【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(32)

2022-08-05

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(32)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(7)局部の神経症状
  ① 認定例(2)
   ・ 病院勤務(固定時30歳)の右膝のケロイド状の瘢痕及び同ケロイド部の痛み(14級9号)につき,ケロイド状瘢痕に起因する症状は短期間で消失するとは言い難いとして,37年間,5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 大工(固定時51歳)のRSDを否定された左上肢の神経症状及びこれに伴うと考えられる関節可動域制限(14級9号)につき,医師が左手関節部に腫脹を認めX線検査で左橈骨遠位端骨折があると判断していたこと,飲食業や大工等の左手を使用する頻度が比較的高い職業に従事してきたこと,年齢等に照らし,時間的経過により軽減されるとは言い難いとして,16年間5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 引越業等(固定時32歳)の左足部骨折後の左足部痛(12級13号)につき,画像上第1TMT関節に骨折後の変化と関節面の不適合性が認められることなどから,緩解の見込みは認め難いとして,25年間,14%の労働能力喪失を認めた。
   ・ デスクワークのシステムエンジニア(固定時43歳)の左膝内側側副靱帯損傷後の左膝関節部痛(14級9号)につき,加害者側は減収が生じていないと主張したものの,後遺障害の内容に鑑み,事故時の収入445万余を基礎に,24年間,5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 看護師(固定時42歳)の右示指及び左膝関節の神経症状(併合14級)につき,67歳までの25年間,5%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 公認会計士資格を有している会社員(固定時30歳)の両膝の二次性変形関節症等による強度な常時疼痛(12級13号,併合11級)につき,後遺障害の原因は,両側脛骨関節軟骨損傷であり,関節軟骨には血が通っていないため,損傷すると自然治癒することはないとされ,逆に事故による損傷をきっかけに,更に軟骨がすり減り,悪化していく可能性も指摘されていることから,37年間,20%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 主婦(固定時46歳)につき,高次脳機能障害を否定したが,脳脊髄液減少症及び胸郭出口症候群を認め,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とし,固定時から7年間は35%,その後14年間は14%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 大学生(固定時21歳)の左膝前十字靱帯損傷による左膝疼痛(12級13号)につき,損傷された前十字靱帯が自然修復することは稀で,変形性膝関節症に至る可能性があり,数年程度の経過により症状が馴化され,後遺障害の程度が軟化するとしても,その後に悪化する可能性があるとして,22歳から67歳まで45年間14%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 海上自衛隊員(固定時39歳)の頸椎・腰椎・右肩関節の運動時痛(併合14級)につき,特別損害との加害者側の主張を排斥し,固定後も海上勤務につけないため乗組手当及び航海手当を受給できない損害として3年分375万7069円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 むち打ちや末梢神経障害では,後遺症が認定されないと思われている方も少なくないと思いますが,まったく違います。むち打ちや末梢神経障害であっても,12級または14級に認定されることはあります。特に,弁護士法人しまかぜ法律事務所では,むち打ち案件で後遺症の申請(被害者請求)をした場合,大半が14級以上を獲得しています。
 適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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