【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(6)

2021-12-06

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(6)
2.基礎収入
(2)家事従事者
家事従事者の基礎収入は,賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額(令和元年の統計で,388万0100円)です。
兼業主婦(夫)の場合,実収入が賃金センサス以上のときは実収入により,賃金センサスを下回るときは賃金センサスにより算定します。

  ④ 認定例
・ パート勤務の主婦につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とせず,パート収入を考慮して,賃金センサス学歴計35歳から39歳平均を基礎とした。
・ 妻が実家の事業を継いだため職につかず家事全般に従事していた被害者男性につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ ピアノ講師兼主婦,右肩から上肢の疼痛としびれ等併合12級につき,家事に従事するほか,週3日1回あたり半日,ピアノ講師をして1ヶ月10万円の給与を得ていたことから,家事労働については賃金センサス女性45歳から49歳平均を基礎として週5.5日分,これに給与分を加算した年収を基礎にした。
・ 主婦の顔面を含む左半身のしびれ等の神経症状12級につき,事故当時,家事労働に従事しており,事故後息子が結婚予定の女性と同居するようになったことに伴い一人暮らしをするようになったとしても,事故当時,息子の別居が客観的に予定されていたなどの事情を認めるに足りる証拠はないとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に,14年間認めた。
・ 主婦の顔面醜状,左手関節痛,腰痛等併合11級につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 四肢不全麻痺3級の被害者につき,婚約中で既に同居して家事をしていたほか,開店予定の蕎麦店の手伝いをして就労する予定があったこと等から,兼業主婦として稼働する蓋然性があったとして,賃金センサス女性学歴計30歳から34歳平均を基礎とした。
・ 主婦の非器質性精神障害12級,左股関節機能障害10級,左大腿部知覚鈍麻14級の併合9級につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 兼業主婦の高次脳機能障害1級につき,逸失利益は事故時に発生しており,事故後症状固定前に発生した夫の死亡を理由として加害者の負担が軽減する結果となることは,衡平の理念に反するから考慮しないとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均の85%を基礎に,平均余命の2分の1認めた。
・ 自宅で翻訳業を営み実収入を得るとともに,同居する両親の介護等をしていた被害者男性につき,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 家事従事者の逸失利益については争いとなることも多く,適正な基礎収入で逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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