【コラム】:積極損害 3.将来介護費
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
3.将来介護費
医師の指示や症状の程度により,必要があれば認められます。
金額は,近親者付添人は1日につき8000円,職業付添人は実費全額となります。
(1)脳機能障害関係
ア 遷延性意識障害(植物状態)
遷延性意識障害とは,重傷を負い,意識不明のまま寝たきりになっている状態のことで,一般的に植物状態と言われているものです。遷延性意識障害は,交通事故の後遺症の中でも,最も重篤な後遺症だと言われています。
遷延性意識障害になると常に身守りや介護が必要になりますので,日中は職業付添人,夜間は近親者付添人として,平均余命まで,1日あたり合計2万~3万円が請求できます。
保険会社からは,遷延性意識障害の被害者は平均余命までの生存可能性は少なく短期間で算定すべきと反論されることが多いですが,最近の裁判例は平均余命まで認めることが多数です。
なお,完全看護体制がとられている病院でも,実際に家族の補助が必要になる場合があれば,近親者付添人の介護費用も損害として認められています。
イ 失調麻痺・高次脳機能障害等
高次脳機能障害とは,交通事故によって脳が損傷したことで生じる,記憶障害(覚えられない,思い出せない,すぐに忘れる),注意障害(気が散りやすい,集中できない),遂行機能障害(手順良く作業を行うことができない),人格障害(怒りっぽくなる,疑いやすくなる),コミュニケーション障害などのことです。
自賠責において,程度により1級から9級まで認定されますが,1級で常に介護を要するもの,2級で随時介護を要するものとなり,将来にわたって介護が必要となります。3級以下でも,症状の程度や具体的な介護の状況によって1日あたりの金額が減額されるものの,認められる場合があります。
(2)脊椎損傷
脊髄の損傷によって,四肢麻痺(両手および両足),片麻痺(左右いずれかの両手および両足),対麻痺(両手または両足),単麻痺(左右いずれかの手または足)が生じると,日常生活は大幅に制限され,介護が必要となりますので,将来の介護費が請求できます。
(3)その他の障害
脳機能障害や脊椎損傷以外でも,CRPS(RSD・カウザルギー)や失明等で介護が必要とされる場合は,将来の介護費が請求できます。
(4)その他の介護関係費用
介護が必要となり,介護施設に入居した場合は,施設利用料等が認められます。
また,自宅介護で,訪問介護や入浴サービスを利用した場合,それらの費用が認められます。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。将来にわたって介護が必要な状態になると,被害に遭った本人だけでなく,家族の生活も一変します。介護される方だけでなく,介護する方にとっても暮らしやすい環境を整えるには,適正な将来介護費を請求することが大切です。
しまかぜ法律事務所では,将来介護費を必要とする交通事故の解決実績も豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。