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【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(14)

2022-02-18

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(14)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ② 公務員以外の給与所得者
イ 上肢・下肢の機能障害等
・ 洋品販売店勤務(固定時23歳)の左大腿切断4級相当につき,店長から店員に降格していること,接客業で立ちづめの仕事であることから考えると,給料の維持・増加は本人の不断の努力及び経営者の温情によるところが大であるなどとして,44年間92%の労働能力喪失を認めた。
・ 整骨院勤務(固定時33歳)の左肩関節機能障害等併合9級につき,就労の上で相当の不便を被っており,努力によって減収を免れているとして,34年間27%の労働能力喪失を認めた。
・ バイク便勤務(35歳)の左肘関節障害,神経障害併合11級につき,肉体労働は困難となり,出版社に正社員として就職し事故前より増収する見込みではあるが,これは幸運にも就職先が見つかったことや本人の努力の結果であるとして,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時40歳)の右足関節可動域制限,右足母趾可動域制限,骨盤骨変形,右下肢の外貌醜状併合10級につき,事故後の減収はないが,朝早く出勤するなど特段の努力によるものであり,入院のため昇格試験を受験できず実質的には減収ともいえるとして,27年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 信用金庫営業係長(固定時40歳)の右下腿部疼痛等,右足関節可動域制限併合9級につき,所得が減少していないのは特別の努力によるもので,役職が内勤の主事に異動することにより将来の昇給・昇進等不利益を受けるおそれがあるとして,当初10年間は35%,以降67歳までは27%の労働能力喪失を認めた。
・ 上場企業会社員(固定時37歳)の右足関節機能障害,右膝関節機能障害,右足趾機能障害,右下肢短縮,骨盤骨変形等併合5級につき,事故後収入は増加しているが,右下肢の疼痛等に耐えて長時間の残業をしたり自宅で毎日2時間以上掛けて体調管理する等の格段の努力や周囲の配慮が大きく寄与していること,システム運用管理作業において,現場でしゃがんだり重い物を運べないため,今後の昇進・転職の際に不利益を被る可能性があることから,30年間52%の労働能力喪失を認めた。
・ 銀行員(固定時35歳)の右足関節の運動障害12級につき,減収はないが,それは本人の努力によること,今後人事異動先が限られることも否定できないこと,症状悪化による関節固定術施行の可能性もあり,その場合,歩行が今以上に困難になり業務範囲が更に限定されるために,銀行での昇進,昇給等に不利益を被る可能性があるとして,32年間8%の労働能力喪失を認めた。
・ 准看護師(固定時45歳)の左足関節機能障害,左足1~5趾機能障害併合10級につき,事故後救急病棟の脳神経外科からクリニックの老人介護の勤務になり,収入は事故前から増加しているが,自己の努力と周囲の援助で仕事に従事しており,定年の60歳まで現在の地位と収入が確保される確実な保証はないうえ,定年後の再雇用等の可能性や後遺障害のある者の再就職には支障があること等から,事故前の年収を基礎に定年までは14%,以降67歳までは27%の労働能力喪失を認めた。
・ 宅配業務従事者(固定時38歳)の下肢偽関節,下肢短縮8級につき,妻のマッサージを受けつつ業務に従事し,荷物の運搬を伴わない物販で成績を伸ばす努力を継続するとともに,勤務先が少ない労力で高い歩合給が得られる特定の取引先を担当させる特別の配慮をすることでようやく事故前の収入の水準が維持されており,かかる特別の努力や配慮が就労可能期間を通じて継続するとは考え難いとして,事故前年の収入を基礎に,29年間45%の労働能力喪失を認めた。
・ 図書館非常勤職員(固定時38歳)の右股関節障害等併合11級につき,事故前の仕事に復帰して変わらない収入を得ていることは本人の大きな努力があると推認でき,仕事に復帰した4年後には転職を余儀なくされており,後遺障害の内容から就業できる仕事が限定される等かなりの困難が予想されることから,事故前年の収入を基礎に,29年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 日雇労働者(とび職・固定時32歳)の左手関節機能障害等併合11級につき,事故後に会社従業員として雇用された以降は事故前収入を上回っているが,本人の努力や周囲の配慮による部分も大きく,事故時30歳は若年とは言い難いが昇級や転職等による収入増加の可能性がある年齢で,事故がなければ事故後の現実収入以上を得る可能性もなかったとはいえないとして,事故直近の実収入を基礎に,35年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時21歳)の左手関節の可動域制限等10級につき,具体的に減収を生じていないが,就労に種々の支障を生じており,残業などで収入を維持しているとしたうえで,賃金センサス男性高卒全年齢平均を基礎に,症状固定後20年間は25%,その後は15%の労働能力喪失を認めた。
・ 鉄道会社運転士(固定時45歳)の右手関節機能障害,右足関節機能障害,右母趾の関節機能障害,左膝痛併合10級につき,電車のハンドルが握り込み難い等の制約を受けており,減収がないのは本人の努力により事故後も電車の運転の技能を活用できていることによるとして,事故前年の年収を基礎とし,定年見込み時期までは18%,以降67歳までは27%の労働能力喪失を認めた。
・ 現金輸送の警備業務従事の会社員(固定時22歳)の左膝関節動揺,左眼上瘢痕併合11級につき,事故前後で減収はないが,左膝関節動揺の後遺障害が日常的に重い荷物を運ぶ等,膝への負担が想定される業務に相当の不便を生じさせていることは容易に推察されるにもかかわらず,被害者が業務を継続しているのは,格別の努力によるものであるとして,賃金センサス男性高卒全年齢平均を基礎に,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(13)

2022-02-14

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(13)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ② 公務員以外の給与所得者
ア 精神・神経症状
・ 歯科医院勤務予定者(固定時23歳)の第5胸随以下完全麻痺,両下肢自動運動不能,泌尿器官機能麻痺等1級につき,減収がないのは被害者の特別な努力によるためなどとして,44年間100%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時28歳)の脳挫傷後の右上肢不全麻痺等10級につき,利き腕の右上肢不全麻痺は事務職という仕事の内容からすると直接仕事の効率に影響するはずのものであり,努力によって減収を免れているに過ぎないとして,39年間27%の労働能力喪失を認めた。
・ 新聞記者(固定時27歳)の脊髄損傷による完全対麻痺等1級3号につき,復職し内勤に配属されているが,勤務継続は周囲の恩恵的配慮と本人の多大な努力によるとして,事故前収入,勤務先の給与制度や勤務先作成の年収資産等から基礎収入を算定し,67歳まで90%の労働能力喪失を認めた。
・ 新聞社即売部長(固定時55歳)の左鎖骨・尺骨骨折,左下腿骨・左脛骨骨折後の左前腕の疼痛12級につき,1時間程座っていると左足の関節部分が動きにくくなるため会議等で不便や困難を感じ,左手で鞄を持てない等しており,事故後の収入に変動がほとんどないのは被害者の努力によるとして,事故前年収を基礎に,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 消化器外科医(固定時38歳)の腰痛・左臀部痛・左大腿後部痛につき,事故後1年5ヶ月間は減収がなく,また,現在の収入は事故時よりも若干増えているが,後遺障害残存により減収に伴う転職をし,経験を積んでいた消化器外科から形成外科に転向したことによる経済的不利益も生じていること等から,10年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時29歳)の第4胸随以下完全麻痺,知覚喪失,高次脳機能障害別表第1の1級1号につき,事故前と遜色のない給与所得を得られているのは,被害者の多大な努力や稼働先の理解・配慮を得られていることによるとして,事故当時同世代の大卒男子の平均年収に劣らない収入を得ていたことから,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎に,38年間85%の労働能力喪失を認めた。
・ 港湾通信業務従事者(固定時27歳)の神経・精神障害,右下肢の欠損,右股関節の機能障害等併合2級につき,退院後復職して事故前とほとんど変わらない額の給与収入を得ているが,勤務先の好意で勤務を継続しているとして,当初の5年を除いて,35年間100%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(事故時41歳)の頚部痛,上肢の疼痛等,腰部痛併合12級につき,減収はないが,頚部の可動域制限により自動車運転ができなくなったり電卓やコンピュータの長時間使用が困難となるなど仕事に対する影響もあるとして,事故前年の年収を基礎に,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 高所作業の業務を伴う会社員(固定時25歳)の左肩甲骨骨折後の左肩痛14級につき,固定後の職種の変更,減収はないが,疼痛や軽度の可動域制限により作業困難,作業能率の低下が認められるほか,症状固定から4年経過しても疼痛にさほどの改善は見られないことなどから,10年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 製造業従事(固定時27歳)の高次脳機能障害9級につき,事故後に減収が生じていないのは,勤務先の配慮や本人の努力によるものであり,将来の昇進や再就職において不利益な扱いを受ける可能性を否定できないとして,賃金センサス男性学歴計平均を基礎に,40年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ 工場の製造課長(固定時54歳)の右肩関節の機能障害,右手のしびれ症状併合10級につき,部下と現場で機械操作をする際や通勤・日常生活等に支障が生じており,減収がないのは休日出勤を増やす等本人の努力によるものであり,将来的には昇給等への影響も考えられることから,65歳定年までは事故前年収入を,定年後3年間は賃金センサス男性学歴計65~69歳平均を基礎に,14年間27%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(12)

2022-02-07

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(12)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
(1)事故時に就労していた者
  ① 公務員
イ 上肢・下肢の機能障害等
・ 公務員(固定時45歳・清掃作業員)の右大腿部切断6級につき,事故後減収はないが,痛みや通院のために勤務時間も短く欠勤も多いため,今後分限免職の処分を受けるおそれもあるとして,22年間,60%の労働能力喪失を認めた。
・ 郵便局医務室勤務の放射線技師(固定時52歳)の右膝関節機能障害12級につき,減収がないのは被害者の努力によるもので,今後病院勤務に転出できないことによる昇給上の不利益を被る蓋然性もあるとして,15年間10%の労働能力喪失を認めた。
・ 公務員(固定時38歳・バス運転手)の左手関節機能障害,顔面部の外貌醜状等併合11級につき,長時間同じ姿勢で運転を継続するというバス運転手の仕事に照らせば,将来も同じように仕事をして昇級,昇進ができるかは分からないこと,減収がないのは本人の特別な努力で仕事を維持していると認められること,外貌醜状が全く影響がないとは言い切れないことから,29年間17%の労働能力喪失を認めた。
・ 地方公務員(固定時49歳)の右大腿骨切断等併合3級につき,事故後の減収が6年間で1割程度に留まるのは地方公務員の身分の安定性によるところが大きいこと,義足及び車椅子の使用により日常生活は自立し,仕事内容は室内での事務作業が中心であることなどから,79%労働能力喪失とし,1級建築士の資格を有していることなどから60歳定年後も同程度の収入が得られる蓋然性があるとして,67歳まで事故前年収を基礎とした。
・ 公務員(固定時54歳・市バスの主にデスクワークを担当)の右膝関節機能障害12級につき,痛みの我慢,慎重な歩行や運転操作を行うことを心がけることにより業務の支障が生じないよう努力しているものと認められ,そのことが減収を食い止めている面も否定できないし,後遺障害の内容等に照らせば,定年退職後に高収入の転職を試みた場合,本件後遺障害が不利益をもたらす可能性があるとして,症状固定時収入を基礎として,14年間14%の労働能力喪失を認めた。

ウ その他
・ 養護学校勤務の公務員(固定時51歳)の顔面醜状,視力低下・視野欠損,歯牙障害等につき,事故後増収し,家事労働も不十分ながら行っているのは,本人の努力と職場・家族の協力によるとして,60歳定年までは実収入を基礎に30%,以後再任用で勤務継続できる65歳までは実収入の約7割を基礎に45%,以後67歳までは賃金センサス女性大卒全年齢平均を基礎に45%の労働能力喪失を認めた。
・ 事故後民営化された公団職員(固定時43歳)の左目失明・右眼視力低下併合6級につき,減収がなく処遇や昇給も特に不利益を受けていないが,多大な肉体的・精神的負荷を被りながら管理職としての職務を遂行していること,60歳定年後の再就職の機会や収入に少なからず影響を与える可能性があることから,60歳までは固定時を基礎とし25%,以降67歳までは賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に60%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:愛知県内令和3年年交通事故の特徴

2022-01-28

 警察庁によると,令和3年中の全国の交通事故死者数は2636人となり,これは警察庁が保有する昭和23年からの統計で,5年連続で最少となります。
https://www.npa.go.jp/news/release/2022/20220104001jiko.html
 愛知県内の死者数は117人で,昨年より37人減少し,3年連続でワースト1を回避しました。しかしながら,今なお多くの尊い命が交通事故で失われ,多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいらっしゃいます。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/kisyahappyour312.pdf

 

 死者数を年齢層別にみると,65歳以上の高齢者は74人となり,死者数全体の63.2%を占めています。
 高齢者が交通死亡事故の被害に遭われた場合,損害賠償を請求する際に問題となるのが,死亡逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)です。
 高齢者といっても,仕事をされている方,家事従事者の方,年金を受給して生活されている方など様々な方がいますので,何を基準に死亡逸失利益を算定するかが争点になることが多くあります。
 死亡逸失利益は,一般的に,死亡事故の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが非常に重要となります。

 また,当事者別,事故類型別にみると,歩行者の横断中の事故が多くなっています。
 歩行者の交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故につながりやすくなります。
 愛知県では,歩行者の交通事故を減少させるため,ドライバーに対しては「横断歩道は歩行者優先」を呼び掛け,歩行者に対しては,自らの命を守るため,手を挙げて道路を渡る意思と感謝を示す「ハンド・アップ運動」を実施しています。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kenmin-anzen/handup.html
 
 歩行者は,横断歩道上では絶対的に近い保護を受けるので,信号機の設置されていない横断歩道上の事故については,原則として,歩行者の過失を問題とすることはありません。
 しかしながら,車の直前での横断・渋滞車列の間や駐停車車両の陰からの横断,夜間くらい場所における横断,車が高速で走行しているような幹線道路又は交通頻繁な道路の横断の場合には,歩行者としても左右の安全確認義務違反に基づく若干の過失相殺がされることがあります。死亡事故は賠償額が高額となるため,過失割合がたとえ1割の違いであっても,受け取れる賠償額が大きく変わってきます。
 歩行者は,横断歩道を横断する際は,手を挙げ,車が止まってもすぐには渡らず,止まってくれた車の対向車も止まっているか,後続の車が追い抜いてこないか等,左右の安全を十分に確認し,安全に渡ることが大切です。

 弁護士法人しまかぜ法律事務所は,高齢者や歩行者による交通死亡事故の解決実績が豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(11)

2022-01-24

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(11)
3.減収はないが逸失利益を認めた事例
  逸失利益とは,交通事故に遭わなければ得られるはずであった収入など,交通事故によって失われた利益のことです。
後遺障害認定の時点ですでに減収が発生しているような場合には,将来的にも減収が続くと予想できますが,公務員や事務職等,就労先の配慮や仕事の内容によっては,後遺障害が残っても実際には減収が生じない場合もあります。
このように,後遺障害は残ったものの,実際に減収はされていないような場合は,保険会社においても逸失利益を認めない傾向にあり,争いとなることが多くあります。
裁判所では,後遺障害がなければ得られたであろうと予想される収入から,後遺障害がある状態で実際に得られた収入を差し引いた金額が損害賠償の対象になるとしており,減収が実際に発生していない場合には,そこに「特段の事情」が認められないかぎり逸失利益を請求することはできないとしています。
  では,どのような場合が「特段の事情」となり,減収がなくても逸失利益が認められるのでしょうか。

(1)事故時に就労していた者
  ① 公務員
ア 精神・神経症状
・ 復職し収入減少の少ない地方公務員(固定時29歳),1級3号につき,将来の昇進,昇級,転職等につき不利益を受ける蓋然性があることを理由として,38年間70%の労働能力喪失を認めた。
・ 公立高校教師(固定時42歳),めまい,耳鳴り,嘔気,疼痛等14級につき,収入の減少はないが,入試問題を解く際にめまい等が現れ集中力や思考力が低下することがあるため,従来より時間がかかるなど努力を要しているとして,6年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 復職し収入減少の少ない地方公務員(固定時23歳),高次脳機能障害9級につき,事故前の収入額等から賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とし,勤務先の同僚等による援助,本人の特別の努力,将来的に昇進,昇級等に影響を与える蓋然性が高いことなどから,44年間30%の労働能力喪失を認めた。
・ 国税調査官(固定時31歳),脊柱奇形11級につき,事故後も減収なく普通昇給も果たしているのは努力によるところも多く,将来の昇級や昇格に影響出る可能性は否定できないこと,仕事の能力低下が身体の機能的障害ではなく腰痛の影響による集中力の低下にあること等から,36年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 国家公務員(固定時48歳),左膝疼痛,運動時痛等12級につき,事故後復職し減収はないが,工事監督のための外回りの業務や立ち仕事等に少なからず支障が生じていることから,10%の労働能力喪失を認めた。また,将来民間企業に就職することが予想されることから,定年である60歳ではなく67歳までの19年間を認めた。
・ 市営バスの運転手,左手関節,左母指基節部痛14級につき,減収はないが,バスの運転手として左手でシフトレバー操作やハンドル操作を円滑に行うこと,釣銭機に故障が生じた際に左手で釣銭機を円滑に操作すること等に苦労し,努力や工夫によって,これらを克服していることが認められるとし,事故前年年収を基礎に10年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 公立高校英語教師(固定時46歳),脾臓摘出,左下腿部痛,開放骨折部知覚過敏等,左下肢醜状痕につき,仕事に支障を生じており,人事評価ひいては昇級や昇格に影響することが容易に予測され,事故前と比較して減収がないとしても逸失利益を否定できないとして,21年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 地方公務員(固定時43歳)の高次脳機能障害,左片麻痺につき,復職し職場の上司及び同僚の配慮を受けて重大な支障は生じていないこと,基本給は減少していないが残業に伴う収入を得ていないこと,現在の勤務先を退職後の再就職の可能性は低いことから,事故前年年収を基礎に67歳まで60%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,認められるか認められないかで賠償額が大きく異なります。
 減収がない場合の逸失利益については,職種や仕事内容等によって請求できるか変わってきますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(10)

2022-01-14

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(10)
2.基礎収入
(4)失業者
労働能力,労働意欲があり,就労の蓋然性があれば,逸失利益が認められます。
再就職によって得られるであろう収入を基礎とすべきで,その場合,特段の事情のない限り失業前の収入を参考にします。
ただし,失業以前の収入が平均賃金以下の場合には,平均賃金が得られる蓋然性があれば,男女別の賃金センサスを基礎収入として逸失利益を請求することができます。

・ 生活保護受給者につき,事故当時兄弟と相談し商売を始めることを考えており,就労意思と能力を有していたとして,事故時の年齢の平均給与額を基礎とした。
・ 固定時69歳,無職者の右頚部痛,肩の痛み,右前腕尺側のしびれ12級につき,技術を有し具体的な就職予定も存したなど,就労の蓋然性は通常の同年齢の者より高いとして,男性労働者68才の平均を基礎とした。
・ 固定時29歳,フリーターの左下肢の鈍痛14級につき,事故間近の就労実態を認め難いことから休業損害は否定したが,症状固定後就労の意思があると認められることなどから,賃金センサス男性学歴計25歳から29歳平均の8割を基礎とした。
・ 勤務先の倒産による離職後,再就職内定中の被害者,頚椎捻挫14級につき,著名な私大経済学部を卒業し,就職後留学してMBAの資格を取得していること,倒産前の勤務先では大卒平均の1.18倍の給与を得ていたことからすれば,事故当時の就職内定先から年俸1500万円の内約があったこともあり得るとして,1500万円を基礎とした。
・ 就職活動中で事故当日に採用通知を受けた正看護師の資格を有する被害者,下肢短縮13級につき,前の職場での主たる職務は施設職員の指導であり,将来も同様の職務を担当することが予想されることから,事故前年の給与所得額を基礎とした。
・ 無職者の高次脳機能障害等3級につき,比較的若年で,介護士になる希望を持ち専門学校への進学が決まっていたこと,事故前に正社員として勤務していた勤務先を退職後も複数のアルバイトに従事し月額10万円程度の収入を得ていたことから,労働能力及び労働意欲があり,専門学校卒業後に就労先を得る蓋然性が高いとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 固定時29歳,女性,無職者の高次脳機能障害2級につき,原審は「昨今の厳しい経済状況及び雇用情勢」などから賃金センサス女性学歴計年齢平均の70%を基礎としたが,事故時家事労働に従事していたこと,将来的には就職を希望していたこと,若年で婚姻の可能性があることなどから,控訴審では賃金センサス女性学歴計全年齢平均の100%を基礎とした。
・ 高校時代からうつ状態が発現し,クリニックに通院しながら高校,大学を卒業して就職するも職を転々とし,事故前後においてはうつ病で入院していた生活保護受給者の右肩関節機能障害10級につき,うつ病は治癒するものであり,実際に軽快した様子が窺えるとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均の7割を基礎とした。
・ 無職者の脾臓摘出,右膝痛等併合11級につき,症状固定までに就労の蓋然性があったとし,事故前の1年2ヶ月前の前職の給与の90%を基礎とした。
・ 勤務先の自動車販売会社をうつ病により休職後,休職期間満了により退職し事故時無職であった被害者の右股関節痛等12級につき,うつ病により就業可能な状況ではなかったが,事故後障害者枠による契約により就労しており,将来にわたり就労する蓋然性が認められるとして,休職前給与額を基礎とした。
・ 車両整備の専門学校卒業後から事故まで1年程度のアルバイトを除き10年以上正社員の経験がない無職者,脊柱の運動障害,非器質性精神障害併合8級相当につき,事故以前の職歴・稼働実績に照らし,賃金センサス男性高卒全年齢平均の7割を基礎とした。
・ 就活中・家業手伝いの右肩関節の機能障害等併合12級につき,就職を予定していた会社の給与は低額であるが,昇給や条件のよい就職先への転職もあり得ること,事故前年の給与額は420万円程度であることから,その7割を基礎とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 失業者の逸失利益については,労働能力,労働意欲,就労の蓋然性があれば請求できますので,適正な基礎収入で逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(9)

2022-01-07

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(9)
2.基礎収入
(3)無職者
  ① 高齢者
就労の蓋然性があれば,賃金センサス学歴計男女別全年齢平均を基礎収入として逸失利益を請求することができます。

・ 固定時85歳,1級3号,2年後に死亡につき,徘徊傾向を伴う老年期性痴呆の既存障害を9級10号とした上で,労働能力喪失率は1級と9級との差65%とし,賃金センサス女性学歴計65歳以上の80%を基礎とした。
・ 長男が経営する医院で日常清掃業務に従事していた被害者,固定時80歳,1級1号につき,身分関係等を考慮し,月額20万円の給与の50%を超える部分は贈与であったとして,基礎収入を決定した。
・ 定年退職後具体的な就労予定のない高卒単身者,固定時66歳,併合7級につき,事故当時,両親の介護をしていたほか,ホームヘルパーとして稼働することを考え介護保険法施行令所定の研修を修了していたこと等に照らし,就労の意欲及び能力はあったとして,賃金センサス男性高卒65歳~69歳平均の7割を基礎とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 無職者のうち高齢者の逸失利益については,就労の蓋然性があれば請求できますので,適正な基礎収入で逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:年末年始の交通事故

2021-12-24

 愛知県警察によると,令和2年12月23日現在,交通事故による死者数は114人となっており,昨年より37人少なくなっています。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/jikonippou/documents/koutsuushibouzikonippou211223.pdf

 愛知県内では,例年,12月が交通死亡事故が最も多くなっていますので,年末に向けて,更なる安全運転が求められます。
 特に歩行者の事故が多くなっており,時間帯は17時台が最も多くなっています。夕暮れ時に外を歩く際は,ドライバーから発見されやすいように,明るい服装をしたり,反射材を活用するなど,事故に遭わないよう心掛けることも大切です。
 また,業務中による死亡事故も年間で最多となります。多忙な時期とはなりますが,お仕事で運転される方も運転にはご注意ください。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/zikobousinopoinnto12gatu.pdf
 では,もし年末年始に交通事故の被害に遭ったら,どうすれば良いでしょうか。

 

 交通死亡事故の場合,お亡くなりになられた方が一家の大黒柱ですと,早急な金銭的サポートが必要になることもあります。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,直接,自賠責に保険金を請求し,まず自賠責の範囲内で保険金を獲得し,最終的に弁護士基準との差額を請求しています。2段階の手続きを行うことで早急な金銭回収が可能となり,ご遺族が生活費等でお困りになる危険を回避します。
 ご家族が死亡事故に遭われお困りの方は,ぜひ,早期にご相談ください。

 

 お怪我をされた場合,年末年始は医療機関が休診していたり,忙しくて医療機関に受診ができない,交通事故から数日後に痛みが生じたなど,気づいたときには事故から2週間以上経過していることもあります。
 この場合,相手方の保険会社やご自身が加入している人身傷害保険に対して,医療機関への受診を希望しても,事故から2週間以上経過している場合は,初診遅れによる因果関係なしと治療費の対応を拒絶されることがほとんどです。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,初診遅れで治療費の対応を拒絶された場合,初診遅れの意見書を添付の上で,直接,自賠責に治療費や慰謝料などを請求し,保険金を回収しています。

 

 また,後遺症が残る事案では,保険会社からの賠償額の提示を待ってから弁護士に相談していては遅い場合があります。
 いつ依頼されても弁護士の費用に変わりはありませんので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,早期にご相談ください。

 

 その他,交通量が増えることで,「あおり運転」の被害に遭う可能性もあります。
 令和2年6月30日に施行された改正道路交通法では,あおり運転を「妨害運転」として新たに規定されました。他の車両等の通行を妨害する目的での車間距離不保持や不必要な急ブレーキなど10類型が妨害運転となり,取り締まりの対象になります。
 もし,「あおり運転」の被害に遭ったら,まずは,サービスエリアやパーキングエリア等,交通事故に遭わない場所に避難して,警察に110番通報をしてください。また,「あおり運転」の加害者から暴行を受けないように,車のドアや窓をロックし,車外に出ないようにしましょう。
 車が損傷したり,事故によってケガをした場合は,損害賠償を請求することができます。
 「あおり運転」の立証には,ドライブレコーダーが有効になりますので,ドライブレコーダーの取付をお勧めします。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,ドライブレコーダーや事故の現場図を分析して,「あおり運転」に伴う正確な事故態様を明らかにし,適正な過失割合で事故の解決をしていますので,お困りの方は,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(8)

2021-12-20

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(8)
2.基礎収入
(3)無職者
  ① 学生・生徒・幼児等
学生・生徒・幼児等の基礎収入は,賃金センサス学歴計男女別全年齢平均となります。
女子年少者の逸失利益については,女性労働者の全年齢平均賃金ではなく,男女を含む全労働者の全年齢平均賃金で算定するのが一般的です。
また,大学生になっていなくても大卒の賃金センサスが基礎収入と認められる場合もあります。ただし,大卒の賃金センサスによる場合は,就労の始期が遅れるため,損害額が学歴計平均額を基礎とするより減ることもあります。

・ 予備校生の1級につき,大学進学を目指して予備校に通学し勉強に励み成績は優秀で,母は音楽教室を経営し大学進学に十分な資力を有していたことを考慮し,賃金センサス女性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 薬学系博士課程在学中の被害者,高次脳機能障害1級につき,学業優秀で製薬会社から内定後入社まで3年間奨学金を受けていたこと等から,入社が確実で将来少なくとも次長になる蓋然性は高いとし,定年の60歳までは同社の年収の近似値である賃金センサス男性大卒全年齢平均の1.4倍,以降67歳までは賃金センサス男性大卒60歳~64歳平均を基礎とした。
・ 大学生の高次脳機能障害併合1級につき,幼い頃から書道に才能を有し,書道関係では名門とされる大学に入学し,大学での課程を通じさらに特別な技能として習得するに至っていた点に照らし,賃金センサス女性大卒全年齢平均に1割加算した額を基礎とした。
・ 高校卒業後米国留学,一時帰国中の被害者,両下肢麻痺等1級につき,賃金センサス男性高卒全年齢平均を基礎とした。
・ 予備校生の両下肢足趾完全麻痺等1級につき,事故当時大学入学を目指して浪人中であったが,塾の大学受験科トップレベル国公立大医進コースに在籍したことが認められる上,昨今の大学進学率等を照らすと,大学に進学できた蓋然性があるとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 警察官採用内定の大学生の高次脳機能障害7級につき,警視庁警察官の平均年収は賃金センサス男性大卒全年齢平均の約1.2倍に相当し,大卒の警視庁警察官の離職率の低さから定年退職まで勤務した可能性は相当程度うかがえるが,定年まで就労した蓋然性が高いとまではいえないとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均の1.1倍を基礎とし,退職金を考慮しない一方,67歳までを認めた。
・ 中学生の左肩関節機能障害10級につき,進学した高校を1年生時に退学したが,その後通信制の高校に入学し卒業見込みであること,若年であり将来の職業も具体的に定まっていないことなどを考慮し,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 高校生の高次脳機能障害5級,頭部手術痕12級,併合4級につき,事故当時大学附属高校に在籍し,現に大学に進学したことなどから,賃金センサス全労働者大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 専修学校の学生の左母趾機能障害等12級相当につき,専門課程の同コース卒業生の大部分は自動車メーカー系列ディーラーにメカニックとして就職していることなどから,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 幼稚園児の左腓骨偽関節,左足関節機能障害等併合7級につき,現在,大学薬学部6年生であり,卒業後は製薬会社に就業予定であること等を考慮し,賃金センサス女性薬剤師全年齢平均に近い500万円を基礎とした。
・ 高校卒業後海外留学予定者の背部痛,腰痛を含む脊柱変形8級相当につき,アルバイトや大学での授業に支障を生じており,脊柱変形が器質的異常により脊柱の支持性と運動性の機能を減少させ,局所等に疼痛を生じさせうるものであることを考慮し,賃金センサス女性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 小学生の右足の第2から第4趾の中足指関節から喪失,右足背から側面全域の瘢痕等併合11級につき,現在通学する大学看護学部の卒業生の内看護師志望の学生の国家試験合格率は毎年ほぼ100%であること,同大学を卒業した看護師の半分以上が同大学病院に就職していること等から,大学病院の看護師相当の収入を得る蓋然性があるとして,賃金センサス100-999人の企業規模の看護師給与平均を基礎とした。
・ 卒業後税理士を目指して勉強中の大学生,左肢関節機能障害10級につき,大学を卒業し,症状固定時26歳と若年であったことから賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 高校生につき,事故後に大学医学部に進学していること等から,賃金センサス女性医師全年齢平均を基礎とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 無職者のうち学生・生徒・幼児の逸失利益については,症状固定の年齢や進学先,目指す職業等,一人一人異なっているため,適正な基礎収入で逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】消極損害その2 後遺障害逸失利益(7)

2021-12-13

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(7)
2.基礎収入
(2)家事従事者
  ② 高齢者
・ 夫が医療保護入院中であった主婦(固定時65歳)の高次脳機能障害,外貌醜状併合1級につき,事故までほとんど見舞いに行っておらず家事労働を行っていたとは言い難い面があるが,事故に遭わなければ夫の身の回りの世話などをしていた可能性も否定できないとして,賃金センサス女性全年齢平均の30%を基礎とした。
・ 兼業主婦(固定時67歳)の高次脳機能障害7級につき,週3回程度クリーニング工場でのパート勤務を行うとともに,夫及び成人した長女の3人暮らしで,家事労働にも従事していたとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 12級片麻痺の既往症を有する被害者の遷延性意識障害併合1級につき,既往症による退職後は同居する妻子がフルタイムで働いていたこと,日常的に掃除,洗濯の一部,ゴミ出し,買い物等の家事を行っていたこと,自給用の野菜を栽培していたことから家事労働に従事していたとし,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均を基礎とした。
・ 無職者(固定時69歳)一人暮らしの高次脳機能障害5級につき,休業損害は否定したが,長男家族と同居し,その家事を分担する等の就労の可能性があり,労働の意欲及び能力は有していたとして,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均の70%を基礎とした。
・ 有職主婦(固定時71歳)の高次脳機能障害7級につき,月額25万円の収入があったことも考慮し,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 主婦(固定時75歳)につき,6人家族の家事を一手に担っていたこと等から,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎とした。
・ 家事をしながら障害のある娘の介護をする被害者(事故時75歳)の脊柱変形,右膝痛等につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均の80%を基礎とした。
・ 実弟及び精神障害を抱える引きこもりの子と同居し,家事労働をしていた被害者(固定時76歳)左股関節機能障害10級につき,休業損害は賃金センサス女性学歴計全年齢平均としたが,後遺障害逸失利益は賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎とした。
・ 夫と二人暮らしの専業主婦(固定時76歳)の失見当識,注意障害,健忘,運動能力の低下等1級につき,夫が事故後に死亡しているものの事故当時数年のうちに死亡する蓋然性があったとは認められず,家事従事者としての就労可能期間に影響を与えないとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均の8割を基礎とした。
・ 孫の通学等のため同居し身の回りの世話を全て行っていた被害者(事故時80歳)の右股関節機能障害10級につき,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎とした。
・ 女性(固定時81歳)の腰背部・左下肢痛14級につき,会社勤めをしている娘(48歳)と事故当時2人暮らしで家事に従事していたことから,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均の8割を基礎とした。
・ 専業主婦(固定時81歳)の右大腿骨転子部骨折後の疼痛14級につき,家事全部を負担していた点を踏まえつつ,無職の夫と二人暮らしという生活状況を考慮し,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均の9割を基礎とした。
・ 入退院を繰り返す妻に代わり同居家族のため家事の多くを分担する被害者(固定時84歳)右足関節機能障害,右脛骨偽関節,右下腿痛等併合7級につき,家事労働の評価を月額18万円とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 家事従事者のうち高齢者の逸失利益については,特に争いとなることも多く,適正な基礎収入で逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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