【コラム】:損益相殺・損害の補填等(12)

2026-06-12

 被害者またはその相続人が事故に起因して何らかの利益を得た場合,当該利益が損害の補填であることが明らかであるときは,損害賠償額から控除する場合があります
 
3.社会保険給付等がある場合の控除
(3)充当の方法
  ② 元本から充当した例
 ・ 被害者が不法行為によって傷害を受け,後遺障害が残った場合において,労災保険法に基づく各種保険給付や公的年金制度に基づく各種年金給付を受けたときは,これらの社会保険給付は,それぞれの制度の趣旨目的に従い,特定の損害について必要額をてん補するために支給されるものであるから,同給付については,てん補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきとし,また,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,そのてん補の対象となる損害は不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが,公平の見地から見て相当とした。
・ 労災保険法による遺族補償年金の支給を受け又は受けることが確定したときは,その支給が遺族補償年金制度の予定するところと異なって著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,不法行為時に,逸失利益等の消極損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきであるとした。
・ 労災遺族年金,遺族厚生年金については逸失利益分に,労災葬祭料については葬儀費用分のそれぞれ本件事故当時に元本充当されたものとした。
・ 労災保険の固定前療養費については,症状固定前の治療費等の積極損害との間で損益相殺的な調整の対象とし,過失相殺後の損害金について不法行為時に損害が填補されたものと評価して元本から充当するとした。
・ 無保険車傷害保険金について,約款によれば被害者等の被る損害の元本を填補するものであり,損害の元本に対する遅延損害金を填補するものではないとした上,支払われるべき保険金の額は,損害の元本の額から被害者等に支払われた自賠責保険金等の全額を差し引いて算定すべきであり,自賠責保険金等のうち,損害の元本に対する遅延損害金に充当された額を控除した残額を差し引くことにより算定すべきではないとした。
・ 既払いの任意保険金について,治療費として支払われていて,損害費目との結びつきが明確であり,損害賠償債務元本に充当するとの黙示の合意(これにより消滅する損害賠償債務元本に対する遅延損害金の支払債務を免除するとの合意を含む。)が存在すると解するのが相当とした。

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