【コラム】:慰謝料(7)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
2 傷害慰謝料
(1)傷害慰謝料は,原則として入通院期間を基礎として,別表Ⅰを使用します。
通院が長期にわたる場合は,症状,治療内容,通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもあります。
被害者が幼児を持つ母親であったり,仕事の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められる場合には,増額することがあります。
なお,入院待機中の期間及びギプス固定中等安静を要する自宅療養期間は,入院期間とみることがあります。
<裁判例>
・ シルバー人材センター受託業務(固定時74歳・男)につき,第2腰椎圧迫骨折で27日間入院し,通院期間約4か月の内約2ヶ月半の間硬性コルセットの装着を余儀なくされたことなどに鑑み,傷害慰謝料162万円を認めた。
(2)傷害の部位,程度によっては,別表Ⅰの金額を20%~30%程度増額します。
<裁判例>
・ 有職主婦(左膝疼痛等14級,年齢不詳)の頭部打撲後の両眼の視力低下,左右上下視における複視につき,後遺障害の残存は認めないが,右眼の負傷により現に社会生活上の多岐にわたる領域で相応の不便を強いられており,右眼の症状が軽快し固定するまでの間に被った精神的苦痛については相当程度大きかったものであると評価し,入通院慰謝料の算定に当たって斟酌するのが相当として,傷害慰謝料のほか,後遺障害慰謝料110万円を認めた。
(3)生死が危ぶまれる状態が継続したとき,麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき,手術を繰り返したときなどは,入通院期間の長短にかかわらず,別途増額を考慮します。
<裁判例>
・ 鋼製建具設置等の自営業者(肋骨の変形癒合12級,骨盤骨変形12級の併合11級,固定時50歳)につき,両側多発肋骨骨折,両側血気胸,肺挫傷,肝損傷,骨盤骨折の傷害を負い,一時心肺停止の状態に陥ったり,肝損傷に関して仮性動脈瘤が生じ,出血多量になるおそれがあったりするなど,急性期には死亡の危険があったこと等を考慮し,治療期間437日(内入院86日)に対し,傷害慰謝料333万円のほか,後遺障害慰謝料400万円を認めた。
(4)むち打ち症で他覚所見がない場合等(※)は,入通院期間を基礎として別表Ⅱを使用します。通院が長期にわたる場合は,症状治療内容,通院頻度をふまえ,実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもあります。
※ 「等」とは,軽い打撲,軽い挫創(傷)の場合を意味します。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
傷害の内容や程度は被害者ごとに違うため,仕事や日常生活への影響度合いも様々です。入通院期間で被害者の精神的苦痛をはかることが困難な場合は,必要に応じて傷害慰謝料を増額して解決をすることが大切になります。適正な慰謝料での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。