【コラム】:積極損害 8.家屋・自動車等改造費

2021-06-11

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

8.家屋・自動車等改造費
(1)家屋改造費等を認めた事例
   交通事故によって,今までの住宅環境では日常生活を送るのに支障をきたすような場合(例:段差を乗り越えられない,手すりがないと歩くことができない等),家屋の改造費が認められています。
   被害者の受傷の内容,後遺障害の程度・内容によって,必要性が認められれば,相当額が認められますが,費用が高額であり,不動産を改造するという大がかりな作業を要するため,基本的には,重度の後遺障害の事案に限られて認められている傾向があります。
  ① 2級以上の事例
    ホームエレベーターの設置,2階の増築,カーポートの設置等,他の家族の利便に繋がるとして,全額ではなく,7~8割程度を事故と相当因果関係のある損害として認める事例が多くあります。
    一方,家屋改造により被害者の専用スペースが増え,他の家族が不便になった面が多い場合は,損益相殺されない傾向にあります。
    必要性があれば,家屋の建て替えや新規購入も認められますが,全額ではなく,通常建物とバリアフリー建物の建築費用の差額であったり,建築費用の1~2割程度を事故と相当因果関係のある損害として認めています。
  ② 3級以下で家屋改造費等を認めた事例
    高次脳機能障害で,火災防止のためガスコンををIHクッキングヒーターに取り替えた事例があります。
    また,トイレ,風呂,スロープ,手すりの設置等,①に比べ金額が低額で,現在の家屋を使用しつつ工事ができるようなものについては,3級以下でも認められている傾向があります。

(2)自動車改造費等を認めた事例
   交通事故によって,車椅子ごと乗車できる自動車を要するなど,必要性が認められれば,自動車の改造費が認められます。
   事故前に所有していた車両と福祉車両との差額を損害額とする事例や,改造に要した費用が支払われる事例があります。
   また,3級以下では,運転席に障害者用の補助装置の設置が認められた事例があります。
   なお,自動車は,買い替えが必要になりますので,平均余命まで何回買い替えをするかも考慮し,請求をします。

(3)転居費用,仮住居費用及び家賃差額等を認めた事例
   後遺障害によって,やむなく転居したために生じた転居費用や家賃の差額,自宅改修中の仮住居費用も認められる場合があります。
   また,エレベーターの設置や介護器具の使用や洗濯等により水道光熱費の支出が増加した場合,増加した水道光熱費が認められた事例があります。
   
 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。家屋・自動車等改造費を要する交通事故の場合,重篤な障害が残存しており,慰謝料や逸失利益等の賠償項目も高額となるため,示談での解決が困難となる場合が多くなります。しかしながら,被害者自身やご家族が今後も快適に暮らしていくためには,適正な賠償額で解決することが必要です。
 しまかぜ法律事務所では,家屋・自動車等改造費を請求した交通事故の解決実績もありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。

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