【コラム】消極損害その2 後遺障害逸失利益(7)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その2 後遺症による逸失利益(7)
2.基礎収入
(2)家事従事者
② 高齢者
・ 夫が医療保護入院中であった主婦(固定時65歳)の高次脳機能障害,外貌醜状併合1級につき,事故までほとんど見舞いに行っておらず家事労働を行っていたとは言い難い面があるが,事故に遭わなければ夫の身の回りの世話などをしていた可能性も否定できないとして,賃金センサス女性全年齢平均の30%を基礎とした。
・ 兼業主婦(固定時67歳)の高次脳機能障害7級につき,週3回程度クリーニング工場でのパート勤務を行うとともに,夫及び成人した長女の3人暮らしで,家事労働にも従事していたとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 12級片麻痺の既往症を有する被害者の遷延性意識障害併合1級につき,既往症による退職後は同居する妻子がフルタイムで働いていたこと,日常的に掃除,洗濯の一部,ゴミ出し,買い物等の家事を行っていたこと,自給用の野菜を栽培していたことから家事労働に従事していたとし,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均を基礎とした。
・ 無職者(固定時69歳)一人暮らしの高次脳機能障害5級につき,休業損害は否定したが,長男家族と同居し,その家事を分担する等の就労の可能性があり,労働の意欲及び能力は有していたとして,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均の70%を基礎とした。
・ 有職主婦(固定時71歳)の高次脳機能障害7級につき,月額25万円の収入があったことも考慮し,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 主婦(固定時75歳)につき,6人家族の家事を一手に担っていたこと等から,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎とした。
・ 家事をしながら障害のある娘の介護をする被害者(事故時75歳)の脊柱変形,右膝痛等につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均の80%を基礎とした。
・ 実弟及び精神障害を抱える引きこもりの子と同居し,家事労働をしていた被害者(固定時76歳)左股関節機能障害10級につき,休業損害は賃金センサス女性学歴計全年齢平均としたが,後遺障害逸失利益は賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎とした。
・ 夫と二人暮らしの専業主婦(固定時76歳)の失見当識,注意障害,健忘,運動能力の低下等1級につき,夫が事故後に死亡しているものの事故当時数年のうちに死亡する蓋然性があったとは認められず,家事従事者としての就労可能期間に影響を与えないとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均の8割を基礎とした。
・ 孫の通学等のため同居し身の回りの世話を全て行っていた被害者(事故時80歳)の右股関節機能障害10級につき,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎とした。
・ 女性(固定時81歳)の腰背部・左下肢痛14級につき,会社勤めをしている娘(48歳)と事故当時2人暮らしで家事に従事していたことから,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均の8割を基礎とした。
・ 専業主婦(固定時81歳)の右大腿骨転子部骨折後の疼痛14級につき,家事全部を負担していた点を踏まえつつ,無職の夫と二人暮らしという生活状況を考慮し,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均の9割を基礎とした。
・ 入退院を繰り返す妻に代わり同居家族のため家事の多くを分担する被害者(固定時84歳)右足関節機能障害,右脛骨偽関節,右下腿痛等併合7級につき,家事労働の評価を月額18万円とした。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
家事従事者のうち高齢者の逸失利益については,特に争いとなることも多く,適正な基礎収入で逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。