【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(46)

2022-12-09

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(46)
12.上肢・下肢・及び手指・足指の障害
(2)自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例(2)
  ・ 配管設備業(固定時62歳)の左膝関節機能障害,左下肢の神経症状等(10級)につき,左膝の障害が著しいため歩行能力が著しく制限され,階段の昇降はもちろんのこと,杖を使用しても短距離かつ短時間の歩行しか行えないことを考慮し,10年間40%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 派遣ミキサー車運転手兼鉄道保全軌道工(固定時37歳)の右手月状骨骨折等による右手関節痛を含む右手関節の可動域制限(12級6号)につき,症状固定時点で健側の52%とほぼ2分の1に制限されていること,当初から障害の憎悪が見込まれており実際に1年後には健側の32%に憎悪していることからすると10級10号に相当するとして,67歳まで27%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 高等学校事務職員(固定時29歳,右鎖骨変形障害12級,右肩関節可動域制限10級,右頸部外貌醜状12級,併合9級)につき,右上肢の障害による労働能力喪失の程度は8級相当に至らないとしても,それに相当近いものがあるとし,右鎖骨変形障害は12級5号に該当することも併せ,67歳まで45%の労働能力喪失を認めた。
  ・ バス運転手(固定時48歳)の右母趾基部底側の痛み(14級)につき,同部の痛み,右膝関節外側の痛みのほか,右母趾の屈腱筋損傷等によるMP関節及びIP関節の屈曲が困難であるなどの関節可動域制限が残存したとし,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
  ・ 歯科勤務医(固定時40歳)の左肩関節機能障害(10級),脊柱変形(11級)の併合9級につき,左肩の可動域制限及び左肩痛が原因となって,左手指による患歯の固定が行えず,今後歯科医として稼働する可能性を閉ざされたというべきであるとして,67歳まで70%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時27歳)につき,左肘関節機能障害(12級),右手指関節機能障害(11級),左足関節機能障害(12級),右足指関節機能障害(11級)等に加え,事故後8年後に発症したPTSD(14級)を考慮し,併合9級としつつ,右下肢のみでも9級相当と評価されるのに四肢に後遺障害がある本件を同列に扱うことはできないとして,67歳まで45%の労働能力喪失を認めた。
・ 歯科開業医(固定時56歳)の右肩打撲後の疼痛(14級)につき,外形的に明らかな器質的損傷は認められない場合であっても関節包が侵襲を受け痛み等の理由で関節を動かせないでいると組織侵襲部位に癒着形成を招き関節包の繊維化が生じることで関節拘縮が生じ得るとしたうえ,10級10号に該当する可動域制限が残存したと認定し,13年間27%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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