【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(42)

2022-11-04

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(42)
10.胸腹部臓器の障害
呼吸器(気管,気管支,肺,横隔膜等),循環器(心臓,心膜,大動脈等),腹部臓器(食道,胃,小腸,大腸,肝臓,胆のう,すい臓,ひ臓,腹壁等),泌尿器(じん臓,尿管,勝脱,尿道等),生殖器の障害に分けられます。
胸腹部臓器の障害の障害等級については,原則として,その障害が単一である場合には臓器ごとに定める基準により判断されます。また,その障害が複数認められる場合には,併合の方法を用いて相当級が判断されます。

(1)認定例
 ・ 女児(固定時3歳)の左腎機能全廃(13級11号)につき,残存する右腎臓にできるだけ負担をかけない生活上の不利益を受け,あるいは就労上の配慮を要するとして,賃金センサス男女計学歴計全年齢平均を基礎に,18歳から67歳まで9%の労働能力喪失を認めた。
 ・ セールスドライバー(固定時34歳)の腹圧性尿失禁(7級),射精障害(9級)の併合6級,骨盤骨変形12級,左下肢後面等;左大腿部側部・会陰部のしびれ12級の併合5級につき,腹圧性尿失禁及び左下肢等のしびれ等につき労働能力の喪失を認め,本人の努力や勤務先による内筋業務への配置転換,営業主任から安全推進係長や営業係長に昇格させる等の特別の配慮があるため減収なく700万円以上の年収を維持していることを考慮し,67歳まで60%の労働能力喪失を認めた。
(2)自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
 ・ 女子会社員(試用期間中,固定時40歳)の切迫性尿失禁・腹圧性尿失禁(自賠責非該当)につき,加齢を原因とすることは考え難く,初診時の超音波検査等から明らかな膀胱の収縮はないが膀胱容量が低下していることや,症状が薬剤による治療に対応した反応をしていることなどから,心因反応による症状ではなく,下部尿路を支配する神経損傷や骨盤内の膀胱尿道支持組織の損傷等に起因するとして11級10号と認定し,67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 胸腹部臓器に後遺障害が残ると,身体を維持するための機能が働かなくなることが多いので,仕事や日常生活にも著しい支障が生じることになります。
 しかしながら,臓器によっては,ただちに労働能力とは関係しないとして,逸失利益が否定されるケースもあります。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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