【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(49)

2023-01-20

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(49)
15.定期金賠償が問題となった事例
(肯定例)
 ・ 脳挫傷,びまん性軸索損傷等で高次脳機能障害3級の幼児(固定時12歳)につき,不法行為に基づく損害賠償制度の,被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し,加害者にこれを賠償させることにより,被害者が被った不利益を補填して,不法行為がなかったときの状態に回復させるとの目的と損害の公平な分担という理念に照らし,将来において取得すべき利益の損失が現実化する都度これに対応する期間にその利益に対応する定期金の支払いをさせるとともに,将来,算定の基礎となった後遺障害の程度,賃金水準その他の事情に著しい変更が生じ,算定した損害の額と現実化した損害の額との間に大きなかい離が生ずる場合には,民訴法117条によりその是正を図ることができるようにすることが相当とし,逸失利益につき定期金賠償を命ずるに当たっては,交通事故の時点で,被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,就労可能期間の終期より前に被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを要しないとして,定期金賠償方式を採用し,固定年の賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に,就労可能年に達する日から67歳に達する日まで,月額44万円余を認めた。
(否定例)
 ・ 高次脳機能障害(5級),嗅覚障害(12級),醜状障害(7級)の併合3級の会社員(固定時28歳)の逸失利益につき,いわゆる「継続説」や,後遺障害の内容・程度が将来の介護費用と一体のものとして定期金賠償を認め得る場合ではないこと,被害者が定期金による支払を求めているのが症状固定後15年間のみでその合理的理由が不明なこと等から,定期金賠償方式によるべき合理性及び必要性があるものとは認められない。
・ 父経営の会社に後継者として勤務する男(固定時31歳)の遷延性意識障害等(1級)につき,後遺障害及び労働能力喪失の程度が将来重篤化することは考え難いこと,他方,労働能力喪失の程度が将来的に逓減されることも想定されておらず,将来の現実収入が現時点で算定する収入を上回る事態を想定し得ないこと等から,定期金賠償が相当と認められる場合には当たらない。
 ・ 大学院生(固定時24歳)の高次脳機能障害等(9級)につき,後遺障害の程度が今後大きく変化するのは考え難いこと,賃金水準等の変化が逸失利益に与える影響は限定的であること,自らの労働で相当程度の収入を得ることが可能であって定期金の必要性も高いとはいえないこと等から,定期金賠償が相当とまでは認められない。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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