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【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(29)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(29)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(6)RSD(CRPS)等の疼痛傷害
交通事故で受傷すると,交感神経が作用して(高ぶって),血管が収縮して止血します。傷が治ると交感神経の作用(高ぶり)が落ち着くのですが,交感神経の異常によって,高ぶりが落ち着かないことがあります。交感神経の作用(高ぶり)が続くと,血管収縮により,手,足に栄養が届かず,老廃物が溜まる一方になって,手,足に痛み,腫れ,皮膚の変化,骨の萎縮,発熱の異常が生じます。また,ギプス固定で手,足を長期固定されたことが原因で発症することもあります。
このような傷病名を,RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)と呼ぶようになりましたが,症状は必ずしも交感神経の異常のみを原因とするのでないため(シナプス結合異常など),その後CRPS(複合性局所疼痛症候群)と呼ばれるようになりました。そして,CRPSは神経損傷の有無により,タイプⅠとⅡに分類されることになり,タイプⅠ(神経損傷が不明確)で代表的なものがRSD,タイプⅡ(神経損傷あり)で代表的なものがカウザルギーです。
後遺障害の等級としては,7級,9級,12級に認定されますが,そもそもCRPS(RSD,カウザルギー)と認定されることが最初のポイントになります。
カウザルギーについては,神経損傷が認められることが必要です。RSDは神経損傷がないため,自賠責保険では,関節拘縮,骨萎縮,皮膚の変化(皮膚温の変化,皮膚の萎縮)が,障害のある側と正常な側を比較して明らかになっていることを必要としています。
① 認定例
・ 夫の開業する歯科医勤務(固定時53歳)のRSDにともなう神経症状(12級),左足関節機能障害(12級),肋骨骨折後の疼痛(14級),歯牙折損(14級)の併合11級につき,RSDにかかり易い心因的要素の寄与を理由に減額すべきとの加害者側の主張を斥けて,14年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学教授(固定時48歳)の頭・頸部・腰部・右肩・右下肢・右手等の激しい疼痛や関節可動域制限,右上下肢筋力低下,右上肢知覚異常,右優位座骨神経痛,右下肢拳上制限等(移動に車椅子を使用)につき,皮膚の変化や骨萎縮はみられずRSDであるとの確定的な認定は困難であるが,器質的疾患による神経系統の障害として9級に相当するとして,19年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ アルバイト(固定時27歳)の頚部挫傷から左上肢RSDを発症し,1年半後の症状固定後に左下肢にもRSDを発症した場合に,左上肢は7級4号,左下肢の独立歩行困難も7級4号で併合5級とし,将来改善されることは困難として,50年間79%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦(固定時23歳)の皮膚変化は認められるものの関節拘縮も骨萎縮も認められない手足の痛みやしびれにつき,臨床用の判定指標を充たし高い確率でCRPSと診断できるとの医学的意見もあることから,客観的かつ厳格な要件が設定されている自賠法施行令上のRSD認定には至らなくても,他覚的所見を伴う「頑固な神経症状を残すもの」(12級)には該当するとして,44年間14%の労働能力喪失を認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
CRPS(RSD,カウザルギー)は,猛烈な痛みの伴う難治性の後遺症です。また慢性化することで精神的にも追い込まれることは少なくありません。
逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(28)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(28)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(5)PTSDその他非器質性精神障害
② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
・ 主婦(固定時29歳)の微熱,いらいら感,めまい,吐き気,抑うつ感等の症状(自賠責14級10号)につき,PTSDを否定し,器質的障害も認められないとしながら,十分な家事労働を行えず複数回自殺未遂もあることなどから9級10号として,10年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ ツアーガイド(固定時21歳)の頚部疼痛等,PTSDの症状を呈する外傷性神経症(併合14級)につき,14級10号は超えないとしながら,被害者の症状に照らして10年間10%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦兼看護助手につき,事故により中等度のPTSDで12級相当の後遺障害が残ったとし,PTSD以外の頸椎捻挫後の頸部痛,両上肢痛しびれ,頭痛等(14級),腰椎捻挫後の腰痛,両下肢痛等(14級)とあわせて,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社役員(事故時51歳)の不安・抑うつ気分,痙性斜頸等の精神症状につき,診断名はともかく9級と認め,身体的障害(併合11級)と全体で併合8級とし,身体的障害に器質的損傷が認められないこと,精神的障害はPTSDとまでは人展することができないこと,加害者の損害賠償義務を認めた判決により精神障害の回復が期待されることから,10年間45%の労働能力喪失を認めた。
・ 専門学校生・アルバイト(固定時28歳)につき,PTSDは否定したが,鬱状態は9級10号に該当するとし,10年間35%,その後29年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時34歳)につき,抑うつ状態等は非器質性精神障害として9級10号に該当するとして10年間35%の労働能力喪失を認め,後遺障害認定はその内容と程度を診断名を参考としながら適正な等級を認定するものであり,要件内容の明らかでないPTSDへのあてはめはあまり意味を有しないとした。
・ 看護師(固定時31歳,自賠責は脊柱変形,精神障害の併合11級)につき,PTSDにより就労可能な職種が相当程度に制限されるとして,事故後の平成16年改正の認定基準に基づき9級10号(脊柱変形との併合8級)に該当するとしつつ,今後の症状改善が期待されるとし,症状固定から12年45%(8級),以降67歳まで20%(11級)の労働能力喪失を認めた。
・ 就職活動中の被害者(固定時32歳,自賠責非該当)につき,PTSDに罹患したと認定し,事故を連想するような場面に出くわすとフラッシュバックがよく起こり,不眠なども続いているという症状は,就職及び職務の実施にある程度の支障があり,11級相当として,10年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 看護職員(事故時32歳)の非器質性精神障害及び頸部痛等(自賠責併合14級)につき,事故後PTSDと診断されたこと,被害者の主観としては生命に関わるような大事故であったこと,労災認定基準では12級相当に該当する所見があることなどから併合12級と認め,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
非器質性精神障害は,後遺障害が認定されない,もしくは低い等級で認定されることがあるものの,自賠責保険より高い等級や喪失率で逸失利益が認定された事例もあります。 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(27)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(27)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(5)PTSDその他非器質性精神障害
非器質性精神障害とは,脳の器質的損傷を伴わない精神障害のことです。非器質性精神障害にあたる病名としては,PTSDのほか,うつ病,外傷性神経症,不安神経症,強迫神経症,恐怖症,心気神経症,神経性無食症などの神経症(ノイローゼ)や統合失調症など,さまざまです。
非器質性精神障害は,交通事故に直接関連する身体的外傷や心的外傷などの要因に加えて,被害者個人の環境的要因や固体測要因などが複雑に関連しあうため,因果関係の認定が難しいという問題があります。
また,非器質性精神障害は,ある程度症状が続いても,その後に治癒する可能性があり,症状固定の判断が難しいという問題もあります。一般的な後遺障害では6ヶ月で症状固定しますが,非器質性精神障害は事故受傷後1年ほどをその判断期間としており,他の障害よりも長い期間,症状固定の判断に掛けなければなりません。
非器質性精神障害が後遺障害として認定されるためには,精神科などの専門医による診療を受け,治療と投薬がなされ,十分な治療期間があったにもかかわらず,具体的な残存症状や能力の低下が見られ,それらに対する回復の見込みに関する判断(症状固定)が適切に行われていることが重要なポイントになります。
認定される等級は,治療の経過・時間,身体的障害の状況,事故外要因,予後状況等を総合的に判断して,第9級,第12級,第14級の3段階になります。
① 認定例
・ 小学生(事故時11歳)につき,具体的症状等を検討のうえPTSDとは認定せず,特定不能の不安障害9級10号とし,身体能力や知的能力の点では就労に制限はないが,単独で外出が困難で就業できる職種が相当限定限定されるとして,18歳から10年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ 喫茶店経営者(固定時49歳)につき,PTSDを認定せず,ヒステリー症状,混合性解離性(転換性)障害2級3号として,67歳まで100%の労働能力喪失を認めた。
・ 脳神経外科医の抑うつ気分,意欲の減退,食欲不振,不眠12級13号につき,手指の機能・感覚の異常等を精査するため入院する必要があり,これによって休職し,復職への不安等から抑うつ状態となり,症状が悪化しうつ病になった経緯等から本件事故とうつ病発症との間に相当因果関係を認め,素因減額をせず,10年間14%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦(固定時47歳)の非器質性精神障害につき,症状は14級を上回るものともいえるが,事故後のストレス因子に対する過剰反応等から相当因果関係ある後遺障害の程度としては14級とした上で,症状消退の蓋然性の有無は判然としないとして20年間5%の労働能力喪失を認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
非器質性精神障害は,被害者の精神的ショックの大きさに対して,後遺障害が認定されない,もしくは低い等級で認定されることも多くあります。適正な等級が認められるためには,早めに精神科医の診察を受けるとともに,交通事故による後遺障害に強い弁護士に相談することが大切です。
【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(26)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(26)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(4)脊髄障害
脊髄損傷は,損傷した部位によって,四肢麻痺(両手および両足),片麻痺(左右いずれかの両手および両足),対麻痺(両手または両足),単麻痺(左右いずれかの手または足)が生じます。
発症部位と症状に合わせて,第1級1号,2級1号,別表第2の3級3号,5級2号,7級4号,9級10号,12級13号のが認定されます。
脊髄損傷を被ると,日常生活は大幅に制限され,収入も閉ざされ,大変な介護が必要となります。また,将来的に,筋力や循環器機能の低下に伴う合併症が生じるリスクも否定できません。被害者だけでなく介護を行う家族の将来を考えると,何より適正な賠償額を獲得することが重要になってきます。
<自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例>
・ 昼間は会社作業員として,夜間は寿司店配送運転手として二ヶ所に従事していた被害者(39歳)につき,自賠責は脊髄損傷等による四肢不全麻痺の程度は軽度として12級と認定したが,握力等低下で労働能力喪失の程度は通常の12級より高度であるとして,29年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(固定時22歳)の頸部痛,左下肢の筋力低下,知覚障害及び歩行障害(自賠責非該当)につき,明らかな脊髄症状が残存し9級10号に該当するとして,45年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ エステティシャン(事故時34歳,自賠責はそしゃく機能障害,左肩関節機能障害等併合9級)の左肩腕の不随運動(自賠責非該当)につき,頸髄損傷によるミオクローヌスによるものとし,左肩関節は用廃状態,左手の能力もほぼ喪失に近く,仕事が不可能になっただけでなく日常生活にも影響が出ているとして,67歳まで75%の労働能力喪失を認めた。
・ 塾講師・家庭教師(固定時43歳)の両上下肢麻痺及び排尿障害(自賠責非該当)につき,MRI画像等により外傷性椎間板ヘルニアが発生していること,右椎間板ヘルニアにより脊髄損傷を生じたことが認められ,本件事故後両上下肢麻痺及び排尿障害が生じたことなどからすれば,右症状は社会通念上本件事故によって脊髄損傷を負ったために生じたものであるとして1級相当とし,賃金センサスの7割を基礎に,67歳まで100%の労働能力喪失を認めた。
・ 電気調査員(固定時57歳)の左手掌のしびれ,左肩の鈍さ,左手指の巧緻運動障害,左下肢の脱力,左手握力低下等(自賠責非該当)につき,精髄損傷に由来する9級10号に相当する後遺障害であるとし,12年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ 建築業(事故時36歳)の頸髄損傷(自賠責7級4号)につき,中心性頚髄損傷後の後遺障害は,上肢につき軽度の麻痺,下肢につき中等度の麻痺を残すとして3級と認定し,脊柱の変形障害(11級)と併合して2級と認めたうえで,本件事故により受傷して入院したため仕事ができず,症状固定後も併合2級の後遺障害が現存して就労できないままであることなどから,休業期間を含め31年間100%の労働能力喪失を認めた。
・ 水泳等インストラクター(固定時50歳)の脊髄損傷による完全対麻痺(別表1の1級1号)につき,自賠責は中心性脊髄損傷による下肢の麻痺等を既存障害(12級13号)としたが,本件事故時において日常生活に支障がないほどにまで改善していたこと,本件事故後職場に復帰したが,慣らし勤務として開始されるなど勤務先の配慮が大きく,その後疼痛のため退職したこと等の事情を踏まえ,既存障害を労働能力算定にあたって考慮せず,17年間100%の労働能力喪失を認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
脊髄損傷では,適正な等級を取得することはもちろんのこと,将来の介護費用,住宅改造費など経済的負担が多くなるため,適正な賠償額を獲得することが重要となってきます。
逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。
【コラム】:人身傷害保険利用時の請求について(最判令和4年3月24日)
交通事故の被害に遭い,こちらにも過失が大きい場合は,被害者やその家族が加入する人身傷害保険を利用することが多くあります。
人身傷害保険では,被害者に過失がある場合でも,人身傷害保険を利用するときは過失割合にかかわらず定額の補償がされますが,利用後に相手方に請求するときは過失相殺されます。
この際の過失相殺の方法について,過失相殺分は,被害者の請求側で考慮されるのか(絶対説),人身傷害保険側で考慮されるのか(裁判(訴訟)基準差額説)の2種類があります。
例:弁護士基準での損害が総額1000万円,人身傷害保険での補償額が500万円,過失割合が20:80の場合
1.絶対説
被害者は,人身傷害保険で補償を受けた差額分(1000万円-500万円=500万円)を請求したいところですが,過失相殺分(1000万円×0.2=200万円)は,被害者の請求側で考慮されるため,被害者が請求できる金額は,300万円となります。(500万円-200万円)。
一方,人身傷害保険から相手方への請求(求償)は500万円です。
2.裁判(訴訟)基準差額説
過失相殺分(1000万円×0.2=200万円)は,人身傷害保険側で考慮されるので,人身傷害保険から相手方への請求(求償)は300万円になります(500万円-200万円=300万円)。
一方,被害者の請求できる金額は,500万円です。
この問題については,最高裁判所が,裁判(訴訟)基準差額説を採用するに至っています(最判平成24年2月20日判時2145号103頁)。
その後,人身傷害保険会社が自賠責保険を受領していた場合に,人身傷害保険会社が回収した自賠責保険金額について損益相殺を認めた裁判例が出ました(福岡高判令和2年3月19日,判例タイムズ1478号52頁)。
上記の例でいうと,人身傷害保険会社が自賠責から120万円を受領していた場合,被害者の請求額500万円から120万円を控除し,被害者の請求できる金額は380万円となります。
この裁判例は保険会社寄りの内容となっており,裁判(訴訟)基準差額説を主張した際の反論として保険会社が引用することが多くありました。
しかしながら,この裁判の上告審において,最高裁判所は,福岡高判を破棄して,人身傷害保険会社が回収した自賠責保険金額について損益相殺を認めないと判断しました(最判令和4年3月24日)。
上記の例でいうと,人身傷害保険会社が自賠責から120万円を受領していた場合でも,被害者の請求できる金額は500万円となります。
今回の最高裁判所の判断は被害者寄りの内容となっています。弁護士法人しまかぜ法律事務所では,これまでも裁判(訴訟)基準差額説で相手方へ損害賠償請求をして解決しています。今後も裁判(訴訟)基準差額説で請求を行い,最判令和4年3月24日のように人身傷害保険金が自賠責保険を受領していた場合において,損益相殺を認めずに相手方へ損害賠償請求していきます。
被害者にとって最も適する解決方法を考えてアドバイスし,交渉していきますので,過失割合がある案件,人身傷害保険利用後の相手方への請求案件でお困りの方は,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所にお問い合わせください。
【コラム】:死亡事故の賠償内容について
愛知県警察によると,令和4年5月の交通事故死者数が15人となり,前年に比べ増加しています。特に名古屋市内では,5月12日~22日の10日間に3件3人の交通死亡事故が発生し,今年2回目の「交通死亡事故多発警報」が発令されました。
(https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/jikonippou/documents/koutsuushibouzikonippou220531.pdf)
6月は,梅雨入りし天候が不安定となります。天候が悪くなると視界が悪化しますので,ドライバーはスピードを控えるなど安全運転を心がけてください。また,歩行者や自転車の方も,ドライバーから見えていないかもしれないと考えて,安全な行動を取ることが大切です。
もし,交通事故の被害に遭い死亡した場合,請求できるのは以下の項目です。
1.治療費
救命治療などに要した治療費を請求できます。
2.葬儀関係費
死亡事故がなくても将来的にはいずれ必要になってくるため,全額ではなく150万円程度が認定されることが多いです。ただし,若年で亡くなられた場合は,はるかに遠い将来に要する葬儀を考慮する必要性が低いため,150万円以上で認定されます。
3.死亡慰謝料
2500万円ほどで認定されることが多いです。
もっとも,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,ご遺族の過ごしてきた関係,どれだけ愛情をもって接してきたかによって,更に増額しての解決をしています。
4.死亡逸失利益
死亡逸失利益は,①基礎収入×(1-②生活費控除率)×③就労可能年数によるライプニッツ係数で算定します。
① 基礎収入は,給与所得者は事故前年の収入です。若年労働者(概ね30歳未満)の場合は,全年齢平均の賃金センサスを用います。
家事従事者は,女性労働者の全年齢平均の賃金センサスとなります。
② 生活控除率は,一家の大黒柱の場合,被扶養者1人で40%,被扶養者2人以上で30%です。
女性は30%,男性(独身,幼児等含む)は50%となっています。
③ 就労可能年数は,原則67歳までです。
ただし,67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者については,平均余命の2分の1を就労可能年数とします。
自賠責では上限金額が3000万円となっており,保険会社から提示される賠償額も同じくらいの金額となることが多いですが,弁護士に依頼することで,保険会社からの賠償額を大幅増額して解決できることがあります。
特に,死亡逸失利益は,一般的に,死亡事故の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが非常に重要となります。
弁護士法人しまかぜ法律事務所は,死亡事故について解決実績が豊富にありますので,お困りの方は,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(25)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(25)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(3)てんかん
てんかんとは特有の発作を繰り返す脳の病気のことで,交通事故のように頭部に外傷を負ったことを原因として起きるてんかんを,外傷性てんかんといいます。
てんかんの主な症状(発作)は,けいれん,意識の消失,全身にわたる筋肉の硬直・脱力などがあり,一過性の発作が数秒から数十秒,長くて数十分で回復しますが,いくつかの発作が重なったりして2回以上反復的に起こります。
てんかんの後遺障害では,どのような発作が起きたか,またその頻度・回数はどの程度かによって5級~12級が認定されます。
なお,1か月に2回以上の発作がある場合,一般的に高度の高次脳機能障害とされ,後遺障害第3級以上の認定対象となることがあります。
① 認定例
契約社員(固定時36歳)の高次脳機能障害,症候性てんかん7級につき,ドライバーとして稼働していた被害者が,てんかんの発症を契機に自動車運転をすることができなくなり,実際にも勤務先の運送会社を退職し,職を失っていることからすれば労働能力喪失の程度は大きいとして,31年間56%を認めた。
② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
・ タクシー運転手(固定時59歳,自賠責非該当,労災9級)につき,9級に該当するとし,自賠責の認定した右足関節痛(12級)との併合8級だが,就労の障害となるのは専ら外傷性てんかんであるとして,11年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦兼美容師(固定時34歳,自賠責非該当)の外傷性の神経機能異常によるミオクローヌス様ないしジストニア様の上肢の不随運動につき,画像上の異常所見が見られないことが一般的であり,筋電図検査では異常ありとされていること,事故前まで社会適応良好で身体表現性障害の既往はなく,転換性障害を否定する鑑定結果も存在することから事故との因果関係を認め,5級相当として,33年間79%の労働能力喪失を認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
交通事故による外傷性てんかんは治りにくいと言われており,服薬期間も長く治療が長期に渡ることから,経済的な負担も大きくなります。
逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(24)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(24)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(2)高次脳機能障害
② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
・ 中学生(固定時16歳,自賠責は5級)につき,少なくとも知的産業への就労はまず不可能であり,軽微な非知的産業への就労は全く不可能ではないが,記憶や注意力,新しいことを学習する能力,障害の自己認識,円滑な対人関係維持能力の著しい障害による社会生活への不適応性や,集団生活での監視の必要性等に照らし,一般就労が困難として3級3号に該当するとした。
・ 大学生(固定時21歳,自賠責は3級)につき,身体動作的には生命維持に必要な身辺動作についてほぼ自立しており,自宅内において常に家族等の声かけや看視を欠かすことができないとまではいえないものの,日常の生活範囲は自宅内にほぼ限定されており外出に際しては看視が必要であるとして,高次脳機能障害は2級とし,両眼視野狭窄,左足指用廃,右下肢醜状とで併合1級とした。
・ 会社員(固定時31歳,自賠責は高次脳機能障害7級,右動眼神経麻痺等併合11級相当,併合6級)につき,記憶力及び記銘力の障害の程度が強いことから,6級と5級のほぼ中間値75%の労働能力喪失を認めた。
・ トラック運転手(固定時43歳,自賠責は5級)につき,日常生活動作,意思疎通能力,問題解決能力,作業負荷に対する持続性・持久性,社会行動能力のほか,労災1級,精神障害者保健福祉手帳1級の各認定も考慮して,高次脳機能障害は3級とし,100%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学院卒の有限会社代表取締役(固定時31歳,自賠責は非該当)につき,記憶障害,学習障害,注意障害,遂行機能障害,社会行動能力の低下,持続力の低下,知能低下の症状をびまん性軸索損傷に基づく高次脳機能障害の症状と認め,5級又は3級に相当するとして,左顔面から頸部にかけての不随運動,講音障害・講語障害,左上肢から頸部の筋萎縮の亢進と異常姿勢及び運動障害等のジストニアの症状と併せて併合2級相当として,100%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦(固定時33歳,自賠責は非該当)につき,現在の生活状況に照らして労働能力に影響を与える主たる症状は易疲労性であるが,全く家事労働に従事することができないわけではなく,掃除,洗濯,食事につき,一定限度従事することができていることから67%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時50歳,自賠責は非該当)につき,事故直後,軽度の意識障害があり,MRI画像によれば脳の病変や脳挫傷を疑う所見があり,物忘れ症状や新しいことの学習障害,複数の作業を並行処理する能力,集中力等の低下,易怒性,多弁といった性格上の変化がみられることから,高次脳機能障害7級と認定した。
・ プロゴルファーのキャディー(固定時33歳,自賠責は非該当)につき,事故直後の強い意識障害や画像所見における異常所見はないが,軽度外傷性脳損傷は遅発性に現れることもあり必ず画像所見に異常が見られるということでもないこと等から,事故により脳幹部に損傷を来した事実を否定することはできないとして9級にあたるとして,67歳まで35%の労働能力喪失を認め,心因的要因の影響から3割の訴因減額を行った。
・ 美容室勤務(固定時31歳,自賠責は非該当)につき,脳損傷について,画像所見から直ちにその旨の所見は認められないが,頭部に衝撃を受けており,事故直後の記憶がないこと及び事故直後の意識消失があり,意識障害の程度は低いが入院中一時記憶障害があり,事故後に隣人とトラブルになって傷害を負わせ措置入院されるなど精神症状が現れていることを総合し,高次脳機能障害7級と認定した。
・ 大工(固定時30歳,自賠責は非該当)につき,受傷直後の意識障害は軽度で持続時間も短いが,当初から記憶障害等の症状が現れており,びまん性脳損傷ないし軸索損傷を示唆する画像所見や認知能力が標準を下回ることを示す神経心理学的検査が存在し,複数の医師が高次脳機能障害との見解を示していることから,脳損傷を原因とする高次脳機能障害が残存したと認め,5級に相当するのとした。
・ アルバイト(固定時32歳,自賠責はびまん性脳損傷等による神経・精神の障害7級)につき,事故後居酒屋や喫茶店での勤務を試みたが仕事が覚えられない等の理由によりごく短期間で辞めている等の状況を踏まえ,35年間60%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時21歳,自賠責は非該当)につき,腰部及び右下肢の症状,頸部及び右上肢の症状並びに右上下肢の運動機能障害(右不全麻痺)及び脳機能に関する症状は,頭部外傷に起因するものであり,事故後の意識障害が確認できず,画像診断で有意な所見を見いだすことができないとしても,それらを絶対視して高次脳機能障害の存在を否定することは相当ではないとして,7級に該当するとした。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
高次脳機能障害が残ると,被害者のみならず介護を行う近親者の生活が,事故前とでは一変することになります。被害者だけでなく近親者の将来の不安を少しでも解消するためには,適正な後遺症の等級認定を受け,適正な賠償金を得ることが大切です。
逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(23)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(23)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(2)高次脳機能障害
高次脳機能障害とは,交通事故によって脳が損傷することで,①記憶障害(覚えられない,思い出せない,すぐに忘れる),②注意障害(気が散りやすい,集中できない),③遂行機能障害(手順良く作業を行うことができない),④人格障害(怒りっぽくなる,疑いやすくなる),⑤コミュニケーション障害が生じることです。
自賠責では1級~9級が認定されますが,認定基準は,①初診時に頭部外傷の診断があること,②頭部外傷後に意識障害があったこと,③治療中の診断書,後遺障害診断書に,高次脳機能障害,脳挫傷,びまん性軸索損傷,びまん性脳損傷の記載があること,④治療中の診断書,後遺障害診断書に,障害の具体的な症状が記載されていること,⑤CT,MRI画像により,初診時の頭部損傷,受傷後3ヶ月以内に脳室拡大や脳萎縮が確認されることです。
上記の自賠責保険の認定基準を理解した上で,認定のために必要な検査を行い,後遺症の申請にあたって近親者が作成する日常生活状況報告表に書く内容(被害者が一日どう過ごして何に支障があるか、具体的内容、エピソードなど)を日頃からメモしておくことが大切です。
① 認定例
・ 高校生(固定時18歳)につき,事故後親が送迎して復学,大学へ進学(ただし,途中で授業についていけなくなった),携帯電話でのメール,ギター,近所での買い物等もでき,ある程度の認知,判断及び学習能力を備えているが,大学進学は担任教師の配慮であり,初めての場所で道に迷う,ストーブの火をつけたまま忘れるなどの物忘れ症状があり,学習にも大変な時間と労力を要すること,切れやすい状態で易怒性や易興奮性が認められ,新たな人間関係が構築されている様子は見られないこと等から,自賠責認定どおり5級の高次脳機能障害と認めた。
・ 大卒会社員(固定時36歳)の記銘力障害,笑い発作等(併合7級)につき,復職後収入は増加しているが,配置転換のうえ係長職を解かれたこと,知能指数が96となったこと,仕事を継続できているのは勤務先の理解と本人の多大な努力による部分が大きいこと,今後の昇進が相当に困難であることから,31年間56%の労働能力喪失を認めた。
・ 精肉店勤務(固定時25歳)の高次脳機能障害(3級),言語機能障害併合2級につき,一時的に元の職場に復帰し843日後に退職しているが,復職は社長の好意によるところが大きいとして,100%の労働能力喪失を認めた。
・ デザイン担当嘱託社員(固定時45歳)の高次脳機能障害(5級),嗅覚障害,味覚障害併合4級につき,事故後復職し,デザイン能力は低下しておらず会社も能力を高く評価していたが,記憶力や持続力の低下,協調性の問題などの人格変化によりトラブルが発生して退職している一方で,完全に就労不能とはいえず,嗅覚障害,味覚障害は労働能力に影響しないことから,85%の労働能力喪失を認めた。
・ 大卒の建築請負業者(固定時53歳)の頭部外傷(脳振盪型)につき,現在の医療検査技術で脳の器質的損傷を示す異常所見が見当たらないからといって,事故後の記憶障害,易怒性,意識低下等の症状が脳の器質的損傷によることを否定することは相当ではないことから,高次脳機能障害9級として,14年間35%の労働能力喪失を認めた。
・ バリスタの高次脳機能障害につき,知能低下,記憶障害,記銘力・集中力低下,学習障害が残っている反面,事故後ジャパンバリスタチャンピオンシップで優勝し,世界大会で10位を獲得し,講演会の講師を務めたこと,著述があること,並びにテレビ番組の出演があり,増収の事実があるが,体に刻まれた修練や経験,講演案文の第三者作成,ライターの援助などによるものであって,潜在的な労働能力の喪失を観念することができるとして9級10号に該当するとしたが,日常生活の支障が限定的であることを勘案し,労働能力喪失率は27%とした。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
高次脳機能障害が残ると,被害者のみならず介護を行う近親者の生活が,事故前とでは一変することになります。被害者だけでなく近親者の将来の不安を少しでも解消するためには,適正な後遺症の等級認定を受け,適正な賠償金を得ることが大切です。
逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(22)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(22)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(1)遷延性意識障害(いわゆる植物状態)
遷延性意識障害とは,重傷を負い,意識不明のまま寝たきりになっている状態のことで,一般的に植物状態と言われているものです。遷延性意識障害は,交通事故の後遺症の中でも,最も重篤な後遺症だと言われています。
遷延性意識障害の定義については,日本脳神経外科学会による定義(1976年)が一般的で,以下の6項目が医療によっても改善されずに3ヶ月以上続いた場合を遷延性意識障害といいます。
1 自力移動ができない。
2 自力摂食ができない。
3 し尿失禁がある。
4 声を出しても意味のある発語ができない。
5 簡単な命令には辛うじて応じることもできるが,意思疎通はほとんどできない。
6 眼球は動いていても認識することはできない。
遷延性意識障害になると常に介護を要するため,通常は後遺症等級1級が認定されることになります。
しかしながら,CT画像,MRI画像,医師が診察して作成した後遺障害診断書などの適切な資料を用意しないと,適正な等級認定がされないこともありますので注意が必要です。
<認定例>
・ 大学生(固定時22歳)の脳挫傷による植物状態(1級3号)につき,22歳男性の平均余命と認定し,22歳から67歳まで100%の労働能力喪失を認め,かつ生活費控除もしなかった。
・ 小学生(固定時8歳)の遷延性意識障害,射幹・四肢の運動麻痺等(1級3号)につき,8歳男性の平均余命と認定し,18歳から67歳まで100%の労働能力喪失を認め,かつ生活費控除もしなかった。
・ 男児(固定時3歳)の遷延性意識障害(別表1の1級1号)につき,3歳男子の平均余命と認定し,18歳から67歳まで100%の労働能力喪失を認め,かつ生活費控除もしなかった。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
遷延性意識障害になると常に身守りや介護が必要になりますので,遷延性意識障害の患者が暮らしやすい環境を整えるには,適正な後遺症の等級認定を受け,適正な賠償金を得ることが大切です。
逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。