【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(5)

2023-03-10

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ① 有職者
  ア 給与所得者(4)
 <裁判例>
 ・ 地方公務員の小学校教諭(33歳)につき,採用後,事故まで約5年間良好な成績で勤務し,標準的な昇給をしており,事故に遭わなければ,55歳に達するまで毎年定期昇給をし,定年時(60歳)に退職金を得て退職し,その後再任用されて,5年間勤務を続ける蓋然性があったとして,定年退職までの給与及び退職手当並びに再任用後の給与に係る逸失利益を認めた。
 ・ 勤務医(34歳)につき,事故当時精神科医5年目であり,事故前年の年収は650万円余であったが,事故の3年前には賃金センサス男性医師平均程度の収入を得ていたこと,精神科保健指定医取得後は地元での開業を検討しており収入の増加が見込まれていたことなどを考慮し,67歳までの33年間,賃金センサス男性医師34歳から67歳までの総年収から割り出した平均年収を取得する蓋然性があったとして,これを基礎とした。
 ・ 医師(34歳)につき,事故当時の年収は708万円余であったが,将来大学に残り,准教授,教授としてのキャリアを積む可能性もかなり高いと評価できるとして,賃金センサスの男性医師,大学教授,大学准教授の三種の全年齢平均賃金額を基礎とした。
 ・ 大卒チケット販売(35歳)につき,大学在学中から死亡時まで公認会計士の資格試験受験勉強中であったものの,30歳を超えてからは実際に受験をしていたかも不明であること,一応就労していた事実は認められ,被害者の年齢を踏まえると将来的に何らの収入も得ることができないというのは相当でないことから,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
 ・ 上場企業から分社した子会社に移籍したWeb広告プロデューサー(36歳)につき,事故前年の収入は791万円余であるが,勤務先における売上高の30%を占めていた実績やその才能が高く評価されていたこと等を考慮して,60歳までは分社前の勤務先のチーフプロデューサーの平均年収である1075万円余,その後67歳までは賃金センサス男性大卒60歳から64歳平均を基礎とした。
 ・ 森林組合職員(36歳)につき,事故前年の年収は賃金センサス男性年齢別平均の58%の日給職員であったが,仕事内容について職場で一定の評価を得ていたこと,日給職員が月給職員に転ずることもあったこと,事故年に日給の基本給が昇給となっていることなどから,定期的に昇給する高度の蓋然性があったとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
 ・ 会社員(36歳)につき,事故当時の全集は295万円余であったが,将来昇進の見込みがあったこと,母親・弟と同居し生活費の一部を負担しつつ,将来要する母親の医療費等に備えて給与から相当額を継続的に貯蓄していたこと等に基づき,被害者の収入によって家計が相当程度維持されていたと認め,賃金センサス女性大卒年齢別平均を基礎に,生活費控除率35%で認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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