【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(16)

2023-06-26

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
 ③ 無職者
  イ 失業者
    労働能力及び労働意欲があり,就労の蓋然性があるものは認められます。再就職によって得られるであろう収入を基礎とすべきで,その場合特段の事情のない限り失業前の収入を参考にします。ただし,失業以前の収入が平均賃金以下の場合には,平均賃金が得られる蓋然性があれば,男女別の賃金センサスによります。
  <裁判例>
  ・ 高校卒業後勤務した会社を退職し,事故翌日からアルバイト開始予定だった18歳男子につき,高校卒業直後で将来どのような仕事に就くか分からない若者のため,統計を用いての確認方法をとらざるをえないが,それでも不確定な要素が余りにも多いため,かなり大きな範囲の統計的平均数値を用いるとした上で,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
 ・ 税理士資格試験受験のため会計事務所を退職した直後の無職者(男・24歳)につき,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とした。
 ・ 無職者(男・32歳)につき,大学中退後の13ヶ月間に会社の技術職として342万円余の収入があり,その後番組制作・ビデオ制作アシスタントとして8ヶ月間に131万円余の収入を得た後も,職を変え,断続的に相当程度の収入を得ていたことから,賃金センサス男性高専短大卒全年齢平均を基礎とした。
 ・ 独身無職者(男・53歳)につき,過去に有職で妻帯していたこともあり,将来にわたって同じ状況が継続するものとは予想し難く,むしろ何らかの収入の途を得る蓋然性を否定できないとして,賃金センサス男性学歴計54歳平均を基礎に,生活費控除率60%で認めた。
 ・ 妻は独自に年金を受給し,子3名はいずれも独立している単身無職者(男・62歳)につき,裁判所職員として41年間勤続し,退職後大学院に入学して,大学院卒業後,就職活動を行っており,補外車の経歴及び就労意欲にかんがみれば就労の蓋然性が認められること,他方,大学院在学中から就職活動を行っていたものの卒業後約2ヶ月が経過しても具体的な就職の目処がたっていないこと,被害者の年齢や年金収入があったことから,賃金センサス男性学歴計60歳から64歳平均を基礎に,収入額及び年金収入額にかんがみ,生活費控除率40%で認めた。
 ・ 無職者(男・63歳)につき,過去の労災事故により労災等級7級相当の障害があり,事故当時無職であったが,事故の約2ヶ月前に疼痛改善の指摘があり,本人も仕事復帰に意欲を示していたこと等から,就労の蓋然性があったと認め,賃金センサス男性学歴計60歳から64歳の平均から一部喪失労働能力分として56%を減じた額を基礎とした。
 ・ 事故当時無職者(男・65歳)につき,事故の2ヶ月前まで40年間教職についており,退職後も求職活動を行っていたことや年齢から就労の意思と能力を認め,事故前年の収入282万円余を基礎に,生活費の相当部分は年金を充てる蓋然性を認め10年間生活費控除率40%で認めた。
 
 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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