【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(43)

2022-11-13

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(43)
11.脊柱及びその他の体幹骨の障害
脊柱及びその他の体幹骨の障害は,①脊柱の変形障害,②脊柱の運動障害,③その他の体幹骨(鎖骨,胸骨,ろく骨,肩こう骨,骨盤骨)の変形障害に分けられます。
①脊柱の変形障害は,その変形の程度により6級,8級,11級に認定されます。②脊柱の運動障害は,脊柱圧迫骨折等に基づく頚部および胸腰部の硬直や可動域制限,または荷重障害の程度により6級,8級に認定されます。③その他の体幹骨の変形障害は12級が認定されます。裸体になった時に変形や欠損が明らかにわかる程度のものを指すため,レントゲン撮影などによってはじめて確認できる程度のものは該当しません。

(1)認定例
 ・ 特殊運搬船の運航管理者(固定時56歳)の脊柱変形(11級),左脛骨近位端関節内骨折後の左膝痛(12級)の併合10級につき,船上等に出向く機会が多く,船長として乗船勤務の予定があるところ,症状により乗船勤務ができなくなる可能性や長時間の乗船勤務が必要な高い収入の得られる船の船長になれないおそれがある等から,事故前の年収を基礎に,13年間27%の労働能力喪失を認めた。
 ・ 特殊事務所職員(固定時48歳)の第一腰椎圧迫骨折後の脊柱変形(11級)につき,日常生活においては腰に過度の負担がかからないように注意する必要があり,腰に負担がかかるスポーツ等も控えなければならない等として,事故前年の年収を基礎に19年間20%の労働能力喪失を認めた。
 ・ トラック運転手(固定時37歳)の右鎖骨変形(12級)につき,同障害には重い物を持ち上げたり下ろしたりするときの痛み等の症状も含まれており,業務に影響が生じていること等から,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
 ・ 会社員たる現場監督(固定時54歳)の左肩関節機能障害等(併合9級)につき,左鎖骨の変形障害が原因とみられる疼痛が続いていること,裸体になったときに変形が明らかにわかる程度のものであること等に照らすと変形障害についても実際に労働能力を喪失させていると評価できるとして,14年間35%の労働能力喪失を認めた。
 ・家事従事者(固定時52歳)の軸椎骨折後の脊柱変形(11級),左足部痛,歩行時痛(14級)の併合11級につき,左足部痛,歩行時痛等は12級13号に該当するとして,併合10級とし,67歳まで27%の労働能力喪失を認めた。
 ・ 清掃業従事者(固定時45歳)の第五腰椎変形骨折後の脊柱変形(11級)につき,変形の程度が大きいこと,従事する清掃業で腰部への負担が重いことから,22年間20%の労働能力喪失を認めた。
(2)自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
 ・ 運送会社会社員(固定時59歳)の咀嚼機能障害(非該当),脊柱の運動障害(11級),胸腰椎部の運動障害(非該当),口が開きにくい,物が咬みにくいとの症状(14級)の併合11級につき,咀嚼機能障害等は労働能力に影響しないが,脊柱の運動障害等は労働能力に影響すること,腰背部痛のために,重いものを持ったり長時間の座位,歩行等が困難等の支障を生じていること,後遺障害のため事故後は稼働していないことから,11年間45%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 変形障害のうち,特に鎖骨の変形障害は労働能力に影響しないと保険会社から主張され,逸失利益が否定されることもあります。弁護士法人しまかぜ法律事務所では,変形障害から派生する疼痛障害と併せて労働能力への影響を主張し,逸失利益が認定されるケースが多くあります。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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