【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(7)

2023-03-24

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ① 有職者
  ア 給与所得者(6)
 <裁判例>
 ・ 会社員(51歳,営業所長)につき,定年の60歳以降は賃金センサス男性学歴計平均を採用すべきという被告の主張を採用せず,事故前年度の給与収入を基礎に67歳まで認めた。
 ・ 大卒営業職契約社員(52歳)につき,死亡時から契約年齢の上限である65歳までは事故前年の年収額を,その後平均余命の2分の1までは賃金センサス女性大卒65歳以上平均を基礎とし,生活費控除率30%で認めた。
 ・ 飲食店勤務(52歳)につき,かつてスナックを経営し,その後アルバイトを経て,事故の8ヶ月前に飲食店に勤務し,事故当時の年収は約273万円であったが,スナック経営の経験を生かして今後増収する可能性があったとして,賃金センサス男性学歴計50歳から54歳平均と事故当時の年収との中間値を基礎とした。
 ・ 会社員(53歳)につき,年収が50歳代前半で最大額となり,その後減少し,60歳の定年退職後は退職時の保有資格や退職時までの勤務形態によって変動することから,事故時から60歳に達するまでは事故前年の収入と同額,60歳から67歳までは,事故前年の収入が賃金センサスの1.12倍であることから,賃金センサス男性学歴計60歳から64歳平均の1.12倍を基礎とした。
 ・ 調理師(56歳)につき,これまで培った経験や技術を生かして,67歳以降も調理師として働く蓋然性があったものと認め,平均余命の2分の1まで,事故前年年収を基礎とした。
 ・ 大卒銀行員(57歳)につき,60歳の定年前に出向し,定年後も嘱託として65歳まで銀行員と同じ水準の収入を得られる見込みであったこと,65歳以降も大卒者の同年齢層の平均賃金が得られる蓋然性が高いと認められることから,65歳までは事故前収入,その後平均余命の2分の1までは賃金センサス大卒65歳以上平均を基礎とし,退職差額も認めた。
 ・ 資料関係会社の会社員(58歳)につき,家畜飼料の専門的知識,ペットブーム,関係会社が多いこと等から,退職後も在職時以上に働くことが予想されるとして,事故前年年収を基礎に,平均余命の半分認めた。
 ・ 大学教授(65歳)につき,事故の約3ヶ月後に定年退職する予定であったが,退職後の具体的な就職先が決まっていたという事情が見当たらず,事故前年の年収と同程度の収入を得る蓋然性は認めがたいが,大学院修士課程を修了し,助手,助教授,教授として教鞭を執った経歴を踏まえ,賃金センサス男性大卒・大学院卒年齢別平均を基礎とし,生活費控除率40%で9年間認めた。
 ・ 1年の有期雇用契約社員(66歳)につき,高い専門技術を生かして会社で重要な役割を担い,中長期的な研究開発等にも携わっており,本件事故がなければ雇用契約を更新していたということができるとして,事故年の年収を基礎に,平均余命の半分,生活費控除率40%で認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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