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【コラム】12月は業務中,通勤時の死亡重傷事故が年間最多

2022-11-25

 愛知県警察が作成している「交通事故防止のPOINT」によると,12月は交通死亡事故が多発しています。12月中の交通死亡事故の特徴としては,①歩行者事故として,【年齢】高齢者が6割以上,【時間帯】朝及び夕方から深夜にかけて多発です。②自転車事故として,【年齢】高齢者が約9割,【事故類型】出合い頭が約6割,【時間帯】9時台から13時台が約6割となっています。
 また,業務中,通勤時の死亡重傷事故が年間最多となっています。年末は業務多忙となり心身の疲れなどが運転に影響を及ぼすことが予想されますので,体調管理に努めるとともに,時間にゆとりを持ち,速度を控え,安全行動を心掛けることが大切です。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/20221019point.pdf

 業務中・通勤時に交通事故の被害に遭った場合,労災保険から保険給付を受けることができます。業務時間中の事故は業務災害,通勤退勤の途中の事故は通勤災害となります。 労災保険で受けることができる給付は,①療養(補償)給付,②休業(補償)給付,③障害(補償)給付,④傷病年金,⑤介護(補償)給付,⑥遺族(補償)給付,⑦葬祭料があります。

 労災保険を使用するメリットとしては,治療費を全額支給してもらえることです。自賠責保険の場合は限度額が120万円となっており,加害者の任意保険会社が支払っている場合も治療期間が長くなると治療費の支払いを打ち切るケースが多くあります。労災保険には限度額や打ち切りがないため,安心して最後まで治療を受けることができます。

 また,休業損害・補償を多く受けることもできます。労災保険を使用する被害者に休業損害が発生した場合,労災保険から給付基礎日額の60%が休業(補償)給付と支給され,残りの40%を保険会社に請求します。
 それとは別に社会復帰促進等事業の一環として,給付基礎日額の20%にあたる休業特別支給金を受け取ることができます。休業(補償)給付や保険会社から支払われた休業損害を既に受け取っていた場合,保険会社に対する損害賠償額から控除されますが,休業特別支給金は控除されません。
 同様に,後遺障害が残存したときに支給される障害特別支給金も,損害賠償額から控除されません。

 さらに,費目間の流用を禁止するルールがあるため,積極損害,消極損害,慰謝料で各費目分類し,各費目の過失相殺後の残額は,いずれも当該費目間に関してのみ既払金及び損益相殺で補填されます。
 (例)
  過失割合が加害者:被害者=70:30,治療費100万円,休業損害100万円,慰謝料100万円,労災から療養給付100万円,休業給付60万円受給している場合
治療費は,過失相殺すると100万円×70%=70万円となり,損益相殺すると70万円-100万円=-30万円となり,保険会社に請求できる治療費は0円となります。
休業損害は,過失相殺すると100万円×70%=70万円となり,損益相殺すると70万円-60万円=10万円となり,保険会社に請求できる休業損害は10万円となります。
  慰謝料は,労災保険の支給対象外なので差し引かれる給付はなく,保険会社に請求できる慰謝料は過失相殺した100万円×70%=70万円となります。
  治療費が30万円過払いとなっていますが,費目間の流用が禁止されているため,他の費目から控除されることはなく,保険会社に請求できる賠償額は,0万円+10万円+70万円=80万円となります。
  仮に労災保険を使用せず,保険会社の一括対応で自由診療による治療をしていた場合は,過払いとなった治療費が他の費目から控除されるため,-30万円+10万円+70万円=50万円となります。

 以上のとおり,労災保険を使用するメリットは多くありますが,損害賠償額の計算方法など複雑な部分もあります。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所は,労災保険を使用した交通事故の解決実績が豊富にありますので,労災保険を使用する交通事故でお困りの方は,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(44)

2022-11-21

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(44)
12.上肢・下肢・及び手指・足指の障害
  上肢の後遺障害は,①欠損障害として1~5級,②機能障害として1~12級,③変形障害として7~12級があります。
下肢の後遺障害には,①欠損障害として1~7級,②機能障害として1~12級,③変形障害として7~12級,④短縮障害として8~13級があります。一般的には,受傷した方の脚が他方の脚より短くなりますが,年少者などにおいては逆に健全な脚より長くなる過成長になることもあります。その場合も短縮障害に準じる障害として扱われます。
手指の後遺障害は,①欠損障害として3~14級,②機能障害として4~14級があります。
足指の後遺障害は,①欠損障害として5級~13級,②機能障害として7級~14級があります。
機能障害の原因は器質的損傷(骨折後の癒合,関節拘縮,神経の損傷)であることを証明する必要があり,疼痛による可動域制限(痛いから曲げられない)では,神経症状と認定され,低い等級(12,14級)に認定されやすいです。

(1)認定例
 ・ 被害者(事故時9歳,固定時18歳)の左大腿骨変形癒合12級,左下肢瘢痕14級の併合12級につき,足に負担が掛かると考えられる美容師として稼働をしていること等に照らし,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
 ・ 会社員(固定時28歳)の左膝痛等の症状を伴う左腓骨変形障害12級につき,足に大きな負担がかかる仕事を担当しており,受傷後の足の痛みや足関節の可動域の定価等の症状は,その仕事内容に具体的な影響を及ぼすものとして,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(43)

2022-11-13

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(43)
11.脊柱及びその他の体幹骨の障害
脊柱及びその他の体幹骨の障害は,①脊柱の変形障害,②脊柱の運動障害,③その他の体幹骨(鎖骨,胸骨,ろく骨,肩こう骨,骨盤骨)の変形障害に分けられます。
①脊柱の変形障害は,その変形の程度により6級,8級,11級に認定されます。②脊柱の運動障害は,脊柱圧迫骨折等に基づく頚部および胸腰部の硬直や可動域制限,または荷重障害の程度により6級,8級に認定されます。③その他の体幹骨の変形障害は12級が認定されます。裸体になった時に変形や欠損が明らかにわかる程度のものを指すため,レントゲン撮影などによってはじめて確認できる程度のものは該当しません。

(1)認定例
 ・ 特殊運搬船の運航管理者(固定時56歳)の脊柱変形(11級),左脛骨近位端関節内骨折後の左膝痛(12級)の併合10級につき,船上等に出向く機会が多く,船長として乗船勤務の予定があるところ,症状により乗船勤務ができなくなる可能性や長時間の乗船勤務が必要な高い収入の得られる船の船長になれないおそれがある等から,事故前の年収を基礎に,13年間27%の労働能力喪失を認めた。
 ・ 特殊事務所職員(固定時48歳)の第一腰椎圧迫骨折後の脊柱変形(11級)につき,日常生活においては腰に過度の負担がかからないように注意する必要があり,腰に負担がかかるスポーツ等も控えなければならない等として,事故前年の年収を基礎に19年間20%の労働能力喪失を認めた。
 ・ トラック運転手(固定時37歳)の右鎖骨変形(12級)につき,同障害には重い物を持ち上げたり下ろしたりするときの痛み等の症状も含まれており,業務に影響が生じていること等から,67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
 ・ 会社員たる現場監督(固定時54歳)の左肩関節機能障害等(併合9級)につき,左鎖骨の変形障害が原因とみられる疼痛が続いていること,裸体になったときに変形が明らかにわかる程度のものであること等に照らすと変形障害についても実際に労働能力を喪失させていると評価できるとして,14年間35%の労働能力喪失を認めた。
 ・家事従事者(固定時52歳)の軸椎骨折後の脊柱変形(11級),左足部痛,歩行時痛(14級)の併合11級につき,左足部痛,歩行時痛等は12級13号に該当するとして,併合10級とし,67歳まで27%の労働能力喪失を認めた。
 ・ 清掃業従事者(固定時45歳)の第五腰椎変形骨折後の脊柱変形(11級)につき,変形の程度が大きいこと,従事する清掃業で腰部への負担が重いことから,22年間20%の労働能力喪失を認めた。
(2)自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
 ・ 運送会社会社員(固定時59歳)の咀嚼機能障害(非該当),脊柱の運動障害(11級),胸腰椎部の運動障害(非該当),口が開きにくい,物が咬みにくいとの症状(14級)の併合11級につき,咀嚼機能障害等は労働能力に影響しないが,脊柱の運動障害等は労働能力に影響すること,腰背部痛のために,重いものを持ったり長時間の座位,歩行等が困難等の支障を生じていること,後遺障害のため事故後は稼働していないことから,11年間45%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 変形障害のうち,特に鎖骨の変形障害は労働能力に影響しないと保険会社から主張され,逸失利益が否定されることもあります。弁護士法人しまかぜ法律事務所では,変形障害から派生する疼痛障害と併せて労働能力への影響を主張し,逸失利益が認定されるケースが多くあります。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(42)

2022-11-04

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(42)
10.胸腹部臓器の障害
呼吸器(気管,気管支,肺,横隔膜等),循環器(心臓,心膜,大動脈等),腹部臓器(食道,胃,小腸,大腸,肝臓,胆のう,すい臓,ひ臓,腹壁等),泌尿器(じん臓,尿管,勝脱,尿道等),生殖器の障害に分けられます。
胸腹部臓器の障害の障害等級については,原則として,その障害が単一である場合には臓器ごとに定める基準により判断されます。また,その障害が複数認められる場合には,併合の方法を用いて相当級が判断されます。

(1)認定例
 ・ 女児(固定時3歳)の左腎機能全廃(13級11号)につき,残存する右腎臓にできるだけ負担をかけない生活上の不利益を受け,あるいは就労上の配慮を要するとして,賃金センサス男女計学歴計全年齢平均を基礎に,18歳から67歳まで9%の労働能力喪失を認めた。
 ・ セールスドライバー(固定時34歳)の腹圧性尿失禁(7級),射精障害(9級)の併合6級,骨盤骨変形12級,左下肢後面等;左大腿部側部・会陰部のしびれ12級の併合5級につき,腹圧性尿失禁及び左下肢等のしびれ等につき労働能力の喪失を認め,本人の努力や勤務先による内筋業務への配置転換,営業主任から安全推進係長や営業係長に昇格させる等の特別の配慮があるため減収なく700万円以上の年収を維持していることを考慮し,67歳まで60%の労働能力喪失を認めた。
(2)自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
 ・ 女子会社員(試用期間中,固定時40歳)の切迫性尿失禁・腹圧性尿失禁(自賠責非該当)につき,加齢を原因とすることは考え難く,初診時の超音波検査等から明らかな膀胱の収縮はないが膀胱容量が低下していることや,症状が薬剤による治療に対応した反応をしていることなどから,心因反応による症状ではなく,下部尿路を支配する神経損傷や骨盤内の膀胱尿道支持組織の損傷等に起因するとして11級10号と認定し,67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 胸腹部臓器に後遺障害が残ると,身体を維持するための機能が働かなくなることが多いので,仕事や日常生活にも著しい支障が生じることになります。
 しかしながら,臓器によっては,ただちに労働能力とは関係しないとして,逸失利益が否定されるケースもあります。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:愛知県内の交通事故死者数が100人に達する

2022-10-30

 愛知県警察によると,愛知県内の今年の交通事故死者数が100人に達し,令和4年10月27日時点では109人となっています。100人に達したのは昨年(11月18日)より39日早く,愛知県警察では交通ルールの順守を呼び掛けています。
 また,亡くなった109人のうち65歳以上の高齢者が48人と最多となっていますが,25~64歳も42人と多くなっています。当事者別では歩行者が,類型別では横断中がもっとも多くなっています。
 冬に向けて日没時間が更に早くなることから,自動車はヘッドライトを早めに点灯し,歩行者は反射材の着用をするなど,一人一人が交通事故を防ぐための行動を心がける必要があります。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/jikonippou/documents/koutsuushibouzikonippou221027.pdf

 歩行者が被害に遭う交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故や重篤な障害が残る事故につながりやすくなります。
 死亡事故や後遺障害が残存した場合,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)が支払われますが,就労可能年数(67歳)までの年数が長いほど逸失利益は高額となります。
 ただし,67歳を超えている方や67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1よりも短くなる被害者については,原則として,平均余命の2分の1の年数となります。
 逸失利益は,一般的に,死亡事故や後遺障害の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
 
 また,交差点内や交差点付近で歩行者が横断中に事故に遭う場合,歩行者が横断歩道を横断しているかどうかで過失割合が変わってきます。
 横断歩道外を横断している場合でも,横断歩道の付近であれば横断歩道通過後なのか横断歩道の手前なのか,それ以外の場所なのかなど,事故態様に応じて過失割合が変わってきますので,ドライブレコーダー映像や事故の現場図を分析し,正確な事故態様を明らかにしたうえで,適正な過失割合で解決することも非常に大切となります。
 死亡事故や重篤な障害が残る事故は賠償額が高額となるため,過失割合がたとえ1割の違いであっても,賠償額が大きく変わってきますので,専門的知識と豊富な解決実績のある交通事故に強い弁護士に相談することが重要になります。

弁護士法人しまかぜ法律事務所では,高齢者の交通事故,過失割合について解決実績が豊富にありますので,高齢者の交通事故,過失割合でお困りの方は,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(41)

2022-10-24

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(41)
9.外貌醜状等
(6)男性の事例
外貌醜状の後遺障害等級は,以前は,女子につき,外貌に著しい醜状を残すものが7級,外貌に醜状を残すものが12級,男子につき,外貌に著しい醜状を残すものが12級,外貌に醜状を残すものが14級とされていました。
しかし,平成22年6月10日以降に発生した事故については,男女の区別なく,外貌に著しい醜状を残すものが7級,外貌に相当程度の醜状を残すものが9級,外貌に醜状を残すものが12級なっています。

 ・ 男児(事故時5歳)の顔面醜状(12級),歯牙障害(12級)の併合11級につき,18歳から67歳まで10%の労働能力喪失を認めた(平成6年)。
 ・ 予備校生(固定時29歳)の頸部,腰部の神経症状(各14級),顔面醜状(12級)の併合12級につき,男性といえども醜状痕によって希望する仕事への就職が制限されたり,就職しても営業成績があがらなかったり,仕事の能率や意欲を低下させて所得に影響を与えることは十分に考えられるとして,症状固定から10年間10%,その後10年間5%の労働能力喪失を認めた(平成13年)。
 ・ 被害者(固定時23歳)の頭部3ヵ所の線状瘢痕(12級),歯牙障害(13級)の併合11級につき,対人面接が重要な職種によっては就労の機会を制限され,労働の意欲を低下させるとして,67歳まで5%の労働能力喪失を認めた(平成14年)。
 ・ 作業療法士(固定時29歳)の顔面おとがい部長さ5cm以上の線状痕(12級),障害歯10歯喪失又は著しい欠損(11級)の併合10級につき,事故後の年収が事故時を上回っているが,事故の年の年収は3月末以降に過ぎないこと,事故当時の勤務先は勤務年数に応じて昇給する賃金体系であること,職場への遠慮等から無理をして職責をこなしていたことなどから,労働能力喪失がないとはいえないとし,外貌醜状による労働能力の喪失も認められるとして,67歳まで15%の労働能力喪失を認めた(事故日平成16年)。
 ・ 高校生(固定時19歳)の右下腿部前面醜状(14級),右眼下部10円銅貨大以上瘢痕(14級)の併合14級につき,対人折衝が必要な業務に従事しており,顔面に傷があることを気に病み,業務に集中できず,仕事の能率や意欲を低下させることは十分に考えられるほか,将来的には営業部門等にも配属される可能性もあり,労働能力喪失の期間を制限すべきでないとして,48年間5%の労働能力喪失を認めた(事故日平成20年)。
 ・ 会社員(固定時55歳)の肘の屈曲,肩の拳上・外転の障害(12級),左頬部線状痕(12級)の併合11級につき,定年が5年以内に迫っており,定年後の再雇用や新たな就職の問題も生じるところ,その際には外貌の著しい醜状も就職に不利益を生じる蓋然性が高く,労働能力を低下させる要素になると認められることから,定年までの5年間は事故の翌月からの年俸,それ以降の8年間については再雇用されることを前提とした金額を基礎に,それぞれ20%の労働能力喪失を認めた(事故日平成21年)。
 ・ 専門学校生(固定時23歳)の外貌醜状(7級),右眼視力障害(8級),右まぶた運動障害(12級)の併合5級につき,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に,67歳まで79%の労働能力喪失を認めた(平成24年)。
 ・ 専門学校卒の給与所得者(固定時26歳)の高次脳機能障害(5級),醜状障害(旧基準12級),歯牙欠損(12級)の併合4級につき,醜状障害は事故後に改正された7級として併合3級とし,賃金センサス男性高専・短大卒全年齢平均を基礎に,67歳まで100%の労働能力喪失を認めた(平成25年)。
 ・ 交通誘導警備員(固定時66歳)の頭蓋骨欠損による左額部から左頭部の組織陥没(12級)につき,事故前に人工骨を使用した頭蓋骨形成術を受けており,事故後に髄液漏を発症したため頭蓋骨欠損のまま症状固定となり,肉体労働は極めて危険で,営業職や事務職につくことも困難であり,単に外貌醜状にとどまらず就労に大きな制約を受けているとして10級に相当するとし,6年間27%の労働能力喪失を認めた上で,既往症につき30%の訴因減額をした(事故日平成22年5月)。
 ・ 会社員(固定時48歳)の高次脳機能障害(7級),歯牙障害(10級),嗅覚脱失(12級),顔面部の複数の線状痕(12級)の併合6級につき,どうしても人目を気にしてしまい,気持ちが消極的になることから,外貌醜状も労働能力に影響を与えているとして,67歳まで67%の労働能力喪失を認めた(事故日平成21年)。
 ・ 自動車運転手(固定時41歳)の口唇部挫創後瘢痕(9級)につき,口唇部に残存している長さ5cm以上の線状痕であり,人目に付く程度のものであること,初対面に近い顧客との折衝に消極的になっていること,車内の評判が落ちて将来の昇進や転職に影響したりする可能性が否定できないこと等から,67歳まで35%の労働能力喪失を認めた(事故日平成23年)。
 ・ 舞台俳優・衣料品店準社員(固定時25歳)の外貌醜状(12級)につき,音楽大学卒業後,舞台俳優を目指して現にダンサーとして舞台活動を行っているところ,舞台活動においては外見の均整も重要な要素であることは否定し難い等として,67歳まで5%の労働能力喪失を認めた(平成28年)。
 ・ 配達業務等に従事する会社員(固定時37歳)の左眼下部1箇所,左頬2箇所の線状痕(12級)につき,従前は営業業務を行っていたこともあったが,転職活動においては,配達業務等不特定多数の者と接する機会が少ない業種かどうかを確認し,接客や営業の仕事は避けるようになっていること等から,67歳まで7%の労働能力喪失を認めた(令和2年)。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 醜状は時間の経過とともに薄れていくため,醜状障害の後遺症申請は,事故後6ヶ月で早急に行うことが重要になります。また,医療技術の進歩によって,傷跡を目立たなくすることは可能になってきており,醜状障害を理由とする後遺症が認定基準は厳しくなりつつあります。(1)事故後6ヶ月で早急に後遺症申請をするのか,または(2)保険会社の治療費対応で形成手術を行って後遺症申請は行わないという選択をするのか,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,被害者の傷跡を確認し,もっとも最適な方法をアドバイスしていきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(40)

2022-10-14

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(40)
9.外貌醜状等
(4)14級の事例
・ 小学生(事故時9歳)の右下肢露出面の醜状痕(14級)につき,同級生から傷跡の指摘をされ,プールや公衆浴場の使用を避けたり,受診時に傷を見られることを嫌がったり等,醜状痕が被害者の行動を制限しているとし,将来を考える上で,本件事故による醜状痕によって行動や発想の制限を受け,職業について自由に考え選択することができないと認め,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,就労後5年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 派遣社員(固定時37歳)の右大腿内部瘢痕の下肢醜状(14級)につき,派生する機能障害・知覚異常等も認められることから,事故前3ヶ月間の収入から算出した年収を基礎に,20年間5%の労働能力喪失を認めた。

(5)非該当の事例
・ 主婦兼女優・ホステス(固定時40歳)の肩甲部痛,上肢シビレ,頸部背部痛,三叉神経麻痺,歯牙障害(併合11級,眼瞼下垂は自賠責非該当)につき,頸部痛,眼瞼下垂,右上肢知覚障害は就労先の選択を狭め職務内容にも制限が伴い,殊に女優やホステスとしての稼働に眼瞼下垂は重大な支障を生じさせるとして,当初5年間は日額2万円余を基礎に35%,次の15年間は賃金センサス全労働者全年齢平均を基礎に20%,その後7年間は賃金センサス女性全年齢平均を基礎に14%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 醜状は時間の経過とともに薄れていくため,醜状障害の後遺症申請は,事故後6ヶ月で早急に行うことが重要になります。また,医療技術の進歩によって,傷跡を目立たなくすることは可能になってきており,醜状障害を理由とする後遺症が認定基準は厳しくなりつつあります。(1)事故後6ヶ月で早急に後遺症申請をするのか,または(2)保険会社の治療費対応で形成手術を行って後遺症申請は行わないという選択をするのか,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,被害者の傷跡を確認し,もっとも最適な方法をアドバイスしていきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(39)

2022-10-11

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(39)
9.外貌醜状等
(2)9級の事例
・ 空港ラウンジで接客業に従事する契約社員(固定時33歳)の化粧を施しても正面から見てそれと分かる右頬から右耳殻に至る長さ9cmの線状痕等(9級)につき,事故前収入を基礎に,67歳まで35%の労働能力喪失を認めた。
・ 地方公共団体の嘱託職員等としてカウンセリング業務に従事していた兼業主婦(37歳)の前額中央やや右から左眼瞼部にかけての線長約5.6センチメートルの線状痕に左前額部から左眉毛上部にかけての線約1.6センチメートルの線状痕がY字型に繋がる縫合創痍(9号)につき,内容・部位・程度に加え,性別・職種・心理的影響に照らし,事故前収入を基礎に,67歳まで25%の労働能力喪失を認めた。

(3)12級の事例
・ 会社員(固定時29歳)の顔面醜状(12級),下顎骨折に伴う左顎痛(12級),7歯欠損(12級)の併合11級につき,外貌醜状により接客や対人間関係の生涯による就労への悪影響があるとして,21年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 女児(事故時2歳)の顔面傷跡(12級)につき,賃金センサス全労働者全年齢平均を基礎に,18歳から67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。
・ 専門学校を卒業して各種資格を有し,ダイビングインストラクターを目指すアルバイト(固定時21歳)の右下肢醜状(12級),左下肢醜状(14級)の併合12級,軽度右下肢機能障害(非該当)につき,機能障害により労働能力が相当程度喪失したこと,両下肢の醜状がその職業選択を狭め,少なくともダイビングインストラクターとなる可能性を閉ざしたことから,10年間15%,次の10年間10%,その後10年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 歯科衛生士(固定時28歳)の左下腿リンパ浮腫(7級),左右の下肢瘢痕拘縮(12級)の併合6級につき,両下肢の瘢痕の大きさやそのために生じる精神的負担及び仕事に対する萎縮的効果,未婚女性であることを考慮し,瘢痕は労働能力に相応するとして,39年間67%の労働能力喪失を認めた。
・ 英会話教室運営の主婦(固定時47歳)の顔面部醜状障害(12級),頸部痛・背部痛・左手にかけてのしびれ感等(14級),腰痛・腰の抜ける感じ(14級),PTSD(12級)の併合11級につき,20年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 小学生(固定時12歳)の顔面線状痕・陥没痕(12級)につき,今後の進路ないし職業の選択・就業等において不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず,醜状痕を気にして消極的になる可能性も考慮し,賃金センサス全労働者全年齢平均を基礎に,49年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時19歳)の口唇部の10円銅貨大以上の瘢痕(12級)につき,被害者は保育士になることを希望しているが,子供に接する仕事であり,瘢痕によりその就職が制限される蓋然性があるとし,事故後のコンビニ等でのアルバイトはこれを否定するものでなく,大学卒業から就職等の制限の蓋然性が高い40歳まで14%の労働能力喪失を認め,それ以降の不利益は慰謝料で考慮するとした。
・ 介護従事者(固定時45歳)の眉間に人目につく3センチメートル以上の線状痕(12級),頚項部痛,胸背部痛及び腰痛(14級)の併合12級につき,介護の仕事は日常的に他人と接し,円滑な人間関係の形成等が必要とされること,年齢等に照らし今後転職する可能性も否定できないこと等から,外貌醜状が労働能力に影響をもたらすとして,67歳まで10%の労働能力喪失を認めた。
・ 兼業主婦(事故時52歳)の右下腿打撲皮下血腫等による右下肢外傷後瘢痕(12級相当)につき,外貌醜状の後遺障害は否定し,外傷に伴う同部位の皮下脂肪層,真皮組織の欠損により脛骨近傍のわずかな刺激に対する痛み等が生じていることから,右下肢に痛み等の神経症状の残存を認め,家事労働に一定の支障が生じているものとし,平均余命の2分の1の17年間5%の労働能力喪失を認めた。
・ アパレルショップ店員兼主婦(固定時18歳)の顔面神経麻痺による口唇閉鎖不全,顔面部及び頚部の瘢痕(12級),左下口唇知覚異常及び知覚鈍麻(14級)の併合12級につき,対人関係に消極的となり,店員に一度復職したものの接客業務に支障を生じて退職しており,接客業等への就労可能性が一定程度制限されているほか,家事労働にも心理的負担を感じるという意味で間接的な影響が生じており,顔面神経麻痺や頚部の瘢痕は将来回復する見込みは乏しいとして,49年間5%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 醜状は時間の経過とともに薄れていくため,醜状障害の後遺症申請は,事故後6ヶ月で早急に行うことが重要になります。また,医療技術の進歩によって,傷跡を目立たなくすることは可能になってきており,醜状障害を理由とする後遺症が認定基準は厳しくなりつつあります。(1)事故後6ヶ月で早急に後遺症申請をするのか,または(2)保険会社の治療費対応で形成手術を行って後遺症申請は行わないという選択をするのか,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,被害者の傷跡を確認し,もっとも最適な方法をアドバイスしていきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(38)

2022-09-30

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(38)
9.外貌醜状等
  交通事故による外傷によって,人目につくような瘢痕,線状痕,色素陥没,色素沈着による黒褐色の変色,色素脱失による白斑などが残ることがあります。
外貌醜状の後遺障害等級は,男女の区別なく,外貌に著しい醜状を残すものが7級,外貌に相当程度の醜状を残すものが9級,外貌に醜状を残すものが12級とされています。また,上肢または下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すものが14級となります。
  頭部の場合,“手のひら大以上の醜状”で7級,“鶏卵大(約15.7㎠)以上の瘢痕”で12級が認められます。醜状は人目に付くものであり,髪の毛で隠れる部分は,醜状と扱われません。手のひらは被害者の大きさのものを参考にします。
  顔の場合,“鶏卵大(約15.7㎠)以上の瘢痕”“5㎝以上の線上痕”“10円硬貨以上のくぼみ”で7級,“10円硬貨以上の瘢痕”“3㎝以上の線上痕”で12級が認められます。
  首の場合,“鶏卵大(約15.7㎠)以上の瘢痕”で12級という等級が認められます。
  手,足の場合,“露出面に手のひらの大きさの醜状”で14級という等級が認められます。
  複数の醜状があった場合,原則は,1つのサイズが,上記の基準を満たさない限り,後遺症は認定されません。例外的に,同じ部位に集中している場合は合算できますが,上の基準は1つのサイズの基準ですので,合算の場合は,上の基準を大きく上回る必要があるとされています。

(1)7級の事例
・ 寿司職人(固定時31歳)の右顔面の変形・醜形(7級),味覚低下,複視,感音難聴等につき,67歳まで56%の労働能力喪失を認めた。
  ・ アルバイト(固定時25歳)の顔面醜状(7級)につき,左下眼瞼下垂により笑ったとき左目が開くこと,左鼻穴形態が右と異なり6cmの線状痕を残すこと,アルバイトとはいえ接客業に就いていたこと等から,67歳まで30%の労働能力喪失を認めた。
・ 海上自衛官(固定時27歳)の顔面の知覚異常を伴うため意思疎通の障害が見られる外貌醜状(7級),左下腿痛(14級)の併合7級につき,収入における不利益が現実に生じていること,自衛官退職後の再就職先への影響,外貌醜状を意思疎通の障害を主として評価するときには加齢による労働能力喪失率の減少を認める必要性は乏しいこと等から,67歳まで35%の労働能力喪失を認めた。
・ 大卒後上場会社を退職し母親経営の会社の取締役(固定時28歳)の顔面の5個の瘢痕,左眼下部の5cm以上の線状痕(7級),左足関節痛(12級)等併合6級につき,事故前に接客の業務に就いており,後継者として取引先との交渉も予想され,顔面醜状の影響は軽視できないが,その影響はしだいに緩和されると期待しうるとして,10年間35%,その後29年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ ラウンジ風飲食店,鍋料理専門店の経営者(固定時52歳)の外貌醜状(7級),神経症状(14級),眼科(12級と14級)の併合6級につき,17年間60%の労働能力喪失を認めた。
・ 主婦(固定時26歳)のオトガイ部瘢痕(7級,ひきつけによる違和感含む),歯牙損傷(14級)の併合7級につき,外貌醜状については主婦であるから大きく労働能力に影響することは考えられないが,影響が全くないとはいえず,ひきつれによる違和感があること,歯牙欠損による補綴は家事労働その他に一定の程度影響を与えること等から,67歳まで16%の労働能力喪失を認めた。
・ 会社員(固定時58歳)の8年にわたり8回の顔面修正術等を受け,右下眼瞼,鼻孔下部及び鼻背を中心とする線状痕,鼻背を中心とする長さ5cm以上の線状痕(7級),味覚障害等の併合6級につき,転職を余儀なくされており,外貌醜状が労働能力に与える程度は相当深刻であるとし,67歳まで30%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時24歳)の頭部外傷に伴う精神神経障害等(7級),右同名半盲(9級),醜状障害(7級)の併合5級につき,左前額部の10円玉硬貨大以上の組織陥没は人目につき,年齢等からすれば稼働に対する一層の制約が生じ,収入が減少することは十分に考えられることから,67歳まで79%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(事故時17歳)の左眉周辺の線状痕及び下顎部の瘢痕(7級),歯牙障害(13級)の併合6級につき,7級の外貌醜状としては比較的軽度であり,化粧品販売会社に美容部員として採用され配置や労働条件等において特段の不利益を被ったことが窺われないが,後遺障害が生涯にわたって残存することが見込まれ,就職活動で具体的に不利益な影響を生じた可能性も小さいとはいえず,それが生涯における労働による利得に波及する可能性も否定できないことから,46年間12%の労働能力喪失を認めた。
・ 高校生(固定時19歳)の顔面醜状痕(7級),利き手である右手の神経症状(12級)の併合6級につき,現実の勤務への具体的な支障,就労の不安定性,今後の転職等で受ける可能性のある不利益等を考慮し,46年間25%の労働能力喪失を認めた。
・ 一家の支柱である介護士(固定時44歳)の外貌醜状(7級),神経症状(14級)の併合7級につき,事故後の減収はないが,前額部の醜状痕については現在でも終始人目を気にし,労働効率などに悪影響が及んでおり,就労に対する後遺障害の悪影響を最小限に抑えるためにヒビ相当程度の努力を重ねていること,今後転職する場合には後遺障害による不利益の発生が考えられることなどから,67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。
・ 介護職員(固定時54歳)の前額部左の瘢痕と知覚違和感(7級)につき,障害者やその家族等と円満な関係を構築し,円滑な意思疎通を実現する上で支障が生じうるというべきではあるが,減収がなく,化粧や髪型等によってある程度目立たなくすることができることに照らし,67歳まで10%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時23歳)の顔面部の線状痕(7級),歯牙障害(12級)の併合6級につき,コミュニケーション能力に相当な支障が生じていることや被害者の性別及び年齢を考慮し,44年間25%の労働能力喪失を認めた。
・ 法律事務所勤務(固定時30歳)の左下肢瘢痕(知覚異常含む)(7級相当),左足関節機能障害(12級)の併合6級につき,デグロービング損傷による左下肢の醜状障害は,単なる醜状障害にとどまらず,筋肉・血管・脂肪・神経などの軟部組織が大幅に失われたことにより,筋力低下などの左下肢の機能を障害し,頑固な神経症状を残しており,左下肢の機能障害は,一般的な事務職である弁護士補助の仕事にも支障が生じるほどであって,左足関節の機能障害(12級)を超える支障が生じており,スカートが制服となっている下肢を露出する仕事に就く際に制約がないとはいえないとして,37年間25%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 醜状は時間の経過とともに薄れていくため,醜状障害の後遺症申請は,事故後6ヶ月で早急に行うことが重要になります。また,医療技術の進歩によって,傷跡を目立たなくすることは可能になってきており,醜状障害を理由とする後遺症が認定基準は厳しくなりつつあります。(1)事故後6ヶ月で早急に後遺症申請をするのか,または(2)保険会社の治療費対応で形成手術を行って後遺症申請は行わないという選択をするのか,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,被害者の傷跡を確認し,もっとも最適な方法をアドバイスしていきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(37)

2022-09-26

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(37)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(8)その他の精神系症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
   ・ 主婦(固定時40歳)の頸部痛など(自賠責非該当)につき,全脊柱前弯変形,両下肢筋力低下と知覚鈍麻が損するとして7級と認め,27年間56%の労働能力喪失を認めた。
・ 被害者(固定時31歳)の両上下肢運動障害,立位・歩行不能(自賠責非該当)につき,頚髄損傷ではないが事故以前には症状が全くなかったことから事故に起因し後遺障害等級5級2号に該当するとし,38年間79%の労働能力喪失を認めた。
・ 引越及びリフォーム業下請会社勤務(固定時33歳)の継続的な嘔吐症(自賠責非該当)につき,毎食後嘔吐し,130キログラムあった体重が事故後2ヶ月で45キログラムに激減したこと,名古屋市障害等級3級を受けていることなどから,その程度は9級10号と同等とし,7年間35%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 主婦(固定時54歳)が,事故により頭部を打撲し,事故の翌日以降左上肢痛・挙上不可・左上肢運動不全・知覚障害を訴え,約1年後には左上下肢麻痺・左上下肢痛の症状が残存し,室内は杖歩行で用便も可能だが外出には車椅子を使用して近親者が付き添い,入浴には介護が必要であるものの常時介護が必要とはいえない状態(自賠責14級10号)につき,頚髄損傷等の他覚所見はないが,10年間100%の労働能力喪失を認めた上で,転換性障害の発症ないし心因性の素因を考慮して減額した。
・ 主婦(固定時63歳,自賠責は右骨盤,臀部,大腿部の痛み等12級,腰部の激痛,背部にかけて広がるこわばり等14級の併合12級)の線維筋痛症の症状につき,一定の姿勢を保つことには相当に困難が伴う等から,7級4号に該当するとして,12年間56%の労働能力喪失を認めた。
・ 土木作業員(固定時59歳)の神経系統の機能又は精神障害(7級相当),胸腹部臓器の障害(7級5号),脊柱運動障害(8級2号),視力障害(8級1号),聴力障害(9級9号),外貌醜状(12級14号)につき,障害が多方面にわたり,外貌醜状を除くいずれもが労働能力に深刻な影響を与えること等から通常の併合基準を適用すべきでないとして,4級相当としたうえで,11年間92%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時24歳)のジストニアによる顔面症状,四肢麻痺等,交通外傷後後遺症(うつ病,不眠症)及び不安神経症(自賠責は歯科症状14級2号,顔面症及び四肢麻痺等は非該当)につき,ジストニア及び四肢麻痺等は心因性等ではないとして別表第一の1級1号を認め,また,顔面症状や四肢麻痺等の症状により,事故後長期にわたって精神的に高い負荷がかかる状況に置かれていたことから,事故と交通外傷後遺症及び不安神経症の因果関係を認めた。
・ 開業医(固定時53歳)につき,外傷性の耳鳴りを自賠責と同様に12級相当と認定したが,左上肢の麻痺・脱力感・両手のシビレ等の上肢症状(自賠責14級9号),頸椎捻挫(自賠責14級9号)には脊柱管の狭小化等が確認でき他覚的裏付けがあるとして12級相当と認定し,上肢症状には既往症の椎間板ヘルニアが寄与しているとして,平均余命までの2分の1である14年間18%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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