【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(9)

2023-04-17

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ① 有職者
ウ 会社役員
会社役員の報酬については,労務提供の対価部分は認められますが,利益配当の実質をもつ部分は認められなません。

 <裁判例>
 ・ 企業主の死亡逸失利益は,企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によって算定すべきであるとした。
 ・ 父親経営会社の役員(26歳)につき,被害者が立ち上げた新規部署の利益率は高水準で被害者の貢献に依るところが相当程度あったこと,被害者が営業,倉庫業務といった日常業務にも携わっていたことなどを考慮し,当時の役員報酬の7割を基礎とした。
 ・ 名義貸しによるスパーマーケット経営会社の代表者(42歳)につき,経営判断や役員報酬の決定には関与しておらず,勤務実態等から事故前の報酬全額につき労務対価性をを認めたが,他方で会社内の立場等に鑑み将来減額可能性も相当程度あり得るとし,事故前3年間の平均報酬額を基礎とした。
 ・ 同族会社の代表取締役(45歳)につき,事故の当期及び前期とも損失が生じているにもかかわらず,年間合計1000万円を超える役員報酬が計上されていたことなどから,役員報酬の全額が労働対価とは認められないが,会社の規模,経営状態,役員報酬額,賃金センサスの平均等に鑑み,事故当時の当期の役員報酬の80%に相当する額を基礎とした。
 ・ 上場会社取締役(58歳)につき,63歳までは実収入を基礎に,以降67歳までは賃金センサス男性学歴計60歳から64歳の年収を基礎としたが,役員退職慰労金については内規が慰労金の上限を示したもので必ずしも支給がなされるものとは言えないとして退職慰労金差額を否定した。
 ・ 会社代表者(61歳)につき,就労期間を平均余命の2分の1(10年間)とし,このうち4年間はいわゆる雇われ社長として収入全額を労働の対価として,以降の6年間は賃金センサス大卒男性65歳以上平均を基礎とした。
 ・ 輪島塗の木地職人兼会社役員(81歳)につき,役員報酬は他人のための被害者の保証債務を会社が肩代わりしたことなどから会社への現実の貢献度を度外視して低く設定されたものであること,他の役員(被害者の家族ら)の報酬は実質的には被害者が得られる報酬を含むと見られること,被害者の稼働状況,健康状態等から,賃金センサス男性学歴計65歳以上平均を基礎とした。
 ・ 建設業A社及び工場建物賃貸業B社の各代表取締役(81歳)につき,両社の役員報酬とも実質的に利益配当に相当し,労務対価とは評価できない部分があるとした上で,両社の業務内容や労務量及び各役員報酬の金額を比較考量し,A社の役員報酬の7割,B社の役員報酬2割について労務対価性を認め基礎とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

Copyright(c) 2021 弁護士法人しまかぜ法律事務所 All Rights Reserved.