【コラム】:慰謝料(43)

2024-12-06

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

5 慰謝料の増額事由
(1)加害者に故意もしくは重過失(無免許,ひき逃げ,酒酔い,著しいスピード違反,ことさらに信号無視,薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転等)または著しく不誠実な態度等がある場合
  ② 後遺障害事例
   ・ 加害者が刑事裁判で治療費は全額支払うと述べたのに,被害者の父親が示談書に押印しなかったことから治療費の支払いを打ち切ったこと,酒気帯び運転につき刑事裁判で有罪が確定しているのに民事裁判で否認していることなどを考慮して,傷害分550万円,女性の神経症状,大腿部の著しい醜状痕の後遺障害350万円を認めた。
・ 工務店員(固定時32歳,急性硬膜下血腫,脳挫傷等による精神的症状9級)につき,受傷3ヶ月後から病状照会を繰り返し,債務不存在確認を求める調停の申立や本訴を提起した加害者側の反応が,事故により精神的症状を生じていた被害者にさらに深刻な影響を与えた可能性があるとして,傷害分と後遺障害分合計850万円を認めた。
・ タクシー乗務員(固定時65歳,左膝と左足の関節機能障害9級相当ほか併合8級)につき,入院532日,通院1201日(実日数420日)という長期の治療(数度の手術含む)及びリハビリを強いられたこと,酒気帯び状態で,はみ出し禁止場所で追い越しをかけ対向車線を進行してきた被害車両と正面衝突した事故態様,事故後被害者を救護せずに逃走したこと,刑事裁判で判決後も見舞いに訪れると述べながら一度も見舞いに訪れず,刑事裁判の最中に有利な情状となる物損の示談契約を成立させながら,物損と人損の損害賠償請求は一個であるとの理由で損益相殺に関連して物損の損害立証を被害者に求めたこと等から,傷害分500万円を認めた。
・ エステティシャン(事故時34歳,咀嚼機能障害10級,左肩関節の機能障害10級,左肩鎖関節亜脱臼に伴う鎖骨の変形障害12級の併合9級)につき,下顎挫創,左肩鎖関節脱臼,左肩甲骨骨折,右恥骨骨折等で入院34日,通院341日間したこと,国際資格を取得して従事する予定であった仕事が不可能になったこと,加害者が本件事故当時酒気帯び運転をしたうえ救護義務及び報告義務違反をしたこと等から,後遺障害分1500万円を認めた。
   ・ 新聞配達員兼主婦(62歳,左大腿骨骨折による神経症状喪失率5%)につき,入院期間が約1年3ヶ月に及ぶこと,加害者が危険な飲酒運転に及んだ上で事故を起こしたこと,路上に転倒した被害者を認識しつつ救護せず逃走したこと,加害車両の損壊部分を塗色により修理して隠蔽したこと等から,傷害分261万円,後遺障害分310万円を認めた。
・ 会社員(固定時43歳,神経系統の機能に著しい障害5級)につき,傷害分290万円のほか,加害者が酒気帯びで追突したことから後遺障害分1700万円を認めた。
・ 外傷性肝損傷,上顎骨折等で10日入院し約5ヶ月の通院後,症状固定前に別の交通事故で死亡した高校生(事故時15歳,歯牙障害10級)につき,加害者が相当な飲酒で事故を発生させた常習的な飲酒運転者で,ひき逃げをし,逃走後に車を修理するという証拠隠滅工作を行い,無車検・無保険自動車であったこと等から,請求を上回る障害分219万円,後遺障害分795万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,5年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 後遺症は1つ等級が上がるだけで大きく賠償額が変わります。適正な等級認定を獲得するには,できるだけ早い段階から情報を入手して,準備を進めることが大切になります。
 後遺症申請の認定実績が多数あり,適正な後遺症慰謝料での解決している,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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