【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(6)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
① 有職者
ア 給与所得者(5)
<裁判例>
・ 警備員(37歳)につき,転職後28日で21万円余の収入を得ており,高卒の学歴,これまでに従事した職種,資格の有無のほか,異なる職種に転職活動をしていたことなどを考慮し,賃金センサス男性学歴計全年齢平均の8割を基礎とした。
・ 外資系診断薬・診断用医療機器の製造・販売メーカー勤務の大卒会社員(38歳)につき,昇給率2%として60歳定年時まで算定し,定年時には年収が1.5倍になっていたとして退職金差額も認めた。
・ 国内有数の大規模上場会社に勤める大卒会社員(43歳)につき,職階や年功による昇給は廃れていくとしながら,年14万円の範囲で昇給を認めた。
・ 証券会社の外務員(44歳)につき,その歩合給は景気変動に伴い相当の幅で変化するとして,死亡時の報酬額ではなく,過去5年間の平均値を基礎とした。
・ 会社員(45歳)につき,60歳定年までは事故年の収入を12ヶ月分に修正した額,その後67歳までは賃金センサス男性大卒60歳から64歳平均をそれぞれ基礎とし,生活費控除率30%で認めた。
・ 上場企業の会社員(48歳)につき,60歳定年退職までは事故前年収入を基礎とし,定年退職後67歳までは賃金センサス男性大卒60歳から64歳を基礎とした。
・ 長年の勤務先の倒産で離職し,約10ヶ月で再就職したが3ヶ月弱で死亡した会社員(50歳)につき,従前の真面目な勤務態度,労働意欲,簿記3級等の資格を有していたこと等から,事故時の月額より高い収入を得る可能性が十分認められるが,離職前の給与水準の維持は困難な場合が多いとし,賃金センサス男性学歴計全年齢平均の75%弱を基礎とした。
・ 小学校教員(50歳)につき,定年は60歳であるものの,大学を卒業してから約27年間にわたって小学校の教員として教職に携わり,職場の同僚の間でも高い信頼を得ていたこと等を考慮すれば,就労可能年齢である67歳までは事故前年の年収と同程度の収入を得られた蓋然性が認められるとして,事故前年年収を基礎に67歳まで認めた。
・ 会社員(50歳)につき,事故前年の収入を基礎に,67歳まで生活費控除率30%で認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。