【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(13)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
③ 無職者
ア 学生・生徒・幼児等
学生・生徒・幼児等の基礎収入は,賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,男女別全年齢平均を基礎とします。
なお,大学生になっていない者についても,大卒の賃金センサスが基礎収入と認められる場合があります。ただし,大卒の賃金センサスによる場合,就労の始期が大学卒業予定時となるため,全体として損害額が学歴計平均額を使用する場合と比べると減ることがあります。
<裁判例>
・ 賃金センサスは,事故時のものではなく最新のものを用いた。
・ 音楽大学の附属高校に通学中の高校生(女・15歳)につき,同校の学生の8~9割が音楽大学に入学しており,被害者もまた音楽関係の仕事に就業した蓋然性が高いこと,バイオリン演奏について専門的な技術を有し,このような職種は男女格差が認められないなどを考慮し,賃金センサス男性大卒全年齢平均の9割を基礎(生活費控除率35%)とした。
・ 2人の高校生(男・16歳と15歳)につき,男性学歴計全年齢平均を得られないと認めるに足る特段の事情がない限り,同平均賃金を基礎収入として逸失利益を算定するのが相当であるとしたうえで,特段の事情は認められないとして,18歳から67歳まで同平均を基礎とした。
・ 高校2年生(男・17歳)につき,高校1年時の成績は優れていなかったが,勉学に対する意欲があり大学へ進学するのを当然とする家庭環境(両親大学卒,姉2人も国立大学卒)にあって,両親及び本人も大学進学を希望していたことから,大学に進学した蓋然性が高いとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 家族が経営する会社の手伝いをしていた男性(17歳)につき,高校を1年時の1学期で中退し,翌年ころから本件事故当時まで会社の手伝いをしていたが,無給であったものの,会社創業者の孫であり,18歳ころに会社に就職することが見込まれていたとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 高校生(女・17歳)につき,中高一貫の進学校に在籍し,学業優秀であるのみならず,高校2年生の卒業式で代表して送辞を述べ,具体的に大学進学を希望していたこと等から,大学進学の蓋然性があるとし,また,今後50年程度,性差による賃金格差が維持されると予想することに合理性は見いだせないとして,賃金センサス全労働者大卒全年齢平均を基礎とし,生活費控除率45%で認めた。
・ 看護専門学校生(女・18歳)につき,卒業前は事故前年度のアルバイト収入,卒業後は賃金センサス女性看護師企業規模計全年齢平均を基礎として,生活費控除率30%で認めた。
・ 聴覚障害で身体障害者2級の大学生(男・18歳)につき,その労働能力は若年の聴覚障害者の中では最良に近い者と評価することが相当であるとし,他方で就ける職種が限られるという意味で,職業選択の幅に一定の制約があることを指摘せざるを得ない等として,賃金センサス男性大卒全年齢平均の90%を基礎とし,生活費控除率を50%として認めた。
・ 大学生(女・19歳)につき,大卒男性労働者の全年齢平均賃金と大卒女性労働者の全年齢平均賃金の平均値(生活控除率40%)を基礎とした。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。