由とする後遺症が認定基準は厳しくなりつつあります。(1)事故後6ヶ月で早急に後遺症申請をするのか,または(2)保険会社の治療費対応で形成手術を行って後遺症申請は行わないという選択をするのか,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,被害者の傷跡を確認し,もっとも最適な方法をアドバイスしていきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(38)

2022-09-30

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(38)
9.外貌醜状等
  交通事故による外傷によって,人目につくような瘢痕,線状痕,色素陥没,色素沈着による黒褐色の変色,色素脱失による白斑などが残ることがあります。
外貌醜状の後遺障害等級は,男女の区別なく,外貌に著しい醜状を残すものが7級,外貌に相当程度の醜状を残すものが9級,外貌に醜状を残すものが12級とされています。また,上肢または下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すものが14級となります。
  頭部の場合,“手のひら大以上の醜状”で7級,“鶏卵大(約15.7㎠)以上の瘢痕”で12級が認められます。醜状は人目に付くものであり,髪の毛で隠れる部分は,醜状と扱われません。手のひらは被害者の大きさのものを参考にします。
  顔の場合,“鶏卵大(約15.7㎠)以上の瘢痕”“5㎝以上の線上痕”“10円硬貨以上のくぼみ”で7級,“10円硬貨以上の瘢痕”“3㎝以上の線上痕”で12級が認められます。
  首の場合,“鶏卵大(約15.7㎠)以上の瘢痕”で12級という等級が認められます。
  手,足の場合,“露出面に手のひらの大きさの醜状”で14級という等級が認められます。
  複数の醜状があった場合,原則は,1つのサイズが,上記の基準を満たさない限り,後遺症は認定されません。例外的に,同じ部位に集中している場合は合算できますが,上の基準は1つのサイズの基準ですので,合算の場合は,上の基準を大きく上回る必要があるとされています。

(1)7級の事例
・ 寿司職人(固定時31歳)の右顔面の変形・醜形(7級),味覚低下,複視,感音難聴等につき,67歳まで56%の労働能力喪失を認めた。
  ・ アルバイト(固定時25歳)の顔面醜状(7級)につき,左下眼瞼下垂により笑ったとき左目が開くこと,左鼻穴形態が右と異なり6cmの線状痕を残すこと,アルバイトとはいえ接客業に就いていたこと等から,67歳まで30%の労働能力喪失を認めた。
・ 海上自衛官(固定時27歳)の顔面の知覚異常を伴うため意思疎通の障害が見られる外貌醜状(7級),左下腿痛(14級)の併合7級につき,収入における不利益が現実に生じていること,自衛官退職後の再就職先への影響,外貌醜状を意思疎通の障害を主として評価するときには加齢による労働能力喪失率の減少を認める必要性は乏しいこと等から,67歳まで35%の労働能力喪失を認めた。
・ 大卒後上場会社を退職し母親経営の会社の取締役(固定時28歳)の顔面の5個の瘢痕,左眼下部の5cm以上の線状痕(7級),左足関節痛(12級)等併合6級につき,事故前に接客の業務に就いており,後継者として取引先との交渉も予想され,顔面醜状の影響は軽視できないが,その影響はしだいに緩和されると期待しうるとして,10年間35%,その後29年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ ラウンジ風飲食店,鍋料理専門店の経営者(固定時52歳)の外貌醜状(7級),神経症状(14級),眼科(12級と14級)の併合6級につき,17年間60%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦(固定時26歳)のオトガイ部瘢痕(7級,ひきつけによる違和感含む),歯牙損傷(14級)の併合7級につき,外貌醜状については主婦であるから大きく労働能力に影響することは考えられないが,影響が全くないとはいえず,ひきつれによる違和感があること,歯牙欠損による補綴は家事労働その他に一定の程度影響を与えること等から,67歳まで16%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時58歳)の8年にわたり8回の顔面修正術等を受け,右下眼瞼,鼻孔下部及び鼻背を中心とする線状痕,鼻背を中心とする長さ5cm以上の線状痕(7級),味覚障害等の併合6級につき,転職を余儀なくされており,外貌醜状が労働能力に与える程度は相当深刻であるとし,67歳まで30%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時24歳)の頭部外傷に伴う精神神経障害等(7級),右同名半盲(9級),醜状障害(7級)の併合5級につき,左前額部の10円玉硬貨大以上の組織陥没は人目につき,年齢等からすれば稼働に対する一層の制約が生じ,収入が減少することは十分に考えられることから,67歳まで79%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(事故時17歳)の左眉周辺の線状痕及び下顎部の瘢痕(7級),歯牙障害(13級)の併合6級につき,7級の外貌醜状としては比較的軽度であり,化粧品販売会社に美容部員として採用され配置や労働条件等において特段の不利益を被ったことが窺われないが,後遺障害が生涯にわたって残存することが見込まれ,就職活動で具体的に不利益な影響を生じた可能性も小さいとはいえず,それが生涯における労働による利得に波及する可能性も否定できないことから,46年間12%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(固定時19歳)の顔面醜状痕(7級),利き手である右手の神経症状(12級)の併合6級につき,現実の勤務への具体的な支障,就労の不安定性,今後の転職等で受ける可能性のある不利益等を考慮し,46年間25%の労働能力喪失を認めた。
・ 一家の支柱である介護士(固定時44歳)の外貌醜状(7級),神経症状(14級)の併合7級につき,事故後の減収はないが,前額部の醜状痕については現在でも終始人目を気にし,労働効率などに悪影響が及んでおり,就労に対する後遺障害の悪影響を最小限に抑えるためにヒビ相当程度の努力を重ねていること,今後転職する場合には後遺障害による不利益の発生が考えられることなどから,67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。
・ 介護職員(固定時54歳)の前額部左の瘢痕と知覚違和感(7級)につき,障害者やその家族等と円満な関係を構築し,円滑な意思疎通を実現する上で支障が生じうるというべきではあるが,減収がなく,化粧や髪型等によってある程度目立たなくすることができることに照らし,67歳まで10%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時23歳)の顔面部の線状痕(7級),歯牙障害(12級)の併合6級につき,コミュニケーション能力に相当な支障が生じていることや被害者の性別及び年齢を考慮し,44年間25%の労働能力喪失を認めた。
・ 法律事務所勤務(固定時30歳)の左下肢瘢痕(知覚異常含む)(7級相当),左足関節機能障害(12級)の併合6級につき,デグロービング損傷による左下肢の醜状障害は,単なる醜状障害にとどまらず,筋肉・血管・脂肪・神経などの軟部組織が大幅に失われたことにより,筋力低下などの左下肢の機能を障害し,頑固な神経症状を残しており,左下肢の機能障害は,一般的な事務職である弁護士補助の仕事にも支障が生じるほどであって,左足関節の機能障害(12級)を超える支障が生じており,スカートが制服となっている下肢を露出する仕事に就く際に制約がないとはいえないとして,37年間25%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 醜状は時間の経過とともに薄れていくため,醜状障害の後遺症申請は,事故後6ヶ月で早急に行うことが重要になります。また,医療技術の進歩によって,傷跡を目立たなくすることは可能になってきており,醜状障害を理由とする後遺症が認定基準は厳しくなりつつあります。(1)事故後6ヶ月で早急に後遺症申請をするのか,または(2)保険会社の治療費対応で形成手術を行って後遺症申請は行わないという選択をするのか,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,被害者の傷跡を確認し,もっとも最適な方法をアドバイスしていきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(37)

2022-09-26

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(37)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(8)その他の精神系症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
   ・ 主婦(固定時40歳)の頸部痛など(自賠責非該当)につき,全脊柱前弯変形,両下肢筋力低下と知覚鈍麻が損するとして7級と認め,27年間56%の労働能力喪失を認めた。
・ 被害者(固定時31歳)の両上下肢運動障害,立位・歩行不能(自賠責非該当)につき,頚髄損傷ではないが事故以前には症状が全くなかったことから事故に起因し後遺障害等級5級2号に該当するとし,38年間79%の労働能力喪失を認めた。
・ 引越及びリフォーム業下請会社勤務(固定時33歳)の継続的な嘔吐症(自賠責非該当)につき,毎食後嘔吐し,130キログラムあった体重が事故後2ヶ月で45キログラムに激減したこと,名古屋市障害等級3級を受けていることなどから,その程度は9級10号と同等とし,7年間35%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 主婦(固定時54歳)が,事故により頭部を打撲し,事故の翌日以降左上肢痛・挙上不可・左上肢運動不全・知覚障害を訴え,約1年後には左上下肢麻痺・左上下肢痛の症状が残存し,室内は杖歩行で用便も可能だが外出には車椅子を使用して近親者が付き添い,入浴には介護が必要であるものの常時介護が必要とはいえない状態(自賠責14級10号)につき,頚髄損傷等の他覚所見はないが,10年間100%の労働能力喪失を認めた上で,転換性障害の発症ないし心因性の素因を考慮して減額した。
・ 主婦(固定時63歳,自賠責は右骨盤,臀部,大腿部の痛み等12級,腰部の激痛,背部にかけて広がるこわばり等14級の併合12級)の線維筋痛症の症状につき,一定の姿勢を保つことには相当に困難が伴う等から,7級4号に該当するとして,12年間56%の労働能力喪失を認めた。
・ 土木作業員(固定時59歳)の神経系統の機能又は精神障害(7級相当),胸腹部臓器の障害(7級5号),脊柱運動障害(8級2号),視力障害(8級1号),聴力障害(9級9号),外貌醜状(12級14号)につき,障害が多方面にわたり,外貌醜状を除くいずれもが労働能力に深刻な影響を与えること等から通常の併合基準を適用すべきでないとして,4級相当としたうえで,11年間92%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時24歳)のジストニアによる顔面症状,四肢麻痺等,交通外傷後後遺症(うつ病,不眠症)及び不安神経症(自賠責は歯科症状14級2号,顔面症及び四肢麻痺等は非該当)につき,ジストニア及び四肢麻痺等は心因性等ではないとして別表第一の1級1号を認め,また,顔面症状や四肢麻痺等の症状により,事故後長期にわたって精神的に高い負荷がかかる状況に置かれていたことから,事故と交通外傷後遺症及び不安神経症の因果関係を認めた。
・ 開業医(固定時53歳)につき,外傷性の耳鳴りを自賠責と同様に12級相当と認定したが,左上肢の麻痺・脱力感・両手のシビレ等の上肢症状(自賠責14級9号),頸椎捻挫(自賠責14級9号)には脊柱管の狭小化等が確認でき他覚的裏付けがあるとして12級相当と認定し,上肢症状には既往症の椎間板ヘルニアが寄与しているとして,平均余命までの2分の1である14年間18%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:高齢者交通安全週間の実施

2022-09-16

愛知県では,交通事故死者数の半数以上を占める高齢者の交通事故を防止するため,高齢者交通安全週間を,令和4年9月14日から20日まで実施しています。
高齢者交通安全週間では,「高齢者交通事故0(ゼロ)への三箇条」として,高齢運転者及び歩行者に対して,以下の3点を呼び掛けています。
1.「安全運転サポート車(サポカーS)の活用」
2.「運転免許証の自主返納制度の活用」
3.「反射材の着用の促進」
www.pref.aichi.jp/soshiki/kenmin-anzen/20200916kourei.html

 高齢者が交通死亡事故の被害に遭われた場合,損害賠償を請求する際に問題となるのが,死亡逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)です。
 高齢者といっても,仕事をされている方,家事従事者の方,年金を受給して生活されている方など様々な方がいますので,何を基準に死亡逸失利益を算定するかが争点になることが多くあります。
 死亡逸失利益は,一般的に,死亡事故の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが非常に重要となります。
 なお,定年退職直後や生活保護を受給していた等の理由で事故当時は無職であっても,再就職の意欲と蓋然性があれば,死亡逸失利益を請求することができる場合もあります。

 また,交通事故で一命を取りとめたものの,一定期間,入院・通院した後に亡くなられる場合もあります。このように,入院・通院後に亡くなられた場合,治療費,葬儀費用,死亡逸失利益,慰謝料のほかに,入院・通院に伴う慰謝料等も当然に請求することができます。
 なお,治療の結果,後遺障害が残り,その後事故とは別の理由で亡くなったとしても,死亡の事実は考慮せずに,事故後生存している場合と同様に後遺障害逸失利益は請求できます。

 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,高齢者の交通事故の解決実績が豊富にありますので,高齢者の交通事故でお困りの方は,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(36)

2022-09-09

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(36)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(7)局部の神経症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例(4)
   ・ パイロット(固定時32歳)の外傷性頸性頭痛等(14級9号)につき,多数の人命を預かる航空機のパイロットという職務であること,残存した時痛の後遺障害はフライト時の気圧の変化の影響を受けやすく集中力や緊張感を要する職務への影響が小さくないこと,症状固定後も星状神経節ブロック療法を継続的に受けながら乗務を継続していたこと等を考慮して,10年間7%の労働能力喪失を認めた。
・ 歯科技工士(固定時58歳)の左母指の痛みや熱さ等の神経症状(14級)につき,事故前所得に固定費(減価償却費及び地代家賃)及び申告外の修理ギター検品作業の副業収入を加えた金額を基礎とし,左母指の可動域が4分の3以下に制限されていること,指を用いる歯科技工士であることを考慮して9年間10%の労働能力喪失を認めた。
・ 調理師(固定時46歳)の頭部瘢痕(12級),右母指の機能障害(非該当),包丁をしっかり握ることができない等の症状(14級)の併合12級につき,被害者は接客も担当しており,外貌醜状による業務における労働能力への影響は否定できないこと,調理は被害者の主要な業務の一つであり,母指IP関節可動域制限等により重いものを持ったり肉を切り分けたりする作業について相当な制限を受けているものと認められることから,局部の神経症状により喪失する労働能力は14級の通常の喪失率である5%にとどまらないとして,67歳まで12%の労働能力喪失を認めた。
・ 鉄筋工(固定時48歳)の第7頸椎棘突起骨折後の頸部痛等(14級)につき,頚椎棘突起の偽関節の画像所見を他覚所見と認めて12級13号と評価した上,日常作業において上方を見る必要のある作業継続が困難になった等の具体的な支障が生じていること,上記偽関節は骨癒合の見込みがないこと等を勘案し,19年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(事故時17歳)の右手指の症状(非該当)につき,右上腕三頭筋,右回内筋等の針筋電図検査で異常所見がみられ,C6・7神経根障害が疑われるとの所見が示されたこと等から,医学的に証明できるとして12級13号を認定し,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
・ ビル管理会社正社員(固定時38歳)の上腕骨近位端骨折後の右肩の疼痛と可動域制限につき,自賠責14級9号と認定された右肩の疼痛のほか非該当とされた右肩関節の可動域制限は原告の就労に影響があるとして,自賠責13級相当と評価して29年間9%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 むち打ちや末梢神経障害では,後遺症が認定されないと思われている方も少なくないと思いますが,まったく違います。むち打ちや末梢神経障害であっても,12級または14級に認定されることはあります。特に,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,むち打ち案件で後遺症の申請(被害者請求)をした場合,大半が14級以上を獲得しています。
 適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(35)

2022-09-02

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(35)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(7)局部の神経症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例(3)
   ・ 消火設備の取付けや配管の設置を業務とする会社の代表取締役(固定時42歳)の頸部運動痛,背部痛,左中指から小指の冷感・しびれ感,腰痛,両足趾の冷感・しびれ感(併合14級)につき,仕事の特殊性から,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 土木建築業作業員(固定時48歳)の右頸部痛,両手の痺れ等(14級9号)につき,固定時の自覚症状は受傷直後から一貫しているが,椎間板ヘルニアの画像所見と神経学的所見及び症状との一致がないことから明らかな他覚的所見ありとするには躊躇があるとしつつも,残存する症状の内容・頑固さ等も考慮し,10年間8%の労働能力喪失を認めた。
・ 兼業主婦(固定時44歳)の頸部捻挫後の頸部痛(14級9号)及び腰部捻挫後の腰痛(14級9号,併合14級)につき,頭痛や吐き気を伴う痛みが持続していることなどから,10年間9%の労働能力喪失を認めた。
・ 胸髄損傷により体幹及び両下肢の機能全廃の既存障害(別表第1の1級1号)を有する印刷会社事務職の頸部痛等(自賠責非該当)につき,事故によって身体に一定程度の衝撃を受けたこと,頸部痛の訴えと整合する客観的な検査所見が存在すること,事故前は頸部痛などが存在しなかったこと等から,14級9号に該当するとし,5年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦(固定時65歳,自賠責14級9号)の左臀部(大転子部)の疼痛につき,インプラント(髄内釘)が残置されていること,年齢に照らし負担が大きいため除去手術が行われなかったこと,医師が一貫してその突出部位の刺激が原因である旨診断していること等から,12級13号に該当するとして,賃金センサス女性学歴計65~69歳平均を基礎に,7年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 登録派遣社員(事故時23歳)の梨状筋症候群に由来する右大腿部痺れ,疼痛,右臀部の疼痛等の神経症状(自賠責非該当)につき,神経症状を裏付ける神経学的所見は認められないが,梨状筋症候群の手術を担当した医師が神経絞扼の期間が生下時からと長いために手術後も疼痛が残存することがあり得るとしていることから,14級相当の後遺障害を認め,7年間5%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 むち打ちや末梢神経障害では,後遺症が認定されないと思われている方も少なくないと思いますが,まったく違います。むち打ちや末梢神経障害であっても,12級または14級に認定されることはあります。特に,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,むち打ち案件で後遺症の申請(被害者請求)をした場合,大半が14級以上を獲得しています。
 適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(34)

2022-08-26

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(34)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(7)局部の神経症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例(2)
   ・ 看護師(固定時27歳)の半月板損傷後の左膝関節痛等(12級12号)につき,看護師一般の就労状況や事故後の就労形態(週1,2回程度,訪問入浴やデイサービス等に従事)に照らし労働能力制限の割合が比較的大きく,後遺障害の内容や治療経過(6回手術)からは将来症状の大きな改善を期することも能わないとして,賃金センサス女性看護師全年齢平均を基礎に,10年間17%,その後30年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 産婦人科医師(固定時34歳,自賠責は頚部疼痛,両上肢痺れ14級10級)につき,自賠責は頸椎の可動域制限を評価していないとし,職業上,手術に従事することは避けられず,頸椎の可動域制限が手術の遂行に影響を及ぼすと考えられることから,33年間15%の労働能力喪失を認めた。
・ 看護師(固定時28歳)の胸郭出口症候群(自賠責非該当)につき12級12号に該当すると認め,看護師の収入においては力仕事や夜勤が高収入の一要因となっているところ,胸郭出口症候群の牽引症状により力仕事や夜勤に一定の支障を受けているとして,平均的な看護師の収入を基礎に,39年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ ラーメン店勤務(固定時35歳,自賠責11級)につき,脳脊髄液減少症を認めず局部に頑固な神経症状(12級)とし,高次脳機能障害を認めず非器質性精神障害(14級)とし,第12胸椎圧迫骨折(11級)等の後遺障害と併せて併合10級と認定して,32年間27%の労働能力喪失を認めた。
・ アルバイト(固定時25歳)の左肩関節脱臼,頸部挫傷による左手母指外傷後痙性内転位(限局性ディストニア)及び左肩・左上腕の痛み・だるさ(自賠責非該当)につき,左手母指痙性内転位は精神的要因によるものであるが本件事故との因果関係が認められるとして,41年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 給与所得者(固定時39歳)の頸部痛及び腰部の神経症状(自賠責非該当)につき,今回事故時には5年前の前回事故による頸部痛及び腰部の神経症状(14級)が治癒していたと認定し,14級相当の神経症状を認めた既存障害による減額等を行わず,5年間5%に労働能力喪失を認めた。
・ 調理師(固定時33歳)の頭痛,利き腕である右手の握力低下等の症状(14級相当)につき,調理師として包丁を握るなどの面で実際に支障が生じていること,握力低下は事故後5年以上が経過した現在も解消されていないことなどから,15年間8%の労働能力喪失を認めた。
・ エステティックサロン経営者(固定時36歳)の頚部神経症状,肩関節脱臼後の疼痛・あっ痛,左膝の痛み・屈伸不安定等,左肘の詰まったような痛み(併合14級)につき,膝をついた施術がつらく顧客を減らしたこと,施術中肘の痛みによるふるえや頚部の痛みが増強すること,神経症状がいわゆるむち打ち症によるものではないことなどから,31年間10%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 むち打ちや末梢神経障害では,後遺症が認定されないと思われている方も少なくないと思いますが,まったく違います。むち打ちや末梢神経障害であっても,12級または14級に認定されることはあります。特に,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,むち打ち案件で後遺症の申請(被害者請求)をした場合,大半が14級以上を獲得しています。
 適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(33)

2022-08-19

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(33)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(7)局部の神経症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
   ・ 下請縫製業者(固定時64歳)の頸部痛及び腰痛(12級10級)につき,振動の強い業務用ミシンの使用不可能を理由として,7年間50%の労働能力喪失を認めた。
   ・ ピアノ講師(固定時33歳)の頸椎捻挫,頸椎不安定症,右上肢のしびれ(14級10号)につき,事故と尺骨神経麻痺との因果関係を認め,後遺障害の部位,程度,等級,職業,性別,年齢等を勘案して,34年間10%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 宮大工(固定時54歳,自賠責は左膝疼痛14級10号)につき,両手のしびれ,頭痛及び腰痛等は他覚的所見が明らかでないものの,左下肢に神経症状が残存し歩行が困難であるから,全体として9級10号に該当するとして,13年間35%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 会社員(固定時33歳,自賠責は座骨神経痛等14級10号)につき,腰部,臀部,大腿部付近の神経症状を12級12号,頚部痛を14級10号と認定した上で,これらは身体の離れた異なる部位の神経症状が併存して競合しており,12級12号の後遺障害が一つだけ残存する事例とは異なり稼働能力が著しく制約される可能性が高いとして,12年間20%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 鍼灸大学生(固定時25歳,自賠責は右前腕及び手関節の疼痛14級10号)につき,鍼灸師には筋力低下や可動域の制限が影響するとし,疼痛及び可動域制限を12級相当として,42年間14%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 看護師(固定時38歳)の右臀部から下肢にかけての冷感・疼痛等座骨神経症状(12級)につき,事故後5年間(症状固定後も含む)にわたり400回超の神経ブロックによる治療を行っていること等から,28年間20%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 眼科医(固定時33歳)の頚部痛・後頭部痛・眼精疲労・左手の振戦(14級10号)につき,左手の振戦のため手術ができなくなり研究職に転向せざるをえず,従前のアルバイト収入が得られなくなったことから,10年間12%の労働能力喪失を認めた。
・ 画家(固定時61歳)の右手指の神経症状(12級12号),右肩関節痛等(14級)の併合12級につき,画家としての能力を喪失していると認められ,年齢,経歴,後遺障害の程度を考えるt被害者が就くことができる職業もかなり限られるとして,9年間50%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 むち打ちや末梢神経障害では,後遺症が認定されないと思われている方も少なくないと思いますが,まったく違います。むち打ちや末梢神経障害であっても,12級または14級に認定されることはあります。特に,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,むち打ち案件で後遺症の申請(被害者請求)をした場合,大半が14級以上を獲得しています。
 適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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