【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(45)

2022-12-02

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(45)
12.上肢・下肢・及び手指・足指の障害
(2)自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例(1)
  ・ 中学1年生男子の左環指開放骨折による爪の変形,循環障害(非該当)につき,OA機器を効率的に利用するには手の10指が十分に機能することが望ましいとして,18歳から67歳まで,2%の労働能力喪失を認めた。
・ 自動車車体改造業者(固定時31歳,右下肢短縮等13級)につき,右膝関節機能障害につき自賠責認定基準の運動可能領域よりわずか2.5度広く可動するものの右脛腓骨変形癒合等が認められることから12級7号に相当し,併合11級相当として,67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。
・ 鍼灸マッサージ業者(49歳)の左上肢,左膝の障害(併合14級)及び多少あった視力の完全喪失(非該当)につき,17年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 被害者(固定時67歳,骨盤骨変形12級)の左膝関節機能障害(非該当)につき,可動域は基準に達していないが,日常生活において極めて困難を来している面があるとして12級7号を認め,併合11級とし,9年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 被害者(固定時45歳)の右下肢1センチ短縮,約30度の外旋変形(12級)につき,立位での荷重バランスが悪く1時間以上起立不能で,時間給のアルバイトの職にしかつくことができず事故前より収入が大幅に減収したとして,67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。
・ 造園業手伝い(固定時52歳)の右膝半月板損傷による運動・労作後の関節水症,四頭筋萎縮,右膝外側関節裂隙の圧痛(12級)につき,これまで肉体的作業に従事してきたことや収入減少の見込み等を考慮し,10年間25%の労働能力喪失を認めた。
・ ホテル勤務の和食調理師(固定時51歳)の右足関節障害等(12級)につき,しゃがめない,自由に足底をついて歩けない,3時間以上の立位で足の痛みとしびれが生じる等,立位で行う板前の職業に相当の影響があり,転職も年齢から制限されるなどとして,67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。
・ 鍼灸指圧師(固定時70歳)の右肩関節可動域制限,右上肢のしびれ等(12級)につき,治療業務においては指先を使うばかりでなく手指を患者の体に当てた上で手指に対する体重のかけ方を微妙に調整するなど,施術を行う上で肩関節障害の影響は大きいとし,5年間20%の労働能力喪失を認めた。
・ 農学部造園科を卒業し造園設計の仕事に携わってきたアルバイト(固定時27歳)の前腕部の知覚鈍麻,しびれ等(12級)につき,腕関節の可動域制限は参考運動が制限されているにすぎないとしながら,造園設計の業務に相当の影響があるとして,67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。
・ タクシー運転手(固定時65歳)の右肩,左膝,左足の各関節機能障害,下肢の疼痛等(併合8級)につき,長時間一定の姿勢を取ることを強いられる職業運転手としての業務はほぼ不可能となったとして労働能力喪失率を60%とし,狭心症の既往症がある被害者が肉体的に過酷な勤務を余命期間の半分継続できるか疑問として7年間を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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