【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(10)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
② 家事従事者(1)
家事従事者の基礎収入は,賃金センサスの産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額です。
有職の主婦の場合,実収入が上記平均賃金以上の時は実収入により,平均賃金より下回るときは平均賃金により算定します。
家事労働分の加算は認めないのが一般的です。
<裁判例>
・ 女性(34歳)につき,子育てのため事故の約3年前に看護師を退職したが復職準備中であり,復職すると退職前年の年収額の約90%を得られる蓋然性が認められるとして,これを基礎に33年間認めた。
・ 家事労働のほかに障害者である長女の介護もしていた女性(55歳)につき,事故後,夫は勤務時間を減らし,二女は会社を辞めて長女の介護にあたっていること,2人の収入がある程度減少したことから,賃金センサス全労働者全年齢平均を基礎に13年間認めた。
・ 息子と二人暮らしの女性(62歳)につき,36歳という息子の年齢に鑑みれば全面的に家事を母親に依存するというものではないとの反論を否定し,家事労働に従事していたとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,13年間認めた。
・ 女性(67歳)につき,家事に従事していたとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に10年間認めた。
・ 年金を受給し長男夫婦と同居する女性(68歳)につき,杖を使用する生活となってはいたが,大方の家事はこなし,長男の妻は専業主婦であったが被害者も家事の一部を担当していたこと,月に半分は長女宅で生活し,長女の2人の子の世をなどをしていたこと等から,賃金センサス女性学歴計60歳以上平均の50%を基礎に10年間認めた。
・ 見当識障害(方向や自宅への帰路がわからなくなってしまう障害)のような状況にあった女性(69歳)につき,仮に認知症の初期または中期であったとしても,被害者は洗濯等ある程度の家事労働ができる状況であったとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均の50%を基礎とした。
・ 6人家族(被害者のほか,夫,長女,長女の娘2人,老母)の炊事,千手苦闘の家事全般や老母の介護を行っていた女性(71歳)につき,300万円を基礎に9年間認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。