【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(2)

2023-02-12

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ① 有職者
 ア 給与所得者(1)
原則として事故前の収入を基礎として算出します。
現実の収入が賃金センサスの平均額以下の場合,平均賃金が得られる蓋然性があれば,賃金センサスの平均額が認められます。
若年労働者(概ね30歳未満)の場合には,学生との均衡の点もあり,全年齢の賃金センサスを用いるのが原則となっています。

 <裁判例>
 ・ 中卒居酒屋勤務(15歳)につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎都市,18歳から67歳までの49年間認めた。
 ・ 高校中退アルバイト(16歳)につき,解体業の会社に就職を希望して面接に出かけたものの18歳になったら雇うと言われており,将来は働いて母親の面倒を見たいと話していたこと等から,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とし,18歳から67歳までの49年間認めた。
 ・ 高校を中退した大工見習い(16歳)につき,事故の4ヶ月前に高校に転学するための書類を取り付け,転学又は高卒後専門学校に通うために稼働を開始したとみられることから,就学及び就労の意欲があったとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に,18歳から67歳までの49年間認めた。
 ・ アルバイト(17歳)につき,ホームセンターとコンビニエンスストアでアルバイトをしており,就労意欲があることが認められ,その就労能力の向上も充分に見込まれる年齢であったとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
 ・ 高卒アルバイト(19歳)につき,事故がなければ高校卒業後の1年後に被害者の父が経営する会社に就職することを具体的に考えており,会社の経営は安定していて,同会社に勤務する親族の報酬又は賃金を考慮すると,男性大卒全年齢平均賃金程度の収入を得る蓋然性が高いとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とし,事故発生日の約1年後である20歳から67歳までの47年間認めた。
 ・ 居酒屋アルバイト(19歳)につき,当時の現実収入が必ずしも多額でないのは,モデルを目指しつつ,居酒屋でのアルバイト勤務に従事していたことによるものであるとして,賃金センサス全労働者学歴計全年齢平均を基礎とし,48年間,生活費控除率45%で認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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