【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(4)

2023-02-24

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ① 有職者
  ア 給与所得者(3)
 <裁判例>
 ・ 短大卒銀行員(29歳)につき,50歳までは昇給が見込まれるとして,29歳から39歳までは事故前年収入を基礎に,40歳から49歳まで及び50歳から59歳までは,賃金センサス女性高専・短大卒年齢別平均の40歳の年収額が同29歳の年収額の1.3倍であること,同50歳の年収額が1.36倍であることを考慮し,事故前収入に同増加率を乗じたものを基礎に,60歳から67歳までは専業主婦として算定し,退職金差額も認めた。
 ・ 特別地方公共団体である企業団勤務(30歳)につき,定年退職までの各年度は事故当時の制度に基づく収入を基礎とし,定年後67歳までは定年時の収入の半額を基礎として,生活費控除率40%とし,退職金差額も認めた。
 ・ 大規模上場会社勤務の大卒会社員(30歳)につき,モデル賃金は控えめな数値であること,被害者の事故前年の給与・賞与の合計がこれを上回っていることから,控えめにみてもモデル賃金の程度の給与を取得する蓋然性が認められるとして,モデル賃金にしたがって退職までの逸失利益を認め,退職金差額も認めた。
 ・ 鉄道会社車掌(31歳)につき,勤務先が鉄道最大手の企業で賃金規定上各年度に昇格があることから,60歳定年まで8819万円余り,60歳から65歳まで再雇用として274万円余り,その後67歳までは賃金センサス男性高卒平均賃金を基礎としてそれぞれ逸失利益を認め,生活費控除率は,被害者の経済的援助が家計の支えの一つになっていたこと,婚姻を考えていた女性がいたこと等から45%とし,退職金差額も認めた。
 ・ 大卒村役場職員(32歳)につき,条例及び昇格基準により昇給・昇格し,勤勉手当も年1.2ヶ月分支給される蓋然性が認められるとして,定年の60歳まで1年ごとの年収を積算し,定年退職後は賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,生活費控除率を定年前は男性と同様の給与を得ていたことから50%,定年後は30%で算定し,退職金差額も認めた。
 ・ 日本料理の調理師(32歳)につき,職種が技術の習得を要するものであることから,事故前収入は480万円余であるが,賃金センサス男性全労働者の30歳から34歳の平均とそれほど差異がなく,生涯を通じて全年齢平均程度の収入を得られる蓋然性が認められるとして,賃金センサス男性学歴計全年齢を基礎とした。
 ・ 大卒海事職公務員(32歳)につき,昇格・昇給がありえ男性と同様の給与を得たであろうとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均が同30歳から34歳平均の約8.79%増であることから,定年となる60歳までは事故前年の年収に同比率を乗じた金額を基礎に生活費控除率50%,定年退職後67歳までは賃金センサス女性大卒全年齢平均を基礎に生活費控除率30%として算定し,退職金差額も認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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