【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(3)

2023-02-18

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ① 有職者
  ア 給与所得者(2)
 <裁判例>
 ・ 高校及び専門学校卒の保育士(20歳)につき,その学歴は,高専・短大卒と同視できるとして,賃金センサス産業別女性高専・短大卒全年齢平均を基礎とし,47年間認めた。
 ・ 大卒アルバイト(23歳)につき,事故までの約8ヶ月間の収入は23万円余であったが,大学卒業後専門職に就くため独学で専門知識を学びつつ,正社員として就労することも視野に入れて進路を考えていたことが窺えること等から,大学卒業後3年程度を経るまでには就職し,その後は大卒男子全年齢平均程度の収入を得る蓋然性があったとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とし,25歳から67歳までの42年間認めた。
 ・ 研修医(24歳)につき,67歳まで,賃金センサス職種別・産業計・企業規模計・男性医師の全年齢平均を基礎とした。
 ・ 高卒公務員(24歳)につき,事故前年の年収が平成26年男性高校卒20歳から24歳までの平均年収より25%程度高額であること,年齢を積むことによる年収上昇の高度の蓋然性が認められることから,賃金センサス男性高卒全年齢平均の1.25倍を基礎とした。
 ・ 被害者(25歳)につき,事故当時は委託業務に対する報酬の支払いを受けていたが,事故直後から給与月額28万円で正規雇用される予定で,事故前の勤務実態から深夜割増や残業代の加算を考慮する必要があること,月額28万円の給与は男子高卒25~29歳の所定内給与の約1.25倍で,学歴計の所定内給与額をも上回ること等を考慮して,賃金センサス男性学歴計年齢別平均を基礎とし,生活費控除率30%で認めた。
 ・ 会社員(26歳)につき,大学中退後,コンビニで正社員として稼働していたが,事故前年に転職した後は,賃金センサス男性学歴計年齢別平均賃金を下回る程度は縮小しつつあり,不動産会社に就職してから事故までに約1年しか経過していないことを考慮すると,賃金センサス男性全年齢学歴計と賃金センサス男性全年齢高卒とを考慮して基礎収入を520万円し,生活費控除率50%で認めた。
 ・ 会社員(26歳)につき,事故前年給与収入が180万円前後であるが,26歳と若年者であり,勤務先での勤務を続ければ,将来的に生涯を通じて学歴計・全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められるとして,基礎収入を賃金センサス男性学歴計全年齢平均,生活費控除率を50%として認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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