【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(37)

2022-09-26

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(37)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(8)その他の精神系症状
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
   ・ 主婦(固定時40歳)の頸部痛など(自賠責非該当)につき,全脊柱前弯変形,両下肢筋力低下と知覚鈍麻が損するとして7級と認め,27年間56%の労働能力喪失を認めた。
・ 被害者(固定時31歳)の両上下肢運動障害,立位・歩行不能(自賠責非該当)につき,頚髄損傷ではないが事故以前には症状が全くなかったことから事故に起因し後遺障害等級5級2号に該当するとし,38年間79%の労働能力喪失を認めた。
・ 引越及びリフォーム業下請会社勤務(固定時33歳)の継続的な嘔吐症(自賠責非該当)につき,毎食後嘔吐し,130キログラムあった体重が事故後2ヶ月で45キログラムに激減したこと,名古屋市障害等級3級を受けていることなどから,その程度は9級10号と同等とし,7年間35%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 主婦(固定時54歳)が,事故により頭部を打撲し,事故の翌日以降左上肢痛・挙上不可・左上肢運動不全・知覚障害を訴え,約1年後には左上下肢麻痺・左上下肢痛の症状が残存し,室内は杖歩行で用便も可能だが外出には車椅子を使用して近親者が付き添い,入浴には介護が必要であるものの常時介護が必要とはいえない状態(自賠責14級10号)につき,頚髄損傷等の他覚所見はないが,10年間100%の労働能力喪失を認めた上で,転換性障害の発症ないし心因性の素因を考慮して減額した。
・ 主婦(固定時63歳,自賠責は右骨盤,臀部,大腿部の痛み等12級,腰部の激痛,背部にかけて広がるこわばり等14級の併合12級)の線維筋痛症の症状につき,一定の姿勢を保つことには相当に困難が伴う等から,7級4号に該当するとして,12年間56%の労働能力喪失を認めた。
・ 土木作業員(固定時59歳)の神経系統の機能又は精神障害(7級相当),胸腹部臓器の障害(7級5号),脊柱運動障害(8級2号),視力障害(8級1号),聴力障害(9級9号),外貌醜状(12級14号)につき,障害が多方面にわたり,外貌醜状を除くいずれもが労働能力に深刻な影響を与えること等から通常の併合基準を適用すべきでないとして,4級相当としたうえで,11年間92%の労働能力喪失を認めた。
・ 大学生(固定時24歳)のジストニアによる顔面症状,四肢麻痺等,交通外傷後後遺症(うつ病,不眠症)及び不安神経症(自賠責は歯科症状14級2号,顔面症及び四肢麻痺等は非該当)につき,ジストニア及び四肢麻痺等は心因性等ではないとして別表第一の1級1号を認め,また,顔面症状や四肢麻痺等の症状により,事故後長期にわたって精神的に高い負荷がかかる状況に置かれていたことから,事故と交通外傷後遺症及び不安神経症の因果関係を認めた。
・ 開業医(固定時53歳)につき,外傷性の耳鳴りを自賠責と同様に12級相当と認定したが,左上肢の麻痺・脱力感・両手のシビレ等の上肢症状(自賠責14級9号),頸椎捻挫(自賠責14級9号)には脊柱管の狭小化等が確認でき他覚的裏付けがあるとして12級相当と認定し,上肢症状には既往症の椎間板ヘルニアが寄与しているとして,平均余命までの2分の1である14年間18%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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